ロシア人宇宙飛行士、スパイ疑惑でISSミッションから追放される
疑惑のロシア人宇宙飛行士

2026年初頭に国際宇宙ステーション(ISS)へ向かうことになっていたロシア人宇宙飛行士オレグ・アルテミエフ(54歳)が、NASAの次回ミッションから外された。ロシア宇宙計画のベテランとして知られる人物だが、SpaceXの機密機材を撮影した疑いが浮上しているためだ。
SpaceX Crew-12

アルテミエフは、NASA主導でアメリカ企業SpaceXが運用する共同ミッション「SpaceX Crew-12」の一員として搭乗予定だった。Crew-12の打ち上げは、商業有人輸送プログラムの一環として、早ければ2026年2月15日にISSへ向けて実施される見通しだった。
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クルードラゴン宇宙船

Crew-12は、SpaceXが開発・運用するカプセル「Crew Dragon」で実施される。ISSへの定期的なクルー交代ミッションの一つで、フランス人宇宙飛行士ソフィ・アデノを含む4人の搭乗が予定されていた。
輝かしい経歴

アルテミエフにとって、このミッションはキャリアの節目となるはずだった。SpaceXのカプセルに搭乗するのは初めてだったからだ。ただし、彼はすでに2014年、2018年、2022年の3回、ISSミッションに参加している。これまでの宇宙滞在は通算560日、船外活動は8回で、合計53時間以上に及ぶと英紙『Daily Mail』は報じている。
現役屈指のベテラン

これほどの経験を持つアルテミエフは、現在も活動するロシア人宇宙飛行士の中でも最も熟練した一人とされる。そのため、今回の疑惑はさらなる波紋を広げている。
突然の決定

12月2日、ロシア宇宙公社ロスコスモスは、アルテミエフが別の職務に配置転換されたと突然発表した。ロシアの独立系調査メディア『The Insider』によると、カリフォルニア州ホーソーンでの訓練中、SpaceXの機密文書や推進装置を撮影したことが問題視されたという。
ITAR規則違反の疑い

『Daily Mail』によれば、この疑惑は米国のITAR(国際武器取引規則)に関連している。ITARは、防衛や航空宇宙分野に関わる機微な技術の不正流出を防ぐための厳格な規則だ。
機密データの違法輸出とみなされる可能性

外国籍である以上、許可なく機密情報を撮影・保管・持ち出す行為は、米当局から機密データの違法輸出と判断される可能性があると、同紙は指摘している。
重い処分の可能性

もし疑惑が事実と認定された場合、ITAR違反は1件につき100万ドルを超える罰金が科される可能性がある。さらに、米国務省によれば、スパイ行為の意図が認定されれば、最長20年の禁錮刑も想定されるという。
省庁横断の捜査が進行中

宇宙分野アナリストのゲオルギー・トリシュキンは『The Insider』の取材に対し、この件を受けて省庁横断の捜査が開始されたと明かしている。
信ぴょう性の高い疑惑

トリシュキンは自身のTelegramチャンネルで、打ち上げまで3か月を切った段階で外された点を踏まえ、「ITARの重大な違反」があった可能性は高いと指摘した。「これほど経験豊富な宇宙飛行士が、無意識にここまで深刻な違反を犯すとは考えにくい」と『The Insider』に語っている。
アンドレイ・フェジャエフが後任に

ロスコスモスは、アルテミエフの後任として、同じく経験豊富な宇宙飛行士アンドレイ・フェジャエフを起用すると発表した。フェジャエフは2023年のCrew-6ミッションに参加している。
ロシア側の公式説明

一方でロスコスモスは、アルテミエフが「別の職務に異動した」と述べるにとどまり、疑惑や捜査については一切触れていない。
写真:Oleg Podlesnykh / Unsplash
アメリカからの追放

複数のロシアメディアによると、アルテミエフはすでにアメリカから追放されたとされ、米国家安全保障当局が捜査を続けているという
NASAとSpaceXは沈黙

現時点で、NASAもSpaceXもアルテミエフの降板について公式なコメントを出していない。トリシュキンによれば、NASAは外交・安全保障上の配慮から、問題が公になるのを避けたがっていた可能性がある。
国際宇宙協力への影響は

この件が事実と確認されれば、ISSをめぐるNASAとロスコスモスの協力関係に影響が及ぶ可能性がある。今後、ロシア人宇宙飛行士が米国内施設で活動する際、監視が強化されることも考えられる。
米露の数少ない協力関係

ISSは、ロシアとアメリカが共同で運営する数少ない協力プロジェクトだ。2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻以降、両国関係が緊張する中で、特に貴重な協力分野となっている。
ISS運用は2028年まで延長

「Euronews」によると、NASAとロスコスモスは昨年7月、ISSの運用を2028年まで延長し、2030年ごろに退役・軌道離脱させることで合意している。この微妙な案件は、その協力体制を試す出来事になるかもしれない。