「レストラン」からは箸が消え…ピクトグラム、1970年万博から2025年万博への変遷

「レストラン」からは箸が消え…ピクトグラム、1970年万博から2025年万博への変遷
国内外から多数の来場者が詰めかける2025年大阪・関西万博。会場で〝共通語〟の役割を果たしているのが「ピクトグラム」(絵文字・案内用図記号)だ。実は日本でデザインが統一されたピクトグラムが使われたのは、前回の1970年大阪万博が最初。前回と現代のピクトグラムを比べると、55年間の社会の変化が浮かんでくる。

大阪・関西万博で使用されている「パーソナルモビリティ」のピクトグラム=25日午後、大阪市此花区の夢洲(川村寧撮影)
日本でピクトグラムが広まったきっかけは、昭和39年の東京オリンピックだった。アート・ディレクターの勝見勝氏を中心としたチームが「競技種目」20種類に加え、トイレや公衆電話など「公共施設」39種類の絵文字を作成。わかりやすさから国際的にも大きな反響を呼んだ。
しかし、複数のデザイナーが関わったことからデザインがばらばらだった。このため、70年万博では、グラフィックデザイナーの福田繁雄氏が考案した統一デザインのピクトグラム35種類が採用された。
現在、日本の公共交通機関や公共施設、観光施設では、主に日本産業規格(JIS)で定めたデザインを使用。今回の万博でも、JIS規格に準拠したピクトグラムを中心に、新たに作成したオリジナルのピクトグラムも加えて、公式地図や会場内外の施設、表示板などに掲示している。

大阪・関西万博で使用されている「パーソナルモビリティ」のピクトグラム=大阪市此花区の夢洲(川村寧撮影)
前回と現在のピクトグラムを比べると、追加されたり、なくなったりした要素に時の流れがにじむ。例えば現在の「レストラン」はナイフとフォークを並べたデザインだが、前回はその間に、日本の食文化と切り離せない箸が配置されていた。
「郵便」も、現在は封筒だけのデザインだが、前回は、日本人になじみの深い〒マークが封筒にあしらわれていた。
逆に「両替所」は、前回は¥(円)のマークだけだったが、現在の「外貨両替機」は$(ドル)に加えて、€(ユーロ)のマークを追加している。
大きく変わったピクトグラムもある。前回の「医療救急所」は、赤い十字と指に包帯を巻いた手のデザインだった。当時は「赤十字になじみのない国の人にも理解できるように」という配慮があったという。
現在の「医療救護施設」は白の十字とシンプルに変わった。東京五輪に備えて国内外のアンケートを行った結果、8年前にそれまでのJIS規格から、国際規格のデザインに変更されたためだ。
対象の変遷が時代を感じさせるピクトグラムもある。前回の「国際電報電話」は姿を消し、現在は「Wi―Fi貸出・SIM販売」が登場している。
会場には今回の万博ならではのピクトグラムも多い。〝並ばない万博〟のための「当日登録端末」や、1人乗り電動カート「パーソナルモビリティ」、循環電気バス「e Mover」などは社会を支える技術の進歩を物語っている。
また、さまざまな宗教や文化の人々が、祈りや瞑想(めいそう)など自由に利用できる「祈禱室」や、光や音などの刺激でパニックを起こしやすい来場者が気持ちを落ち着かせるスペース「カームダウン/クールダウンルーム」などは多様な来場者への配慮の表れだ。
これからどんなピクトグラムが登場するのか。「いのち輝く未来社会」を体験しながら想像するのも、万博の楽しみ方のひとつかもしれない。(堀川晶伸)