ロシアの無人機製造に息切れの兆候、廉価な囮ドローンの投入も財政圧迫

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

米海兵隊が運用している小型ドローン群とそれを支援する陸上移動用の無人車両(8月13日、沖縄県のキャンプ・シュワブで、米海兵隊のサイトより)

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由

 ロシアは最近頻繁に、1日に500機以上の無人機攻撃をミサイル攻撃と合わせて行っている。

 ウクライナにも被害が出ている。今年7月の1か月間の攻撃は、6000機を超えた。8月はいったん約4000機までに減少したが、9月には5500機に増加した。

 ウクライナが無人機関連の軍事工場を攻撃してはいるが、ロシアの無人機攻撃回数は、大きく減少はしていないようだ。

グラフ1 ロシアの無人機攻撃の推移(月間)

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

出典:ウクライナ空軍司令部日々発表資料を筆者がグラフにしたもの

 最近のロシアの無人機攻撃について、以下を解明する必要がある。

①増減数から読み取れる攻撃の過激性

②攻撃機数増減の理由

③爆薬を搭載した攻撃機か囮機かの区別

④撃墜と打ち漏らしの比率

 併せて、囮無人機が増加している状況で、ウクライナが爆弾を搭載した無人機(シャヘド)や囮無人機攻撃へどのように対処しているのか、さらにロシアがそれを真似ようとすることも明らかにしたい。

2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加

 ロシアの今年の7月と9月の無人機攻撃は、これまでで最も多かった。

 攻撃増減の理由を解明するために、多い月を含んだ7~9月の3か月間の日々の無人機攻撃をグラフ(グラフ1)にした。

 そのグラフに無人機攻撃の増減に関連する事象を重ね合わせたところ、ロシアがなぜ無人機攻撃を増減させたのか、その理由が浮き彫りになった。

グラフ2 7~9月、ロシアによる日々の無人機攻撃の回数

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

 7月は、1日に300機以上攻撃する日が10回で7月30日まで続いた。

 1日にこれだけ多くの無人機攻撃を行ったことと、その結果、7月の1か月間で6300機を超えたことは、侵攻開始以来、初めてのことである。

 このような過激な無人機攻撃(ミサイル攻撃を含む)を実施したのは、6月1日にウクライナがロシア国内飛行場に駐機してある爆撃機等40機を破壊した後である。

 このときロシアは面子を潰され、仕返しをするために、約1か月間、製造した無人機を貯め、7月に集中的に使用したと考えられる。

 8月初めから中旬まで、無人機攻撃はほとんど1日に100機以下であり、一時的に低調になった。

 これは、米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談(8月15日実施)の前であったことの影響が大きい。

 米国によるロシアへの経済制裁やウクライナ支援をやめさせたいプーチン氏の一時的なポーズであったのだろう。

 米ロ首脳会談後、ロシアは無人機攻撃を増加させた。

 8月20日から9月末までの40日間に、1日に500機を超える日が7回もあった。9月の1か月間では5500機を超えた。

 増加の理由は、ウクライナが8月からロシア国内の石油関連施設を頻繁に攻撃したことへの仕返しと考えられる。

 また、米ロ首脳会談の約束は、8月15日に一応取り付けた(一時的)ことで、攻撃がやりやすくなった。

 8月前半に使用しなかった分を9月に回すことができたことも理由の一つである。

3.半数は小さな爆薬の囮無人機

 ウクライナ空軍は日々、ロシアの無人機やミサイル攻撃について発表している。

 ときどき、ある時期の特定期間だけに限って、「シャヘド136」の機数とそれ以外に区分して発表している。

 シャヘド以外は、小型で爆薬も少ないものばかりだ。

 その比率は、公開されたデータでみると、7月1日から18日ではシャヘドが62%、それ以外が38%で、9月の20日間ではシャヘドが52%で、それ以外が48%であった。

 シャヘド以外の大部分は、主に「ゲルベラ」と呼称される無人機である。シャヘドの形に似ているが、小型・安価で、骨格の素材は合板と発泡スチロールである。

写真1 左:シャヘド136 右:ゲルベラ

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

出典:ウクライナ参謀部

 シャヘドとゲルベラを比較すると、シャヘドは全長3.5メートルで搭載爆薬が50~90キロ、ゲルベラは全長2メートルで搭載爆薬が5キロ以下のものがほとんどで、爆薬を搭載していない機体もある。

