「ここさえ歩けば来たかいが」 来場者笑顔の大屋根リング 設計者の意図をも超えた感動

設計者の意図を超えて感動を呼んだ大屋根リング=大阪市此花区(泰道光司撮影)
2025年大阪・関西万博のシンボル、大屋根リングは、多くの来場者に「ここさえ歩ければ万博に来たかいがある」とさえ言わしめた。設計した建築家の藤本壮介氏は8日、万博会場内で開かれたトークイベントで、「来場者によって設計の意図をはるかに超えた」と、感動に震えた胸の内を明かした。
イベントでは藤本氏のほか、「静けさの森」の植栽などを担当した忽那(くつな)裕樹氏と大阪市の横山英幸市長が登壇。シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」のプロデューサー、宮田裕章氏の司会のもと、それぞれの設計の意図や、今後の大阪の街づくりについて話した。
藤本氏は、4月13日に万博が開幕し、来場者がリングの上を笑顔で歩いているのを見たとき、「すでに構造体としては完成していたが、命が吹き込まれていったようで感動的だった」と振り返る。〝対岸〟を歩く人の姿も小さく見え、「はるかかなただけれど、同じところにみんながいるという感覚が、設計の意図をはるかに超えて現れた」と語り、写真や映像では伝えがたい万博ならではの感動だとした。

大阪・関西万博とこれからの大阪の街づくりについて話す忽那裕樹氏、藤本壮介氏、横山英幸・大阪市長(右から)=大阪市此花区
会場の中央部にあるパビリオンを目指す場合、リングを歩くのは遠回りだ。ネットで調べ、目的地までの最短距離を歩くのが当たり前になっている時代に、迂遠(うえん)ともいえるが、宮田氏は「リングは移動そのものを目的にした。(一周すれば元の場所に戻る)どこにも行くわけでもない丸いリングを、みんなが楽しそうに歩いている」と藤本さんをたたえた。
リングの下では、ベンチやレジャーシートに座って休憩したり、食事を楽しんだりする人の姿も。高さ最大約20メートルの規模を誇り、「世界最大の木造建築」としてギネス世界記録に認定されているリングだが、藤本氏は「柱の間隔は3.6メートルと8畳間くらいの広さにあたり、(低い)はりの下は家の中にいるような感覚になる」として、大聖堂のような巨大さの中に人間のスケールに近い空間を同居させている設計の狙いを明かした。

トークイベントの司会を務めた宮田裕章氏=大阪市此花区
会場の中心部にあり虫の音が心地よい「静けさの森」は、閉幕後もそのまま残されることが決まった。「静けさの森には、日本の風景から失われかけている雑木林の美しさと、豊かさがある」と忽那氏。宮田氏は、リングと静けさの森が会場において「『目的がなくとも、そこにいていい』という空間になった」と分析した。
こうした発見を、大阪の街づくりにどう生かすかを問われた横山市長は、「大阪はキタとミナミで街の雰囲気が全然違う。御堂筋を、新大阪から難波まで歩いて楽しめるようにしたい」との考えを披露。忽那氏は「歩きながら街それぞれの歴史と人が見えてくるのは、最高に楽しい」と応じ、藤本氏も「淀川の上を遊びながら渡れる公園を作りたくなった」と笑った。(藤井沙織)