東京まで600キロに迫った中国とロシアの爆撃機、その巨体は防空ミサイルの格好の餌食なのになぜ?

米空軍の「B1-B」爆撃機(12月3日撮影、米空軍のサイトより)
奇妙な爆撃機の行動
ウクライナ戦争では、ロシアの爆撃機はウクライナの防空ミサイル射程には絶対に入らない。その射程外から巡航ミサイルを発射した後は、無人機の攻撃を受けないシベリアや極東地域に逃げている。
なぜなら、簡単に撃墜されるからだ。これがミサイルが飛び交う実際の戦争で起きていることだ。
一方で、憲法で戦争を放棄している日本に対しては、平時、爆撃機に防空ミサイルを撃ち込まないと分かっているので、中国とロシアの爆撃機は共同で日本に接近する飛行を行った。
図1 中ロ爆撃機の日本への接近飛行航跡

出典:統合幕僚監部発表(2025年12月9日)を筆者が図化した
防空態勢が整っている日本は、戦争状態になれば接近する爆撃機・戦闘機をいつでも容易に撃墜できるので、むやみに脅威に感じる必要はない。
しかし、中国とロシアの行為は不愉快であることは事実で、それを狙った「いやがらせ」そのものである。
日本周辺での中ロ爆撃機の行動
防衛省統合幕僚監部の発表によると、12月9日、日本海から東シナ海に進出したロシアの「Tu-95」爆撃機×2機が、東シナ海において中国の「H-6」(ロシア名「Tu-16」)爆撃機×2機と合流した後、東シナ海から四国沖の太平洋にかけて、長距離にわたる共同訓練飛行を実施した。
これらには、中国の「J-16」(ロシア名「Su-30」)戦闘機×4機が宮古海峡を通過するまで援護飛行を行った。
また、日本海では、ロシアの「A-50」早期警戒管制機×1機「Su-30」戦闘機×2機が飛行した。
具体的には、図1に示すとおりである。
ロシアのTu-95爆撃機は、全長約46メートル、翼幅約50メートルの大型機で、巡航速度は時速約710キロ。
同機が搭載する巡航ミサイル(直径50~70センチ、全長6~7メートル、射程3500~5000キロ)の速度は、Tu-95爆撃機の速度とほぼ同じ。
中国のH-6は、ロシアでは旧式のため廃棄されており現在は使用されていない。
全長約35メートル、翼幅約33メートルの大型機で、巡航速度が約770キロ。同機が搭載する巡航ミサイル(直径50~70センチ、全長約8メートル、射程1500~2500キロ)の速度も同機とほぼ同じ。
この巡航ミサイルは、Tu-95搭載のミサイルとほぼ同じレベルのようだ。
ロシアのA-50は全長約50メートル、翼幅約50メートルの大型機で、巡航速度は、前述の爆撃機とほぼ同じである。
ウクライナ国境から遠ざかる爆撃機
ロシアのTu-95は、ウクライナ戦争では巡航ミサイルをウクライナに撃ち込み、A-50はウクライナ上空の情報を収集している。
だが、これらは自由に飛行できずに、防空圏外で飛行し、1500~2000キロ離れた地点から巡航ミサイルを射撃している。
爆撃機よりはるかに小さい巡航ミサイルでさえ米欧の防空ミサイルで撃墜されているので、これら大型爆撃機は、パトリオット防空ミサイルの射程圏内に入れば、容易に撃墜されてしまう。
A-50は、2014年1月にアゾフ海付近の上空を飛行中のところを撃墜された。その理由は、ウクライナが密かに前方に展開していたウクライナのパトリオットミサイルの射程内に入ったからだ。
図2 ロ爆撃機、防空網から離れた地点でミサイル発射(イメージ)