 空中を飛行するゲルベラは、形状がシャヘドと似ていることから、囮としての効果を狙っている。

 ウクライナ軍の防空兵器を使わせるためのもので、囮に高価なミサイルを一発でも使ってくれれば、貴重な防空ミサイルをウクライナに消費させることができる。

 ウクライナがこの無人機を打ち漏らしても、搭載爆薬がないか約5キロと少なく、大きな被害は期待できない。

 ロシアの無人機の半数がこのような囮無人機であるということは、ウクライナに大きな被害を与えるというより、無駄な弾を使わせるのが主な狙いと考えられる。

4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上

 ウクライナ空軍は、ロシアのシャヘドなどのドローン攻撃を受け、撃墜した数量と打ち漏らした数量を日々公表している。その月ごとの数値を表したのが、グラフ2である。

 特に、撃ち漏らしが多くなった今年3月から見ると、少ないときで10%、多い時で18%であり、平均では14%であった。

グラフ3 2025年に入って撃ち漏らし数が増えた

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

ウクライナ軍の公表数字を基に筆者作成

 最も攻撃機数が多かった7月の撃墜数は約5350機で、撃ち漏らしたのが約950機であった。

 ウクライナとしては950機打ち漏らして被害を受けたことは痛いが、ロシアも5300機も撃ち落とされており、多くの損失を受けている。

 ロシアとしても財政的に負担が大きく、苦悩しているといえる。

5.最も安価な防空兵器製造を追求

 ウクライナはロシアの無人機を撃墜あるいは無力化するために、各種防空兵器を使用している。主なものは5種類ある。

①ウクライナの防空部隊は、ドイツから35ミリ2連装高射機関砲を備えたゲパルト戦車が供与されている。これらが、ロシアの無人機撃墜に最も効果を発揮している。

②ウクライナの各部隊(ロシアも同じ)は、旧ソ連時代に製造された23ミリの2連装または4連装の高射機関砲を大量に保有している。

 市街地であれば、ビルの屋上などに設置して使用されているものだ。これらは、レーダーや射撃統制システムによって発射できないので、無人機を撃墜するのは難しい。

 1000発発射して1発命中するかどうかだ。兵士の練度が上がれば、命中率は少しではあるが向上するだろう。

③最近では、同じドイツのラインメタル社の35ミリ(1門)高射機関砲を備えたスカイレンジャー防空兵器が開発されており、ウクライナに供与されるという情報もある。

 この弾丸は、30ミリあるいは35ミリのAHEAD弾(Advanced Hit Efficiency And Destruction)(目標に接近すると、子弾が放射状に発射され、命中率が高まる弾)を使用して、少ない弾数で撃墜を可能にするものである。

参照:JBpress『安価な偽ドローンを大量に使い始めたロシアの狙いと実態、その対応策』(2025年7月24日)

④「ヒドラ70」ロケット弾:無誘導の70ミリ対ドローンロケットであり、2023年に米国から供与されたとされる。

 ロケットの内部に多数の子弾を備えたものである。戦闘機や攻撃ヘリコプター「Mi-24ハインド」から発射され、目標に接近すれば、子弾が放出され命中する。

 同じ70ミリで、欧州のタレス社の新型「FZ123」弾頭がウクライナに供与された。その弾頭には数千個の小さな鋼鉄の子弾が詰め込まれており、炸薬が爆発すると半径25メートルに分散する。

⑤電子妨害装置による無人機の無効化:ロシアの無人機、特に囮無人機には効果があり、一時期には35%前後無効化することができた。ウクライナ空軍司令部は最近、その情報を公表しないので詳細は不明である。

 ロシアの無人機は、高高度から低高度まであらゆる飛行高度を使い、また、目標付近に近づけば急速に高度を変えるなど、効果を上げようとしている。

 ウクライナはそれらの攻撃に対して、上記の5つの手段で対応している。今後、最も優先すべきなのは安価で撃墜可能な兵器の量産だ。

6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器

 ロシアは2020年の軍事パレードに「2S38 57ミリ自走対空砲」を登場させた。

 この短距離防空兵器は、ドイツのラインメタル社の「スカイレンジャー」に外見上きわめて似ている。どちらかが真似たように思えるほど酷似している。

写真 左:スカイレンジャー(独)、右:2S38 57ミリ自走対空砲(ロ)

1.ここ3か月間の無人機攻撃増加とその理由, 2.7月と9月に無人機攻撃が著しく増加, 3.半数は小さな爆薬の囮無人機, 4.ウクライナの無人機撃墜率は85%以上, 5.最も安価な防空兵器製造を追求, 6.ドイツ製兵器に似たロシア防空兵器, 7.大量の無人機攻撃にも苦悩

出典 左:ラインメタル社、右:ロシア国防省

 どちらもレーダー捜索・追随・測距、射撃統制の能力を有している。

 砲の性能は、ラインメタル社が砲身35ミリ、発射速度18発(秒)、初速が秒速1175メートル、子弾を放出する。

 ロシアが57ミリで、発射速度2発(秒)、初速が秒速1000メートル、子弾はない。

 ロシアの高射砲タイプの防空兵器(パンツィリなど)の射撃映像を見ると、命中精度が悪い。

 なぜなら、ウクライナの低速の無人機を打ち漏らしているからだ。

 その理由は、機関砲の発射速度が遅く大量に砲弾を撃ち込めないこと、また、射撃統制装置の精度が悪いからと考えられる。

 ウクライナ防空兵器によるロシアの無人機の撃墜率は高いが、ロシアのそれは、詳細は不明だが、多くの無人機を打ち漏らし、重要インフラが破壊されているのが現状である。

 つまり、ロシアは欧米と同じような防空兵器を製造しているが、外観は似ていても性能差には大きな開きがある。

7.大量の無人機攻撃にも苦悩

 ロシアは、大量の無人機の生産に、イランや中国から部品を購入するためにも、莫大な費用を必要としている。

 費用を節約するため、シャヘドに似た木製の小型囮機を製造している。小型囮機製造の比率も増加せざるを得ない事態になってきている。

 それらも、ウクライナに85%が撃墜され、また、製造工場もウクライナのドローンに攻撃されている。

 ロシアは、6000機を超える無人機攻撃のために、多くの苦悩を抱えているのである。

 しかも、ウクライナが使用する防空兵器と同程度で同形の防空兵器を製造しようとしても、性能ははるかに及ばないのである。

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