見掛け倒しだったロシアの最新戦闘機、実戦使用に堪えず恫喝目的だけ

北海上空を飛ぶ米空軍のF-35Aステルス戦闘機(9月4日、米空軍のサイトより)
1.ロシア新型戦闘機、侵攻当初に多数撃墜
ロシアは、「MiG(ミグ)-29」や「Su(スホイ)-27」のような第4世代戦闘機の次の世代である第4.5世代や第5世代戦闘機を製造してきた。
その機名は、第4.5世代では、「Su-30・34・35」や「MiG-31/35」、第5世代では「Su-57」ステルス戦闘機などだ。
このように、ウクライナ侵攻以前まで、ロシアは、NATO(北大西洋条約機構)の戦闘機に勝てる戦闘機を製造してきたつもりだった。
写真 ロシアの主な空軍機 左:Su-35 右:Su-57

出典:ロシア軍事企業「Rosoboronexport」HP
しかし、それらの戦闘機はウクライナ戦争で活躍しているのだろうか。
2022年2月の侵攻当初、ロシアの戦闘機はウクライナ国土内に侵入したものの、1か月間で約100機、2か月目には約80機が撃墜された。
その後は、2022年中は1か月間に10~20機、2023年以降は数機から10機以内だ。一機も撃墜されていない月もあった。
ロシア機が撃墜されなくなったのは、撃墜を恐れ、ウクライナの領域に入ってこなくなったからである。
ロシア機は、防空兵器の射程圏内に入ることなく、その圏外から滑空弾を撃ち込んでいるだけなのだ。
ロシアは、数的に圧倒的な航空優勢を得ていたにもかかわらず、期待通りの航空作戦が実施できなかった。そこには、ウクライナの防空能力の高さとロシアの各方面での欠陥があった。
2.役立たずの大きくスマートな新型戦闘機
ロシアの戦闘機は2000年前後、Su-27やMiG-29戦闘機が日本に接近飛行するなど、脅威となっていた。現在は、それらが能力を向上させ、日本を含め周辺国にも脅威となった。
欧米が保有する「F-16」や「F-35」は、全長が15メートル程度かそれを少し超える程度なのだが、新型のロシア機は全長22~23メートルの大型機である。
性能諸元を見ると、速度は欧米の機よりも少し速く、空対空ミサイルの射程も米欧のものよりも長いものもある。
ロシア機と欧米機の性能や大きさを比較すると、各調査機関が発表している性能諸元表上は、ロシア機が優れていることになっている。
表 ロシアと欧米(ウクライナ)保有の戦闘機能力比較

出典:ロシア国営軍事企業など各種情報を筆者がまとめたもの
ロシアの戦闘機は、外観や性能諸元上では周辺国に脅威を与えるものであった。だが、実戦ではこれまで十分な役割を果たすことができていない。
ロシアの戦闘機は、ウクライナの防空兵器圏内に入ると、何もできずに撃墜されている。
3.ウクライナ領土内への飛行を停止
ウクライナ軍とロシア軍の戦闘機・攻撃機(戦闘機等)の総数を比較すると、ウクライナ軍の約115機に対しロシア軍は約875機であり、ロシア軍がウクライナ軍の7.6倍である。
ロシア空軍は、ウクライナ空軍が保有する機種より性能が高い「MiG-31」、「Su-30」、「Su-34」、「Su-35」を約390機保有していた。さらに爆撃機137機を保有している。圧倒的な戦力の差があった。
このことから、ロシア機はウクライナの上空を自由に飛行して攻撃できるはずだったが、実際はそうではなかった。
図 ロシア空軍機が期待したウクライナ領土内攻撃要領(イメージ)

出典 各種情報を基に筆者が作成したもの(図は以下同じ)
ロシア機は現在、ロシア領土内のウクライナ防空兵器の射程圏外から滑空弾を投射しているだけである。
図 ロシア空軍機の前線付近への滑空弾攻撃要領(イメージ)

