国鉄電機、相次いだ惜別と奇跡の復活
【汐留鉄道倶楽部】2024年秋から25年上半期にかけて、国鉄型電気機関車(EL)の引退とフェードアウトが相次いだ。もともと公表されていた置き換え計画よりも、実施時期が先送りになっていた。だから「いつ実行に移されてもおかしくない」とずっと覚悟していたとはいえ、オールドファンには残念な惜別期間になった。そんな中、8月になって群馬県の高崎地区で「奇跡の復活」があった。今回は復活した列車を見に行ったので、国鉄型ELの現状と合わせて振り返る。
高崎地区といえば、蒸気機関車(SL)の観光列車が不定期ながら頻繁に走ることで知られている。首都圏という地の利もあって、鉄道ファンのみならず鉄道にそれほど興味がない観光客にも人気だ。主に高崎を出発し、上越線への列車は往復ともSLが先頭に立って客車を引っ張る。

故障したD51に代わって「SL・GVぐんま桐生」の先頭を走るEF64
一方、信越線や両毛線へ行く列車は、SLの向きを変える転車台の設備がないため、上越線とは違う編成になった。先頭がSLなら最後尾にELかディーゼル機関車(DL)を連結。帰りは、先頭がELやDLになり、SLは最後尾で後ろ向きのまま走る形だ。逆に「行きの先頭がELかDLで最後尾がSL」というパターンもあった。
これらのELとDLは24年11月を最後に引退した。たまにしか走らなかったが、EL・DL客車列車として楽しみな存在だった。ELとDLの引退後は、工事車両として活躍するGV-E197系(GV)が役割を引き継ぎ、新たな歴史を刻もうとしている。

団体列車「カシオペア紀行」の先頭を走るEF81
「奇跡の復活」につながる異変が起きたのは、GVが営業列車デビューした7月19日。GVを紹介するニュースリリースの「SLを引くのは俺だ」という言葉に、関係者が寄せる期待の高さがうかがえた。この日は先頭にGV、最後尾にSLのD51を連結した「GV・SLぐんま横川」が、華々しく高崎から信越線へ向かった。
ところが、D51は動輪が回転しないまま引きずられるような状態で走って故障してしまい、修理を受けることになった。翌月になると、高崎車両センターにもう1両あるSLのC61が定期検査に入った。SLが不在なのに次の運転日だけが迫ってくる。それまで代役を務めたELとDLは、もう高崎から引退している。
そこで白羽の矢が立ったのが、新潟車両センターにある国鉄型ELのEF64だった。8月9日に高崎から両毛線の桐生へ向かう「SL・GVぐんま桐生」と帰りの「GV・SLぐんま桐生」で、EF64がSLの代わりを務めることになった。同じように、翌日と翌々日の信越線への列車もEF64の代走が決まった。奇跡は、SLの故障という悲劇の上に起こった。

海底の関門トンネル走行用に、さびないステンレス車体となったEF81-300番台は「銀釜」と呼ばれて人気がある
筆者は8月9日朝、両毛線の沿線へ向かった。電車から見える各撮影スポットには、早くも三脚が立てられていた。1番人気のスポットは既に密集状態に。筆者が訪れた場所は幸いなことに、巡回のパトカーが停車せず素通りする程度の人出だった。居合わせた撮り鉄たちと談笑して待ち時間を過ごしていると、1番人気の方向から、車の移動を促す拡声器の音がひっきりなしに聞こえてきた。お祭り騒ぎの様子が目に浮かんだ。
「その時」が近づくと、遠くから汽笛が響いてきた。「いよいよだ」。やがて近くの踏切の警報音が鳴り、遠くを見渡せる場所にいる人たちから「来た来た」の声が。すぐにヘッドライトの光と青にクリーム色の車体が見えた。待ちに待ったEF64だ。SL用のダイヤのためか、定期列車がビュンビュン通過するのとは対照的に、ゆっくり近づいてきた。ヘッドマークは付いていない。列車名の「SL」という文字を入れた板は、掲げにくかったのかもしれない。
いつもは多くの撮り鉄たちと同じように、筆者も先頭車両から最後尾までカットに入れる「編成写真」が好みだが、あえて今回は変えてみた。銀色に輝く後ろ2両のGVを樹木で隠し、往年の客車列車のように見せたかったからだ。かつてEF64は、あけぼの、出羽などのブルートレインをけん引した。実際に今回と同じEF64の1000番台と12系客車の組み合わせが存在したのか不明ながら、それっぽく見えて懐かしい。

現在は定期検査中のC61がけん引した客車列車
その後D51は修理を終えて復帰したが、9月4日、上越線で営業運転再開に向けた試運転の最中に脱線事故を起こし、再び走れなくなってしまった。この影響で「SLぐんま」は11月までの運休が決まった。GVやELが代走する列車も走らない。
これとは別に、新潟地区では11月に「ありがとうEL」という臨時列車が走る予定だ。列車名から「これが最後」というメッセージが聞こえてくる。高崎、新潟地区以外では、JR東日本は6月にツアー専用客車列車「カシオペア」の運行を終えた。けん引していた国鉄型ELのEF81も引退することになりそうだ。
JR貨物では、3月のダイヤ改正で、新鶴見機関区と門司機関区から国鉄型ELの定期列車が消えた。たまにJR発足後に製造されたELの代走を務めることはあるようだが、関東や九州で国鉄型ELが引く貨物列車をほとんど見られなくなった。現在も愛知機関区のEF64には定期列車が残っており、主に愛知、長野、岡山、鳥取の各県で活躍を見ることができる。
☆共同通信・寺尾敦史 2月下旬に連休が取れて九州に行きました。お目当ては門司機関区のEF81とED76。帰京後しばらくして定期運用離脱のニュースを知り、「夏と秋にも行きたかったのに」とがっかり。「撮れたから幸運だよ」と気持ちを切り替えるまでに時間を要しました。