紅白で明暗分かれた乃木坂と櫻坂、AKB大復活とカワラボ勢躍進 Spotifyから分析

乃木坂は新人Wセンターで人気維持, 今の櫻坂に紅白はあまり関係ない, AKB「伝説の武道館公演」の破壊力, カワラボ勢、楽曲ランキング常連に, 失われた10年を取り戻しつつある

紅白で明暗分かれた乃木坂と櫻坂、AKB大復活とカワラボ勢躍進 Spotifyから分析

大みそかに放送される「第76回NHK紅白歌合戦」への出場をめぐり、今年も女性アイドルグループの明暗が分かれた。乃木坂46が11年連続で出場を決めたほか、FRUITS ZIPPERとCANDY TUNEが初出場、AKB48は6年ぶりの紅白返り咲きを果たした。一方、3年連続出場を目指した櫻坂46やCUTIE STREETは選考から漏れ、姉妹グループの間で大きな差が開いた。音楽配信サービス世界最大手「Spotify(スポティファイ)」の日本国内のデータを分析すると、乃木坂46の根強い人気、AKB48のランキング急上昇、FRUITS ZIPPERらの躍進など、紅白出場選考の背景が浮かび上がった。

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MUSIC AWARDS JAPAN 2025に登場した乃木坂46のメンバーたち。左から遠藤さくらさん、中西アルノさん、井上和さん、菅原咲月さん、梅澤美波さん=5月22日、ロームシアター京都(渡辺大樹撮影)

NHKは、紅白歌合戦に出場する歌手の選考基準を「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」としている。Spotifyなどインターネットでのストリーミング再生回数も、CD売上やカラオケのリクエスト数、ライブの実績などとともに重要な指標の一つだ。NHKの歌番組でも、アーティストや楽曲を紹介する際に「ストリーミング再生1億回突破」といったフレーズが定着している。

乃木坂は新人Wセンターで人気維持

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新成人お披露目に登場した乃木坂46の井上和さん=1月9日、乃木神社(大橋純人撮影)

紅白の連続出場が11回となる乃木坂46は、公式ライバルのAKB48が持つ連続記録と同じ回数に到達。現在のアイドル文化を創った大先輩に肩を並べた。

今年は、NHKの連続テレビ小説「あんぱん」に出演した久保史緒里さん、与田祐希さんという3期生のセンター経験者が卒業する中、井上和(なぎ)さんら5期生、さらには4月にお披露目された6期生のWセンター、瀬戸口心月(みつき)さん、矢田萌華さんらへの世代交代が進んだ。Spotifyが公表している再生回数の国内アーティスト別ランキング(上位200位)では、常に中位以上を維持し、変わらぬ人気を示した。

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始球式で惜しくもワンバウンド投球となった山﨑天さん=7月11日、ZOZOマリンスタジアム(田村亮介撮影)

1年を通じて最も順位が高かったのは、6期生の2人がセンターを務めた新曲「ビリヤニ」が11月26日にリリースされた直後の47位だった。同月26、27日に開催された久保さんの卒業コンサートへの関心や、フレッシュな瀬戸口さんと矢田さんへの注目度の高さもランキング上昇を後押しした。

また乃木坂46の楽曲の順位は、ライブの前後に予習復習としてプレイリストを聴き込むファンによって上昇するのが特徴だ。5月17、18日の13回目のバースデーライブ、9月4〜7日に明治神宮野球場で行われた真夏の全国ツアーの最終公演などのタイミングで顕著な上昇を見せた。

企画・演出面では、3月26日発売の「ネーブルオレンジ」でWセンターの一人を務める井上さんが、来年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で“浅井三姉妹”の茶々として出演するなど、多方面での活躍が紅白出場に結びついたとみられる。

乃木坂46の今年の紅白での歌唱曲は、賀喜遥香さんがセンターを務めた「Same numbers」に決まった。その年にヒットした曲を紅白で披露するのは2年ぶりとなる。

今の櫻坂に紅白はあまり関係ない

一方、櫻坂46は3年連続の出場を逃し、坂道シリーズで明暗が分かれた。Spotifyの再生回数ランキングでは乃木坂46を6度上回る活躍を見せ、アルバム「Addiction」が発売された4月30日には最高位の56位に入ったが、紅白出場はならなかった。

