首相指名を巡る歴史的なドタバタ劇、SNSはどう反応したのか 高市氏ピンチで投稿データに変化、急浮上も失速の「玉木首相」【データ・インサイト】

会談に臨む(左から)日本維新の会の藤田文武共同代表、吉村洋文代表、高市早苗首相、自民党の鈴木俊一幹事長=10月21日、首相官邸

 首相指名選挙を巡り異例に次ぐ異例の展開となった政界。自民党総裁選で高市早苗新総裁が選出された10月4日からビッグニュースが続き、21日の内閣発足までに永田町の景色は一変した。 

 目まぐるしい政局のポイントとなった出来事は次の三つ。➀公明党が自民に連立離脱を伝達、➁野党間の「玉木首相」を巡る駆け引き活発化、そして➂日本維新の会と自民の連立協議入りだ。こうした激動が1週間程度で連発したのだから、政治の世界が「一寸先は闇」と言われるのもうなずける。 

 国民や有権者に目を移すと、交流サイト(SNS)で活発な議論が見て取れた。物価高で国民生活が圧迫される中で繰り広げられた与野党のドタバタ劇を、多くの利用者が期待や不安が入り交じる心境で見守ったのだろう。 

 「日本政治の転換点」(自民党関係者)とも言われた今回の政局。歴史的な節目を、ユーザーの多いX(旧ツイッター)のデータと共に振り返ってみたい。(共同通信・デジタル取材チーム) 

NTTデータの「なずきのおと」で調査

▽首相指名への関心

 この記事のために実施した一連のX投稿(ポスト)調査は、NTTデータのSNS分析ツール「なずきのおと」を利用した。対象期間はいずれも、高市氏が自民党総裁に選出された10月4日から、首相に指名された21日までの18日間としている。

 まず、首相指名選挙に言及したポスト数を紹介する。「首相指名」や「総理指名」といったワードに触れた日本語ポストを抽出すると、計152万件あった。

 日ごとの推移を見ていく。自民党総裁選があった10月4日から3日程度は、投稿数は低調だった。高市氏の首相選出が有力視されており、波乱の可能性は低いと捉えられていたのかもしれない。

 だが、8日になると前日の2万件から7万件に急増。自民、公明による連立継続の雲行きが怪しくなってきたのに加え、7日に立憲民主党の安住淳幹事長が首相指名選挙の投票先について他の野党党首への一本化も視野と発言し、国民民主党の玉木雄一郎代表が指名される可能性が浮上したことが影響したとみられる。

 公明が自民に連立離脱を通告した10日には、ポスト数が16万に達した。高市氏の首相指名に「黄信号」が点灯したことが影響したのだろう。公明の離脱により衆院の議席構成上、立民、維新、国民が協力すれば本当に「玉木首相」が実現可能となり、野党間交渉への注目がにわかに高まったことも大きな要因と考えられる。

 再び大きくポスト数が変動したのは15日。維新の吉村洋文代表(大阪府知事)らが高市氏と会談し、連立協議入りで合意した日だ。

 時系列で見ると、政局の節目に多くのXユーザーが反応したことが分かる。

▽高市氏、「応援」ワードが頻出

 次に「首相候補」に挙がった主な党首について見ていきたい。党首名と共に「首相」または「総理」と書かれたポストを抽出した。

NTTデータの「なずきのおと」で調査。頻出ワードは1日当たり約1万件を抽出して解析

 まず、自民・高市氏のデータを紹介する。条件に当てはまるポストは計549万件に上った。

 高市内閣が発足した21日が80万件で最多。次いで多いのは党総裁に選ばれた4日の59万件だった。5日以降は減少し、9日には16万件あまりに落ち込んだが、公明の連立離脱が決まった10日には27万件となり、再び増加に転じた。12日には38万件まで上昇。維新との連立協議入りで合意した15日から、連立が成立する前日の19日までは、高市氏が首相指名される可能性が高まったからか、ポスト数は落ち着いていった。 

 高市氏を巡る投稿に多く使われたワードの推移も調べてみた。1日当たり約1万件を抽出し、頻出ワードを100位まで解析。すると、公明との連立解消までは「史上初」「女性」「首相就任」といった、高市氏の首相指名を前提にしたかのようなワードが散見された。 

 だが、公明との連立解消が現実味を帯びると一変し、「#高市早苗さんを総理大臣に」や「#立憲民主党にうんざり」といった高市氏を「応援」するようなワードが連日頻出上位に。保守層が折に触れて批判する「中国」も順位を上げた。公明が連立離脱を伝えた日にポスト数が増加したことも踏まえれば、高市氏に好意的なXユーザー間で「ピンチ」との認識が広がったのかもしれない。野党連携による政権交代を訴えた立民への警戒感もうかがえる。 

 維新と連立協議入りした15日以降は、「維新」や「閣外協力」といった連立に関するワードがよく使われるようになった。 

NTTデータの「なずきのおと」で調査。頻出ワードは1日当たり約1万件を抽出して解析

▽玉木氏、決断力に疑問符?

