「迷惑民泊」に住民NO 大阪市が一転、設置申請終了の波紋 業者は懸命のイメージ回復策

インバウンドらで賑わう大阪・ミナミの繁華街。民泊が彼らの主要な宿泊先となっている=7月、大阪市中央区(山田耕一撮影)

インバウンド(訪日客)が激増する大阪で、彼らの宿泊先となってきた「民泊」が岐路に立たされている。利用客によるごみや騒音といった問題が噴出し、周辺住民からの苦情が殺到。これまで民泊を推進してきた大阪市は、個人宅などを貸し出す「特区民泊」について、一転して新規申請の受け付けを停止することを決めた。民泊事業者は悪いイメージを払拭しようと懸命だが、地域の理解は得られるのか。

大阪市内で10月に開かれた民泊についての勉強会(自治フォーラムおおさか提供)

夜中、自宅に見知らぬ外国人が…

「観光客は観光地や中心市街地で金を落とす。地域は犠牲になっているだけだ」。10月26日、大阪市東成区で開かれた住民らによる民泊問題の「緊急勉強会」で、参加者の男性が語気を強めた。

問題となっている特区民泊は国家戦略特区法に基づくもので、個人宅やマンションを宿泊施設として貸し出すことができる。東京都大田区や北九州市などが対象地域となっていて、その中でも大阪市には全国の9割超が集中している。

大阪市内(本社ヘリから)

大阪市内の民泊はインバウンドでにぎわう中央区や浪速区に集まるが、次第に交通の利便性が高い西成区などでも鉄道網に沿うように多く設置されるようになった。その結果、中心市街地から離れて静かだった住宅街は、民泊の利用客による騒音やごみの散乱に悩まされてきた。

「ソーリー(すみません)」では済まされないような問題も起こっている。民泊の勉強会に参加した男性が住む大阪市中央区は古い一軒家も多く、路地が入り組んでいて夜になると真っ暗だという。見知らぬ外国人が、夜中に民泊と間違えて無関係の民家に入ってくるケースもあるといい、男性は「いつまで我慢しなければならないのか」と憤る。

平日でも観光客でごった返す清水寺参道。オーバーツーリズムともいわれる「観光公害」は関西各地で深刻化している=令和5年11月、京都市東山区

一方で、勉強会に参加した大阪市生野区の男性は、自宅近隣に5カ所の民泊があり、中国人経営者もいるというが、「中国人だから話が通じないと思わず、コミュニケーションをとることが大切だ」と主張。「地域の行事で民泊を場所として提供してもらうなどすれば、住民の印象も変わるのでは」と理解を示す。

ホテル高騰で滞在先に

特区民泊は、インバウンドの増加による宿泊施設の逼迫(ひっぱく)を解消するためにできた制度だ。大阪市では、大阪・関西万博の開催を目指していた平成28年から始まった。

以降、新規参入が容易で採算性も高いことに加え、都市部で空き家が多いという大阪市特有の事情も手伝い、市内では施設数が加速度的に増加していった。

民泊がインバウンドの〝受け皿〟となっている状況は数字からも見て取れる。

観光庁などによると、27年に84・8%に上った大阪府内のホテルなどの客室稼働率は、令和6年は75・4%にまで抑制されている。同期間の来阪外国人旅行者数が、716万人からほぼ倍増となる1409万人になったにもかかわらずだ。

ホテルの宿泊料金が高止まりする中、宿泊先として民泊が選ばれているのは明らかであり、民泊事業者は「最近では民泊を選ぶ日本人観光客も増えてきている」と手応えを口にする。

トラブル続き「もう限界」

こうした状況がある一方、利用客が引き起こすトラブルが相次ぎ、民泊への逆風が強まっている。大阪市は少し前まで民泊の推進に熱心だったが、住民の我慢が限界に達していることを踏まえ、特区民泊について来年5月29日で新規受け付けを停止することを決めた。

このような動きを受けて、民泊事業者らで構成する「民泊旅館簡易宿所業組合」(同市西成区)は10月、大阪市議会と府議会で多数を占める「大阪維新の会」本部を訪問。「受け入れ停止で違法民泊が増える可能性もある。規制や制度の強化を優先すべきだ」と、民泊の必要性を訴えた。

同組合は業界のイメージ改善などを目的として今年1月に組織され、10月末時点で約1340人が参加する。

取り組みとして、組合に加盟する民泊に抜き打ちで問い合わせの電話を行うほか、民泊周辺エリアでの清掃活動なども行っている。

自身も民泊業に携わる榊原啓祐代表は「自宅の前を荒らされたり、治安の悪化を不安に思ったりしている人がいる。問題のある民泊については改善を促していきたい」と語る。

組合は今後、地域住民と地元の民泊との関係性や予約サイトでのレビュー評価などを基準に、優良な民泊であることを外部にアピールする「優良事業者認定制度」を設けたい考えだ。

榊原代表は「地域住民と民泊業者が(互いに)顔の見える関係を作ることが重要だ。民泊が地域にあってよかったと思ってもらえるようにしたい」と意気込んでいる。(入沢亮輔)