吉村知事は「好きだから『残す派』」 万博リング部分保存を断言 土俵際の「全残し派」

大阪・関西万博の象徴となった大屋根リング=大阪市此花区の夢洲(本社ヘリから)

13日で閉幕した大阪・関西万博のシンボルだった大屋根リングの保存をめぐり、にわかに「周回できる形で残してほしい」との声が目立ってきている。だが、大阪府の吉村洋文知事は費用面がネックになるとして「現実問題として厳しい」との認識を示し、部分的に保存するという現在の方針を変えることはないと断言した。リングの解体工事は年内にも始まる見通しだ。

1970年大阪万博のレガシーとなっている太陽の塔=大阪府吹田市の万博記念公園(鴨川一也撮影)

リングは1周約2キロ、高さ最大約20メートルで、「世界一の木造建築」としてギネス記録に認定されている。閉幕後は全て解体する予定だったが、大阪府市が4月にまとめた会場跡地計画で、北東200メートル部分をモニュメントにする案が盛り込まれた。

9月には日本国際博覧会協会や府市、経済界がこの方針に合意。南側の350メートルを残すことも検討されたが、大阪メトロ夢洲(ゆめしま)駅に近いことなどから北東200メートル部分を残し、市がその周辺を「公園・緑地等」として整備することになった。

リングは、「建築物」か、「準用工作物」にあたる物見塔(展望台)として残すことになりそうだ。防火対策などが必要となり、改修費と10年間の維持管理費の合計は、建築物なら約90億円、物見塔なら約55億円が必要になるとみられている。

「太陽の塔」にはなれない?

万博については、開幕してしばらくは批判的な声が多かったが、SNSの口コミなどで人気が上昇。それに伴ってリングの評価も高まり、1970年大阪万博のレガシー(遺産)として名高い「太陽の塔」がそうだったように、解体計画を撤回して、全部残してほしいという意見が目立つようになった。

大阪の高校生らのグループは「全残し」を希望し、会期中に署名活動を展開。山極(やまぎわ)寿一・京都大前総長らは10月、大阪市役所で会見を開き、リングを一部残す計画について「万博の意義が後世に伝わらない」などと訴えて1周できる形で残すことを求めた。

大阪府の吉村洋文知事(川村寧撮影)

だが、すでにリングの部材の具体的な活用方法は決まってきている。石川県珠洲(すず)市は能登半島地震の復興公営住宅の部材として活用し、愛媛県は来年開催の全国植樹祭で、出席される天皇、皇后両陛下の歩道や、出演者の登壇ステージに活用する方針を示す。

吉村氏きっぱり「ありません」

大阪府の吉村知事は24日、200メートル以外の部分を残さない理由について「維持管理の費用です。(リングは)永久に保存する前提で作っておらず防腐処理もしていない。それをだれが支払うのか」と強調。万博会場となった人工島・夢洲は埋め立てに費用がかかったとし、「有効活用して、賃貸などで回収しないと赤字になる」と語った。

リングは当初は全て撤去する予定だったとしたうえで、吉村氏は「全部なくすのは、だめだと食い下がって200メートル部分を残すというところに至った。そうした経緯を踏まえると、好きだから『残す派』だ」とも述べた。

リングの保存に関し、市民らの声を聞くことについては「ありません」と言い切った。(井上浩平)