東京のサグラダ・ファミリア「蟻鱒鳶ル」が約10メートル移動 着工から20年、来年2月に完成へ

南方向へ(左から右)の曳家工事が行われた蟻鱒鳶ル。9月20日と22日に撮影された2枚の写真を合成
東京都港区三田の聖坂に建築中の不思議なビル「蟻鱒鳶(ありますとんび)ル」を南東に約10メートル移動させる曳家(ひきや)工事が今月、終了した。建築家の岡啓輔さん(60)が設計も施工も自ら担って20年にわたり作り続けてきた「セルフビルド建築」は、来年2月に完成する予定だ。

今年8月に行われた曳家。東方向へ(写真左から右)9メートル移動した
曳家工事は8月下旬から10月上旬にかけて実施され、まず東方向に約9メートル、次に南方向に約8メートル移動。岡さんらが見守る中、ビルは特別に設置されたレールに乗り、肉眼では捉えられないほどのゆっくりとしたスピードで少しずつ進んでいった。

今年9月に行われた曳家。南方向へ(写真左から右)8メートル移動した
ビルは、岡さんの自宅用として平成17年に着工。建築面積は約24平方メートル、地上4階地下1階という狭小住宅。鉄筋コンクリート製ながら、外壁は不思議な突起や文様で覆われ、地域の名物となっている。
コンクリートの水分量を少なくしたため、専門家に「200年もつ」とお墨付きを得た頑丈さ。作業に時間がかかって工期もたびたび延び、なかなか完成しないことから「三田のサグラダ・ファミリア」と呼ばれている。
完成が遅れた理由の一つは、周辺の大規模再開発に巻き込まれたこと。交渉の結果、ビル本体の工事終了後、曳家工法で東南方向へ移築することで決着がついた。
岡さんは「こんな場所まで来たか、という感じ。20年かけてつくったものが動いて、キツネにつままれた気持ちです。残っている作業をする中でしっくりくるのかもしれませんね」と話した。来年2月まで、基礎や配管などの工事が続く。

装飾に覆われた蟻鱒鳶ルの南面。曳家工事後に隣のビルと近づいたため、目にすることは難しくなった=昨年10月
(写真報道局 安元雄太)