高市"台湾発言"が加速させる「早期解散」論の蠢動

「解散と公定歩合はウソを言ってもいい」, 中国との対立激化が逆に支持率を高めた?, 予算成立直後の4月解散が“本命”だが…, 高市首相「最初で最大の正念場」はいつか

中国との対立激化の裏側で、永田町ではひそかに「早期解散」のシナリオが描かれ始めている。具体的なXデーはいつか(写真:ブルームバーグ)

高市早苗首相のいわゆる「台湾有事」発言によって、日中両国の対立が“大騒動”となっている。そうした状況下でひそかに与党内で台頭しているのが「早期衆院解散」論だ。

【画像あり】永田町で噂されている「早期解散&総選挙」4パターンのスケジュール

首相周辺も含めた与党の最高幹部からは「できるだけ早く解散して、政権基盤を安定化させるべきだ」との声が漏れてくる。次期衆議院選挙に出馬予定の現職・元職議員や新人候補たちは「まさかとは思うが、準備するしかない」(自民党の若手現職)と浮足立っている。

「解散と公定歩合はウソを言ってもいい」

早期解散論が台頭する最大の理由は、高市内閣の「異様な高支持率」だ。歴代自民党内閣を振り返れば「ほとんどが就任時の支持率が最高で、その後はじり貧」(世論調査アナリスト)だったのに、高市内閣は「政権発足1カ月半で、さらに支持率が上昇するという異例の事態」(同)となっている。

もちろん、「憲政史上初の女性首相への国民的期待の大きさ」(自民党長老)は否定しようがないが、「政権発足後の内政・外交での“迷走”をものともしない高市人気の高まりは、まさに想定外」(同)。だからこそ、「いま解散しないでいつやるのか」(自民党の実力者)という威勢のいい声が相次ぐのだ。

一方で、各種世論調査の数字を詳しく分析すると、自民党の支持率上昇はごくわずか。しかも、最近の複数の地方選挙で自民党の不振も目立っており、「高市人気と自民党支持はまったく連動していない」(同)ことは間違いない。高市首相自身も「焦眉の急は物価高対策、解散している暇などない」と繰り返す。

ただ、「解散と公定歩合はウソを言ってもいいというのが政界のおきてだけに、年末以降は何があってもおかしくない」(自民党長老)という見方は、なお根強い。

高市内閣発足後の各種世論調査の結果を見ると、内閣発足から3週間が過ぎた11月15~16日に実施された2回目調査で内閣支持率がおおむね上昇している。

具体例としては、10月の政権発足直後の調査で58.7%と最も低かったANN(オールニッポン・ニュースネットワーク)が、2回目の調査では67.5%と、前回比8.8ポイント増。また、1回目調査で64.4%だった共同通信も、2回目は69.9%で同5.5ポイント増と、いずれもかなり上昇している。

この結果について、世論調査アナリストの多くは「いわゆる“ご祝儀相場”の1回目より、政権が動き出した後の2回目に支持率がアップするのは、ほとんど例がない」と首を傾げる。

中国との対立激化が逆に支持率を高めた?

そこで2回目の調査までの約3週間の高市首相の動きを振り返ると、まず10月27日に来日したアメリカのドナルド・トランプ大統領との首脳会談などで、いわゆる「ドナルド・サナエ劇場」とも揶揄されたはしゃぎぶりも含めて、緊密な関係を構築したことに対する高い評価が特筆される。

「解散と公定歩合はウソを言ってもいい」, 中国との対立激化が逆に支持率を高めた?, 予算成立直後の4月解散が“本命”だが…, 高市首相「最初で最大の正念場」はいつか

日米首脳会談ではトランプ大統領(左)と高市首相の親密ぶりがアピールされた(写真:ブルームバーグ)

一方で、11月7日からスタートした臨時国会の審議でいきなり飛び出した、台湾有事をめぐる「存立危機事態」に対する踏み込んだ見解の表明には、中国の習近平国家主席が激怒したとされる。「戦略的互恵関係」をキーワードに平穏裏に進んでいるかに見えた日中関係が、一気に全面対立と化した。

高市首相自身も、この発言について「野党の執拗な追及に『つい踏み込んだ答弁をしてしまった』と反省していた」(側近)とされる。だが、中国側が「完全に習主席のメンツを潰した」と激怒したことは間違いない。11月19日には日本政府に日本産水産物の輸入再開手続きの見合わせを通告するなど、対抗措置を次々と繰り出す構えだ。