 今回の政局におけるもう1人の主役、国民民主の玉木代表についても見ていきたい。玉木氏の名前と「首相」「総理」というワードが書かれたポストは計86万件。序盤は1日1000件あまりと低調だった。

 ただ、立民側が首相指名選挙での野党一本化に言及し、玉木氏も首相候補に浮上した7日から目立って上昇し、10日は7万件、11日には15万件に上った。高市氏のポスト数と比べれば引き離されているものの、多くのユーザーが関心を寄せたのは間違いない。

 玉木氏も注目度の高まりを意識したのか、10日午後6時半ごろ、自身のXに「私には内閣総理大臣を務める覚悟があります」と投稿。このポストは21日時点で5500万回超閲覧され、約7万5千件の「いいね」が付いている。

 「玉木首相」が取り沙汰される中、国民民主は立民に基本政策の一致を要求。「原発ゼロ」方針などを転換して国民民主側に合わせなければ、連携には応じられないとSNSやメディアで発信を重ねた。他方で、自民との連立を否定しつつも、玉木氏が高市氏と会談し、「基本政策は自民とかなり重なる」と述べるなど、「近さ」をアピールした。

 こうした動きは公明の連立離脱決定後、数日にわたって続いたため、いくらか停滞感が出てしまったのかもしれない。玉木氏を巡る投稿は徐々に減り、自民、維新両党が連立で合意した20日には1万件まで落ち込んだ。「玉木首相」の可能性が薄れたことで、関心も急速にしぼんでいったのだろう。 

 ポストに頻出したワードも、高市氏を巡る投稿と同様の手法で調べた。立民・安住幹事長が首相指名選挙で立民以外の野党党首への投票も視野と述べた7日から、「首相指名」や「首相候補」といった言葉が100以内に連日登場。10日以降は「覚悟」が上位に来た。 

 だが、自民、維新両党の連立協議入りで一変。17日以降、「勝負勘」「決断」「迷走」「風見鶏」といった言葉が頻出した。与野党双方に対し煮え切らない態度を取ってきた玉木氏の「決断力」を疑問視する投稿が15日以降、X上で散見されたため、こうした声を反映したものとみられる。 

NTTデータの「なずきのおと」で調査

▽終盤に急上昇した維新

 自民党との連立協議入りで15日以降、急速に注目度を増した維新についても調査した。「首相」「総理」「連立」といった首相指名選挙の関連ワードと共に維新へ言及したポストを抽出。10月4日~21日に計122万件投稿されていた。

 日ごとに見ると、14日までは多い日で3万件台と低調だったが、自民と連立協議入りした15日に6万件程度まで上昇。両党間で基本政策の一致を確認した16日には、18万件へ跳ね上がった。抽出条件が異なるので単純比較はできないものの、玉木氏の推移を加味すれば、自民・立民による権力闘争のキャスチングボートを握る野党についての関心が、玉木氏から維新に移ったとも受け取れる。

会談に臨む(左から)国民民主の玉木雄一郎代表、立民の野田佳彦代表、維新の藤田文武共同代表=10月15日、国会

▽「物価高」「生活」も頻出

 Xのポストデータからは、自民党総裁選から首相指名までの18日間、目まぐるしく動く政局に連動し、ユーザーの関心や注目が移ってきたことが伺える。さまざまな政治的立場の人が登録するX上で、「十数年に1回の政権交代のチャンス」(立民・野田佳彦代表)への期待と不安、驚きなどさまざまな感情が交錯し、投稿数が増幅していったのだろう。 

 ただ、一連の動きは永田町という狭いエリアで繰り広げられた多数派工作に過ぎない。物価高に苦しむ国民の中には、相次ぐ政局で経済対策などの議論が進まない状況にげんなりしてしまった人も少なくないだろう。 

 「首相指名」や「総理指名」に言及したポストの頻出ワードも解析したところ、「物価高騰」「生活」という単語が挙がっていた。新たな内閣が発足した今、与野党とも、国民生活の向上のために全力を傾けてもらいたい。