4.ロシアのステルス戦闘機は働いていない
ロシアのSu-57ステルス戦闘機は、欧米のF-35ステルス戦闘機と比べ大型(全長20メートル)で、飛行速度も速い(マッハ2)。
航空機としての能力はSu-57の性能が高い。装備は、両機とも空対地ミサイルや長射程の空対空ミサイルを有しており、対地・対空能力はほぼ互角である。
ステルス戦闘機は、ウクライナには供与されていないし、今後も供与されるといった情報は全くない。「ミリタリーバランス2024」よれば、ロシアは12機保有しているという。
重要なのはステルス性能がどこまで高いかだ。
2023年1月の英国防省情報によると、ロシアはSu-57をウクライナ戦争で実戦投入しているものの、撃墜や機密流出などを恐れ、ロシア領土内から長距離ミサイルを発射しているだけのようだ。
侵攻開始以来、ロシアのSu-57がウクライナの上空を飛行して、ウクライナの軍事基地や工場を爆撃している、あるいはウクライナ戦闘機に対して、空対空ミサイルを発射しているというような情報は一切ない。
このステルス機も、ウクライナの領域内に侵入していないのである。
ロシアは、現在の戦況を有利に展開するためにウクライナ国内の重要施設や前線配備のウクライナ地上軍をこのステルス機で攻撃する選択肢があるはずなのだが、ステルス機を投入する気配はない。
ロシアは、Su-57をステルス戦闘機と呼称しているものの、実態は欧米機ほどのステルス性はないのかもしれない。
欧米の監視レーダーに察知され、捕捉レーダーに追随される不安があるからウクライナ上空を飛行させていない可能性がある。
5.防空ミサイル圏外から滑空弾攻撃のみ
ウクライナの防空ミサイル圏外からの滑空弾攻撃や空対地ミサイル攻撃にロシアは、第4.5世代の1つ前に当たる第4世代のSu-27やMiG-29戦闘機、Su-24攻撃機を多く用いている。
一方、新型機のMiG-31・35、Su-30・34・35はどうかというと、こちらも第4世代戦闘機と同じ役割しかしていない。
ウクライナ防空ミサイルが活動している間に滑空弾攻撃だけを行うのであれば、わざわざ第4.5世代機を投入する意味はほとんどない。
ロシアは、欧米の戦闘機に対抗して勝てる戦闘機を開発・製造したはずだ。
だから、本来はウクライナに供与されたF-16戦闘機と遠距離の空中戦に挑んで、F-16を撃墜しようとする作戦があってもいいはずだが、それはしない。
ロシアの新型機は、ただウクライナ国境から遠く離れた基地に移動し、滑空弾攻撃を行うためだけに、ウクライナ防空兵器の圏外近くまで移動して、そこから、滑空弾を発射して帰投しているのである。
6.平時の恫喝飛行では役立つ新型機
ロシアのMiG-31戦闘機3機が2025年9月19日、エストニア領空を侵犯し、約12分間フィンランド湾上空にとどまった。
また、Su-30戦闘機1機と給油機が2025年10月24日、リトアニアの領空の700メートルを18秒間侵犯した。
ロシアは平時、敵国の防空兵器や戦闘機がミサイル攻撃を実施しないとわかっている時は、新型機を使って相手国の領空を侵犯して、恫喝やいやがらせを行っている。
だが、防空ミサイルなどで撃ち落とされる可能性があるときは、相手国の戦闘機との空中戦に挑むことなく、自国の領土の国境から離れた位置に逃げるのだ。
ロシアは、相手が弱く出てくるときは強気で恫喝を行い、相手が攻撃してくるときは、被害を受けないところまで逃げているのである。
7.極東まで逃げた戦略爆撃機
ウクライナは2025年6月1日、基地に駐機している爆撃機等を狙って、トラックで国内に入り、その後ドローン攻撃した。
この攻撃で41機の爆撃機や早期警戒管制機などが破壊された。
その後、ロシアの戦略爆撃機は極東方面に配置換えされた。ウクライナの国境から遠く離れた基地に逃げてしまったのである。
ロシアの戦略爆撃機や大型の哨戒機が日本を周回したり、航空自衛隊のレーダーサイトをミサイルで模擬攻撃する飛行を行ったりすることがある。
有事にこのような行動をとれば、海上のイージス艦や陸上の防空ミサイルで簡単に撃墜される。
爆撃機も同じように、有事にミサイルが飛んでくるときは遠くまで逃げ、平時にミサイルで撃墜されないときに、恫喝してくるのである。
8.ロシアの戦闘機等は張子の虎か
ロシアの新型戦闘機は、欧米の戦闘機に比べ大型で飛行速度も速く、形も流線形であり、性能が優れているように見える。
NATO(北大西洋条約機構)加盟国の領土や日本の領土の近くまで接近し、時には領空を侵犯し脅威を見せつけてきた。
しかし、実戦となれば、無謀に接近した大きな機体には実弾が飛んできて命中しやすい。
ステルス戦闘機と呼称しているSu-57も、実際はステルス性能が十分には満たされていない可能性がある。
ロシア機は攻撃されないときはその大きさで相手国を脅しているが、戦争状態では、安全な後方に下がって爆弾を投下することしかできない。
ウクライナ戦争でその事実を世界に知られてしまった。
高価な機なので撃墜されれば損害は大きい。それで遠くに逃げるのかもしれない。
しかし、これでは有事に役に立たない。
ロシア機は、ウクライナの領域内に入って攻撃することは「しない」が、これは、ウクライナの防空兵器から撃墜される恐れがあるために「できない」のである。
ロシアのステルス機はレーダーには映らないはずだが、実際には映ってしまうのではないかと恐れて、ウクライナ領土には侵入できないでいる。
ロシアのレーダーには映らないのかもしれないが、欧米のレーダーには映る可能性を危惧しているのだろう。
米国のドナルド・トランプ大統領は2025年9月、ロシア軍を「張子の虎(paper tiger)」と呼んだ。
戦闘機や爆撃機が平時では威嚇してくるが、有事になれば安全なところに逃げる意気地なしとまで侮蔑されたわけだが、それ以降も安全第一で運用していることから、実際、張り子の虎なのだろう。
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