出典:各種情報に基づき筆者が作成
2025年6月、ウクライナ無人機が爆撃機の基地を攻撃してからは、シベリアや極東方面にまで避難した。
パイロットにとっては、防空範囲に入ることは恐怖そのものであろう。
爆撃機が東京を攻撃する見せかけ戦略
今回の飛行航跡を見てみよう。
中国とロシアの爆撃機が宮古海峡を通過した後の飛行方向と折り返し地点を見ると、東京の手前約600キロで、東京に向けてミサイルを発射し、その後、中国に引き返す想定であるように見える。
米国領のグアムに対しても同様のことを過去何度も実施してきた。
図3 中露爆撃機の飛行航跡と東京への模擬攻撃(イメージ)

出典:統合幕僚監部の航跡図に筆者が攻撃のイメージを加えた(図は、以下同じ)
Tu-95等が保有する巡航ミサイルは、射程が2500キロ以上ある。ウクライナ戦争での爆撃機のミサイル攻撃を見ると、攻撃地点は目標から約1500~2000キロ離れた位置からである。
これを参考にすれば、東シナ海から東京に向けて発射すればいい。わざわざ東京まで600キロの地点まで近づく必要はない。
では、なぜ、東京まで600キロの地点まで近づいたのか。
おそらく、日本の統合幕僚監部が航跡を書いて公表すると見込み、「東京を狙って攻撃する想定」を日本のメディアや国民に伝え、衝撃を与えようとしたのだろう。
実際、日本のメディアは、中国とロシアのこの行為を「威嚇か」「威圧的」などのタイトルを付けて報じていた。
その意味では目的を達成した行動だったといえる。しかし、日本人の中国とロシア嫌いを増やし、日本の防衛費増加を認めるよう世論を誘導する副作用もあるはずだ。
防衛の専門家から見れば、あまり賢い選択だとは思えない。
爆撃機が防空ミサイル射程内を飛行できるか
中国とロシアの爆撃機は、万が一戦争事態になれば、今回のような航跡で日本の南西諸島の上空を飛行できない。
航空自衛隊や陸上自衛隊の防空部隊が、南西諸島や九州北部に配備されているからだ。防空兵器は移動が可能なので、現在配備されていない地域にも展開ができる。
下図4の赤○が防空範囲と考えられる。
戦争状態であれば、これらの防空ミサイルは航空目標に向けて発射される。爆撃機は大きくて速度も速くないので、撃墜されやすい。今回の航跡で飛行すれば、少なくとも4回射撃され、4回撃墜されたことになる。
能登半島沖に進出したA-50も日本の防空範囲であることから、撃墜されたはずである。
図4 爆撃機の航跡(12月9日)と自衛隊防空兵器の防空網(イメージ)

また、日本海や西太平洋上には、遊弋している海上自衛隊のミサイル護衛艦が存在する。爆撃機等は、これらからの射撃も受けることになる。
図5 地対空ミサイルから攻撃を受ける爆撃機(イメージ)

「脅威」ではなく「いやがらせ」
中国やロシアの爆撃機等のパイロットは、日本の領土内、特に南西諸島には防空兵器が配備されていて、捜索レーダーにも映っていることは知っているはずだ。
戦時であれば、これらから撃墜される危険性が高いが、平時ではミサイルは飛んでこない。
戦争を放棄している日本、平和を標榜している日本が、中国とロシアよりも先に、ミサイルを発射することは「ない」と確信している。
だから、特にロシアのパイロットは、ウクライナ戦争では防空兵器を恐れて近づけないのに、日本の近くでは防空兵器があってもその上空を悠々と飛行しているのだ。
すなわち、爆撃機の大きな機体を見せつけたいだけなのである。つまり「脅威」でも何でもなく、「いやがらせ」とみるべきだ。
ご苦労なことである。
中国の上層部はおそらく、国内向けに「中国軍は偉大で東京の間近まで爆撃機を飛行させることができる」と喧伝したいのではなかろうか。
日本としては、ウクライナ戦争でのロシア軍の実態を踏まえ、冷静に中国やロシアの行動を判断すべきだと考える。
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