豊かな秋の実りを感じる「生絞りモンブラン」 栗や芋で作る1ミリ未満の極細ペースト

サツマイモの香りをまとったスモークに包まれて、「生搾り芋モンブラン」が姿を現した=東京都中央区の「銀座 芋山」(梶山裕生撮影)
深まる秋。栗やサツマイモのペーストがこんもり盛られたモンブランが恋しくなる季節だ。最近よく見かけるのは、注文してからペーストを絞って提供する「生絞り」の店。しかも太さ1ミリ未満の極細がトレンドだ。豊かな秋の実りを感じさせるモンブランを、舌で目で堪能したい。
「新栗」の旗が秋風に揺らぐ。東京都文京区。人通りがまばらな幹線沿いに、モンブラン専門店「栗ノ絲(くりのいと)TOKYO」はあった。フードは「笠間和栗しぼりたてモンブラン」1品という潔さながら「極細モンブラン」の先駆けとされる、客足が絶えない人気店だ。
0.5ミリの細さに絞る
「産出額と栽培面積で全国一を誇る茨城県笠間市産の栗を、渋皮が残らないよう丁寧に裏ごしして、0.5ミリの細さに絞っています」とは、スタッフの宮城優奈さん(29)。笠間の栗は水分量が多くて粘り気が強く、あくが少なくて風味がいいのだという。
宮城さんが、力を込めて絞り機のレバーを下げると、糸のような細さの栗ペーストが絞り出される。その数155本。鮮やかな黄色に輝く〝栗の山〟が皿の上に描かれた。「ふんわりと空気を含ませるように、山に高さが出るようにするのがコツです」
確かに、食感はふんわりとして滑らかで、栗本来の甘さや風味、滋味がしっかりと感じられる。「実は私、甘いものはあまり得意じゃなくて。でもこのモンブランは栗本来の程よい甘さで、飽きずに食べきれます」と宮城さんはちゃめっ気たっぷりにほほえんだ。

0.5ミリという糸のような細さの栗ペーストを絞り出す=東京都文京区のモンブラン専門店「栗ノ絲」(田中万紀撮影)
栗と並び、秋の味覚の定番といえばサツマイモだ。「生搾り芋(いも)モンブラン」が味わえるのは、サツマイモスイーツ専門店「銀座 芋山」(東京都中央区)。店内飲食では芋けんぴ、大学芋、焼き芋などを抑えて断トツの一番人気だという。
「サツマイモは食物繊維豊富で栄養価に優れ、比較的低カロリー。健康を気にする人も選びやすい」と、中堀亜衣子店長(30)。
ねっとりと甘みが強いサツマイモ「旭甘(かん)十郎 紅はるか」と、ほくほくした食感の「五郎島金時」をブレンドした、こだわりの芋ペースト。それを目の前で0.8ミリの細さに絞る演出に加え、客の心をくすぐる仕掛けがある。スモークで満たしたガラスのカバーを被せ、中が見えない状態で提供するのだ。外した途端に甘く香ばしいサツマイモの香りが鼻をくすぐる。やがてスモークの向こうから、黄金色の芋の山が現れる。「玉手箱のように何が出てくるのだろうとわくわくしてもらいたい。開けた瞬間の香りを楽しみ、五感でサツマイモの魅力を感じていただければ」(中堀さん)

「笠間和栗しぼりたてモンブラン」のグランデサイズには、およそ12個分の栗が使われている=東京都文京区の「栗ノ絲」(田中万紀撮影)
「ぜいたくなイメージ」
モンブランとはフランス語で「白い山」。産経新聞で「スイーツの世界」を連載する、フランス菓子研究家・大森由紀子さんによると、イタリア語で同じ意味を持つ「モンテ・ビアンコ」という栗ペーストの上に白いクリームを盛ったお菓子が、伊ピエモンテ州周辺の家庭で作られており、モンブランの原型ではないかという。
今の形に近いモンブランを世に広めたのは、仏パリに20世紀初頭に開店したティーサロン「アンジェリーナ」。日本では、昭和8年創業の老舗洋菓子店「東京自由が丘モンブラン」が発祥とされている。
「日本人はサツマイモや栗が大好き。特に栗にはぜいたくなイメージがあるのではないでしょうか」と大森さん。なじみ深い秋の味覚が洗練されたケーキに。それがモンブランが日本で広く受け入れられた理由なのだろう。(田中万紀)