九州看護福祉大学が公立化打診、玉名市の判断に注目…理事長「今しかないタイミング」

公立化を巡って検討が続いている玉名市の九州看護福祉大

 熊本県玉名市の私立九州看護福祉大の公立化を巡って、市が検討を続けている。定員割れなどによる経営難などを背景に大学側が打診。実現すれば国の補助金が活用できるメリットがある一方、自治体に財政的負担がのしかかるデメリットも生じる。文部科学省の中央教育審議会が安易な公立化を避けるよう求める中、年内にも示される市の判断に注目が集まっている。

赤字続く

 「(公立化は)今しかないタイミング。手遅れになる前のぎりぎりの時期だ」。同大を運営する学校法人・熊本城北学園の田崎龍一理事長(71)は10月下旬、読売新聞の取材にこう語った。

 同大の2013年度の在学者数は過去最多の計1600人を超えたが、18年度の入学者数は308人で定員(330人)を大きく下回った。20年度に持ち直したものの、21~24年度は再び定員割れとなった。

取材に応じる田崎理事長

 生徒数の減少に伴って、近年の収支は赤字が続いているという。57億円の運用資産を保有する一方、約25年後には建物が耐用年数を迎え、建て替え費用は約121億円と試算される。

 大学内部では抜本的な改善を図るため、19年度から公立化した他大学の事例を参考に存続に向けて検討を重ね、昨年1月に市への要望に踏み切った。

 文科省によると、04年度に「公立大学法人制度」が始まり、これまでに12校が同制度を活用して公立化している。移行後、自治体は国からの地方交付税を運営費に充てられ、授業料を安く抑えれば入学希望者の増加が期待できる。

九州看護福祉大の入学者数の推移

 22年度から公立化した山口県周南市の周南公立大(旧・私立徳山大)は市在住の1年生の学費ついて、113万円から67万円に引き下げた。その結果、志願者数は前年度比で6倍超に急増した。担当者は「27年度には在校生が2000人になる予定で、地域の活性化につながっている。公立化を評価する声は多い」と手応えを口にする。

公立化を見送る例も

 一方で、施設の管理・運営費などの財政負担が生じることを念頭に、公立化を見送った自治体もある。

 兵庫県姫路市は、同市の姫路独協大の要望を受けて公立化を検討したが、市の審議会は「大学運営のノウハウを持っていない」「校舎の老朽化対策に伴う費用負担がある」などとして、私立大として存続していくことが望ましいと結論づけた。

 千葉県銚子市の千葉科学大では、市の検討委員会が学部学科の見直しや不要となる建物の除去などを公立化の条件として提示。運営する学校法人・加計学園(岡山市)は検討委の結論を踏まえ、今年3月に別の学校法人に事業を譲渡することを決め、私立大として存続する見通しとなった。

 文科省の中教審は2月にまとめた「大学の在り方」答申で、地域社会に必要な大学を維持する意義を強調した。ただ、規模の適正化を求め、教育の質が保てない場合は「高等教育への信頼確保の観点から撤退を進める必要がある」と指摘した。

 玉名市では、今年1月に市が設置した有識者による検討委員会で、大学の現状の課題分析や公立化後の経営シミュレーションなどを実施。その上で、9月には「年14億円の市内経済波及効果の維持が期待される」とする報告書を出した。

 蔵原隆浩市長は「(県北地域で)唯一の4年制大学を恒久的に存続させていきたい」としており、前向きに検討する姿勢を示している。

  ◆九州看護福祉大 =1998年4月、旧2市10町の拠出金や企業からの寄付により、「公設民営」の私立大学として開学した。現在は、玉名市を始めとする県北地域にある唯一の4年制大学で、看護福祉学部の中に看護、社会福祉、リハビリテーション、 鍼灸(しんきゅう) スポーツ、 口腔(こうくう) 保健の5学科がある。

地域活気づける大学の魅力化を

 九州看護福祉大の内部協議では、研究の充実など200項目以上の「生き残り策」が挙げられたが、抜本的な解決策が見いだせなかったという。

 鹿児島国際大が看護学部を新設するなどの動きからは、看護系に対する学生の根強いニーズがうかがえる。運営を継続させていくには大学側の努力も求められるのだろう。

 地方における大学の存在は、地域を活気づける大きな役割も持っている。地域の事情や特色を捉えながら、大学の魅力化につなげてほしい。(小波津晴香)