維新"還流疑惑"で消えた「衆院電撃解散説」の深層

記者会見で「公金還流」報道について説明する日本維新の会の藤田文武共同代表(写真:時事)

10月末から永田町の一部で“ある怪情報”が駆けめぐっていた。「衆議院が電撃的に解散されて総選挙に突入、12月7日に投開票が行われる」というものだ。

【画像あり】維新“創設者”も怒り心頭? 橋下徹氏が脱字もそのままにXに投稿した「衝撃のポスト」

だが、連休明けの11月4日から3日間にわたった衆参両院での各党の代表質問が6日夕方に終了。7日から衆参両院の予算委員会での基本的質疑がスタートすることになった。

これに伴い、冒頭の「電撃解散説」は「事実上消滅」(自民党長老)した。高市早苗首相を含む与野党の最高幹部たち、限られた関係者の間では安堵と失望が複雑に交錯しているという。

なぜ「電撃解散説」が急浮上し、そして急速にしぼんでいったのか。永田町周辺を取材すると、意外な“深層”が見えてきた。

電撃解散の動きに水を差した赤旗の“特ダネ”

この怪情報が永田町を駆けめぐった10月末は、高市首相の初の大舞台となった一連の首脳外交で最大の焦点だったドナルド・トランプ大統領との日米首脳会談が大成功を収め、高市内閣の支持率が急上昇した時期だった。

その頃、関係者の間で「高市政権の最高実力者が『今、解散すれば、一気に自民党の単独過半数も夢ではない』と語った」という真偽不明の情報が急拡大。代表質問での与野党の論戦に「突っ込み不足」が目立つ裏側で、「12・7政治決戦説」が秘かに注目される状況になった。

この怪情報の“出所”と、解散権を持つ高市首相の“逡巡”の裏側を探ると、「解散への具体的段取り」と「複雑怪奇な政局絡みのうごめき」が浮かび上がる。

「解散の段取り」とは、11月5日夕方の衆院代表質問終了後、あるいは翌6日夕方の参院代表質問終了直後の解散断行、そして「11月25日公示、12月7日投開票」という選挙日程の決定を指す。この段取りについて、関係者の間からは「高市内閣の超高支持率が続く間の、のるかそるかの大博打」(自民党幹部)との声が漏れてきていた。

こうした動きに最終局面で水を差したのが、共産党の機関紙『しんぶん赤旗』が11月4日に“特ダネ”として報じた、日本維新の会の藤田文武共同代表をめぐる「税金還流疑惑」だった。

赤旗は「藤田氏側が2017年6月から24年11月にかけて、自身の秘書が代表を務める会社にビラ印刷などで約2000万円を支出し、その会社が同秘書に年720万円の報酬を支払っていたが、約2000万円のうち9割以上は公金からの支出だった」と報じた。

特ダネの余波はどこまで広がるのか

この疑惑をめぐっては、大阪維新の会の創設者である橋下徹元大阪市長が自らのX(旧ツイッター)などで「完全にアウト」と繰り返し断罪。藤田氏が「まったくの適法で問題なし」としながら「これからは発注先を変える」とした釈明会見についても、「こんな会見ならやらんかった方が良かのに」(原文ママ)と猛烈に批判した。

橋下徹氏は自身の公式Xに藤田氏を批判する内容を投稿した(画像:橋下徹氏の公式Xより)

一方、橋下氏の“子飼い”とみられている維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は、「橋下さんも含めて、さまざまな意見は当然だと思う」としながらも、「辞める辞めないという問題ではない」と藤田氏の辞任論は否定した。

今回の「赤旗特ダネ」の取材源はいかなるものだったのか。政界関係者の間では①内閣情報調査室のリーク、②大阪国税局の極秘調査結果、③維新内部からの密告といった説が入り乱れているが、いずれも「根拠不十分」(自民党長老)との指摘が多い。

ただ、赤旗は6日、公式Xで「藤田氏の疑惑追及第2弾」を投稿しており、維新内部でも「改めて藤田氏の進退が問われる事態となりかねない」(関係者)という不安が拡大している。

これについて、司法関係者からも「これまでのように民間有識者からの告発があれば、大阪地検も動かざるをえなくなる」との声が出始めている。その場合、「連立与党である維新への打撃は大きく、高市首相の目指す政権安定化どころか、連立崩壊にもつながる」(自民党長老)という深刻な事態になりかねない。

しかも、11月7日から14日までは衆参両院の予算委で各3日間、高市内閣と各党幹部による論戦が実施される。最優先課題である「物価高対策」は、円安の影響もあって、即効性のある具体策は見当たらないのが実情。その中で、高市首相が日米首脳会談で約束した「防衛費増額の前倒し実施」は補正予算案を編成するうえでの大きな足かせとなっており、野党の追及をかわしきれるかは不透明だ。

だからこそ、自民党内では「これからの1カ月間は、出たとこ勝負の遭遇戦」(国対幹部)と身構える声が少なくない。

「そう遠くないうち解散」の3つのシナリオ

高市首相はいかなる決断を下すのか(写真:ブルームバーグ)

高市首相は代表質問に答える中で、早期の衆院解散について「そんなことを考える暇はない」と繰り返し否定している。しかし、ここにきて、自民党内だけでなく野党幹部からも「早期ではないが、そう遠くないうちの解散は十分可能性がある」との見方が広がっている。

関係者の見方を総合すると、具体的な解散時期は①今年度補正予算成立後の年末か年明け、②来年度予算成立後の4月、③通常国会会期末の6月、という3パターンが想定されている。

①のケースは「トランプ関税などによる国際社会の動揺・分断の中で、解散による政治空白と政局混乱は絶対避けるべきだ」(自民党幹部)との声が支配的。そのため、高市首相にとっては②と③の2択となるが、「国民生活への悪影響も考慮すれば、どちらもリスクの高い選択になる」(官邸筋)との見方が多い。

加えて、連立相手である維新は「早期解散には絶対反対」(幹部)とされる。立憲民主党など野党側も「各党の野党政権樹立への機運は乏しく、当分は足の引っ張り合いが続く」(立憲民主党幹部)と、思案投げ首のお寒い状況だ。

さらに、各種世論調査での高市内閣の超高支持率と比べると、自民党の支持率は数ポイントの増加にとどまっている。この点について、自民党幹部の多くは「政治とカネの問題も含め、自民党への国民的不満はまったく収まっていない」として、「押せ押せで解散などすれば、有権者から手痛いしっぺい返しを受ける」と肩をすくめる。

もちろん、今回の“怪情報”にみられるように「政局の一寸先は闇で、いつ何が起こるかは予測不能」(自民党幹部)なのは事実。ただ、多くの政界関係者の間で、今後の政局の展開について「仮に高市内閣の高支持率が続いていても、政権維持に執念も燃やす高市首相は、解散によるリスクを避け、自らの総裁任期となる27年9月の総裁再選による長期政権を狙う戦略」(側近)という“常識的”な見方が広がりつつある。