ただ、こうした高市首相の不用意な発言による日中の対立激化についても、いわゆる「高市シンパ」の多くは、SNSなどで「高市さん頑張れ」「中国人を日本から追い出せ」などと熱烈なエールを送り、そのこと自体が支持率アップにもつながるという不可思議な状況となっている。

最近の内閣と自民党の支持率の推移を振り返ると、第2次安倍内閣から石破内閣までは、内閣支持率が上がれば自民党の政党支持率も上がり、内閣支持率が低ければ自民支持率も低下していた。

しかし、高市内閣だけは内閣支持率と自民党の政党支持率が連動せず、直近の5つの内閣で最高の内閣支持率なのに、自民党支持率では最低となっている。「まさに高市内閣だけの特異現象」(アナリスト)とも映る。

そうした中、与党幹部の間でひそかに浮上してきたのが、冒頭で触れた「早期解散断行」論だ。すでに「解散断行をめぐる、さまざまなケーススタディー」(日本維新の会幹部)が進み始めているとされる。

予算成立直後の4月解散が“本命”だが…

これまでに浮上している解散日程などを列挙すると、①年末解散→1月6日公示・18日投開票、②1月13日解散→27日公示・2月8日投開票、③3月末か4月初旬の来年度予算成立直後の解散→4月14日公示・26日投開票、④6月中旬の次期通常国会会期末解散→6月23日公示・7月5日投開票、という4パターンとなる。

「解散と公定歩合はウソを言ってもいい」, 中国との対立激化が逆に支持率を高めた?, 予算成立直後の4月解散が“本命”だが…, 高市首相「最初で最大の正念場」はいつか

解散・総選挙日程

この中で本命視されているのは③のケースだ。「さまざまな手練手管で保守色の強い国民民主党や参政党などを取り込んで、来年度予算をほぼ原案どおりで成立させ、経済運営が安定化した時点で、『自維連立』の可否も含めて国民に信を問う」(官邸筋)という筋書きだ。

確かに、①や②のケースでは「過去の例を見ても、予算成立が大幅に遅れて5月の大型連休前後となることは避けられず、国民生活を向上させるための経済回復最優先という高市首相の方針に反する」(側近)ことにもなる。

その一方で、自民党内では「首相発言に端を発した日中対立が長引く中、アメリカ経済の失速でトランプ大統領が窮地に陥れば、高市人気は急降下する」(経済関係閣僚)という厳しい指摘も少なくない。そのため、「一発大勝負なら年明け衆院選しかない」(自民党の若手議員)との声がじわじわと広がりつつあるのだ。

また、実質的な「会期末解散」となる④のケースについては、「高市首相がどんなにうまく政権を運営しても、現在のような高支持率の維持は困難で、自民党の圧勝などありえず、退陣論も含めて政権自体が窮地に追い込まれる」(自民党長老)といった厳しい見方が多数派だ。

そもそも、高市首相も「余計なことをしないで2027年9月までの総裁任期をまっとうし、総裁再選で長期政権を狙うのが基本戦略」(側近)とされる。それだけに、「ほぼありえないケース」(政治ジャーナリスト)とみる向きが多い。

「解散と公定歩合はウソを言ってもいい」, 中国との対立激化が逆に支持率を高めた?, 予算成立直後の4月解散が“本命”だが…, 高市首相「最初で最大の正念場」はいつか

麻生副総裁は今後も高市政権を支え、政権基盤の安定化に努める考えを力説(写真:ブルームバーグ)

そうした状況下、自民党の「最高権力者」を自認する麻生太郎副総裁は19日の講演で、維新との連立政権について「今、連立政権を取り巻く環境は決して楽観できない」と指摘。そのうえで「こういった内閣を生んだ以上は育てねばいかんという決意を新たにしている」と述べ、今後も高市政権を支え、政権基盤の安定化に努める考えを力説した。

高市首相「最初で最大の正念場」はいつか

政府は21日にも、20兆円超の規模となる総合経済対策を取りまとめる。これを受けて、高市首相は同日、南アフリカに向けて出発する。

同国で22〜23日に開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するのが目的で、帰国は24日。さらに26日には、政権発足後初の党首討論が開催される。当然、党首討論では、大騒動となっている「日中対立」や、超大型補正予算案も含めた総合経済対策について、野党側が高市首相を厳しく追及することは確実だ。

高市首相の答弁次第では、12月上旬に国会に提出される予定の補正予算が12月17日の会期末までに成立しない事態も想定される。26日から会期末までの約3週間が「高市首相の最初で最大の正念場となる」(自民党長老)ことは間違いなさそうだ。