櫻坂46は7月24〜26日に東京ドームで3DAYS、8月23、24日に京セラドーム大阪で2DAYSという2つのドームライブを成功させるなど、トップアイドルと呼ぶにふさわしい活躍を見せた。「Nightmare症候群」「港区パセリ」など、表題曲以外のライブパフォーマンスも圧巻だった。来年には、4月11、12日に国内最大規模のMUFGスタジアム(国立競技場)でのライブが決定しており、紅白返り咲きに期待がかかる。

「推し活」に関する研究がありアイドルに詳しい千葉大教育学部長の藤川大祐教授(教育方法学)は、紅白出場を逃した櫻坂46について、「去年の楽曲『何歳の頃に戻りたいのか?』や『自業自得』に比べると、今年の前半は楽曲のパワーが弱かった」と指摘。「ただ、ライブで曲を育てていくことに成功している。今年は東京ドーム、来年は国立競技場、これは乃木坂46以上の規模感だ。3年前の落選はショックだったが、今の櫻坂46に紅白はあまり関係ない気もする」と評した。

卒業ラッシュが続いた日向坂46は、シングル「卒業写真だけが知ってる」「Love yourself!」の発売時期などに200位内に入ったが、6月以降はランクインできず、3年ぶりの出場はならなかった。

4月5、6日の横浜スタジアムでの6周年ライブ「ひな誕祭」では、W佐々木ことセンター経験者の佐々木美玲さん、キャプテンも務めた佐々木久美さんが卒業。最終日には、前身の「けやき坂46」で活躍した長濱ねるさんらOGの登場や、柿崎芽実さんからの手紙などで盛り上がり、一時ランクインも果たした。来年1月28日発売のシングル「クリフハンガー」では、5期生の大野愛実(まなみ)さんが新センターを務める“新生日向坂”で巻き返しを図る。

藤川教授は「日向坂46はいま面白い。バイラルチャートには、5期生曲『ジャーマンアイリス』などがバズって入っている」と評価。「2、3年前の櫻坂46と雰囲気が似ている。どん底まで落ちて、あとは上がるだけ。次は大野さんがセンターになって、かなり状況が変わる勢いを感じている」と分析した。

AKB「伝説の武道館公演」の破壊力

AKB48は12月3日、紅白へ6年ぶりに出場することが追加発表された。直後の4〜7日には日本武道館で20周年記念コンサートを開催。前田敦子さんや大島優子さんら、歴代センターや卒業した人気メンバーが集結して大きな話題となった。

これを受けて11日にはSpotifyランキングで圏外から57位まで急上昇した。20周年記念コンサート以前にも、公演の詳細が発表された6月頃からランキングに再登場し、7月20日には131位に入った。伝説的な武道館公演最終日を終えると、ランキングで乃木坂46やFRUITS ZIPPERを抜き去るなど、紅白出場を納得させる躍進を見せた。

Spotifyの月間リスナー数(過去28日間で集計)も武道館公演を機に伸長12月23日時点では、飛ぶ鳥を落とす勢いのFRUITS ZIPPERをも上回る95万人となった。紅白でさらに注目が集まれば、インドネシアで絶大な人気を誇る姉妹グループ、JKT48の158万人も見えてくる。

AKB48に造詣が深い防衛省の高橋杉雄戦略企画参事官は、「スパイクと言うべき(ランキングの)垂直上昇が、とても印象的だ。あの武道館コンサートの週末の前後で、全く違う世界、違うベクトルが現れた。空間が変わった。それほどの破壊力があった」と指摘する。

「OGが出演すると言っても、これまでのように1曲だけ出たり、姿だけ見せたり、それぐらいだと思っていた。ちゃんと身体を作って、あれだけのライブパフォーマンスを見せた。体を張って自分たちの背中を見せた衝撃が大きかった。『マジ』を見た」

高橋氏は、「先週末、久しぶりにAKB48劇場に行ったが、ダンスがレベルアップしていて、うまい子が目立たないくらい、完全に底上げがされている。ダンスパフォーマンスで言うと、今の国内アイドルグループの中で頭一つ抜けている」と話す。今のAKB48は、K-POPグループ「SAY MY NAME」で活躍するOGの本田仁美さんの影響もあり、ダンスの技術が向上しているという。

紅白では20周年スーパーヒットメドレーとして、「フライングゲット」「ヘビーローテーション」「恋するフォーチュンクッキー」「会いたかった」を披露すると発表されている。高橋氏は、「OGの参加は今年いっぱい。年末にファンだけでなく多くの人が見る紅白では、最後にもう一度サプライズとして、OGと一緒に、K-POPのように激しいダンスを踊る『根も葉もRumor』を見せてほしい。AKB48はここからだ」と期待を込める。

カワラボ勢、楽曲ランキング常連に

今年、初出場を決めたFRUITS ZIPPERとCANDY TUNEは、TikTokをはじめとするショート動画を中心に人気を広げ、Spotifyのランキングでも躍進した。惜しくも紅白出場を逃したCUTIE STREETと合わせ、「KAWAII LAB. 」(通称・カワラボ)所属のグループが、女王・乃木坂46をランキングで上回るようになり、女性アイドルの勢力図が変わりつつある。

カワラボの女性アイドルは、大所帯の坂道AKBとは異なり、8人前後と少数精鋭だ。「かわいい」を前面に押し出して若者の心をつかみ、TikTokなどでバズったこともあって一気にブレイクした。

かつてHKT48で活動した月足天音さん(FRUITS ZIPPER)、村川緋杏(びびあん)さん(CANDY TUNE)をはじめ、一部メンバーは別のグループでも活躍し、「転生アイドル」と呼ばれている。

高橋氏は、カワラボでのHKT48出身者の活躍について、「宮脇咲良さん(現LE SSERAFIM)のケースは、メジャーリーグに行ったようなものだが、一方で、あるチームで合わなかった選手が別のチームで輝くことはサッカー界でもよくある。アイドルでも、新しい場所で咲き誇るのは良いことだ。TikTokといった今のインフラも、広がりを作る要因になっているのではないか」と話した。

TikTokでのヒットも音楽チャートのランキング上昇の追い風に。FRUITS ZIPPERが紅白で披露する「わたしの一番かわいいところ」は9月11日まで390日連続で楽曲ランキング200位以内に入るなど、一年を通じて「かがみ」など5曲がランクインし、広く聴かれた。

対する坂道シリーズは、国内アーティストのランキングでは上位を確保しているものの、楽曲ランキングでは今年、乃木坂46のネーブルオレンジ、櫻坂46の「UDAGAWA GENERATION」「Unhappy birthday構文」の3曲が、各1日だけランクインするにとどまった。

CANDY TUNEは、ヒット曲「倍倍FIGHT!」が最高56位、10月13日まで145日連続ランクインを果たした。リリースは2024年4月だが、今年1月頃からショート動画で人気に火が付き、Spotifyのランキングには3月4日初登場。ショート動画に注力するカワラボならではの現象と言えそうだ。かわいいを想起させる言葉が出てこないストレートな応援ソングのヒットも、アーティストとしての幅の広さを示している。

他方、カワラボ内で惜しくも紅白出場に届かなかったCUTIE STREETも、配信での活躍は抜群だ。シングル「かわいいだけじゃだめですか?」は最高16位を6回獲得し、11月12日まで408日連続で200位以内に入った。楽曲ランキングでは往時の乃木坂46、欅坂46クラスの聴かれ方を彷彿させ、来年の紅白出場に期待がかかる。

失われた10年を取り戻しつつある

ランキングの期間を統計開始時の2021年10月21日まで広げると、アイドル人気のトレンドが見えてくる。乃木坂46は2022年、日産スタジアムで14万人を動員した10周年ライブの翌日、5月16日に16位に入り、黄金期を築いた。変動が激しい音楽チャートにおいて、1、2期生の卒業後もおおむね100位以内を維持している。

2024年頃からは、ショート動画での人気を追い風にカワラボの3グループが躍進している。AKB48は、ランキング圏外に入る時期が続いたが、今年の年末に上位に食い込み、再ブレイクの兆しがある。

藤川教授は、20周年のAKB48について、「初期もすごかったが、2015年前後の盛り上がっていた頃を今回、武道館でかなり再現した。また、あの頃いたメンバーは各所で活躍している。失われた10年を取り戻しつつある」と話す。

今年の紅白は、韓国勢に押された近年の状況から打って変わって、日本勢が存在感を増している。国内の女性アイドルシーンは、少しずつ変化しながら新しい展開を見せ始めた。(西山諒)

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