フランス家庭秘伝の100年レシピで作るチョコケーキ「マフマーニュ」をクリスマスにも

なじめなかったパリの記憶, つまみ食いで欠けたバゲットに親近感, 大量のチョコとバターを「湯煎なし」で, 手作り、なのに品のいいレストランの味, マフマーニュ(フランスのチョコレートケーキ)のレシピ, ケーキに添える「クレーム・アングレーズ」, 織田博子(おだ・ひろこ) 

イラスト・織田博子

なじめなかったパリの記憶

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パリの街並み

フランス・パリに降り立ったとき、初めて来た感じがしなかった。ゴッホの絵画で見たような夜のカフェテラスや、映画「勝手にしやがれ」でジーン・セバーグが歩いたシャンゼリゼ通り、教科書で見たノートルダム大聖堂…見覚えのある景色がたくさんあった。

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シェアオフィスの室内。さまざまな職業の人が一緒に過ごす(サム・スパイサー撮影)

なのにパリになじめなかった。英語で話しかけてもフランス語で返される。直前まで滞在した中央アジアの人懐っこさとは真逆の雰囲気に、どう接していいか分からなかった。

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ニコラさん(右)とシェアオフィスのキッチンで、マフマーニュを作った

つまみ食いで欠けたバゲットに親近感

戸惑う私の心の扉を開いたのは、パリで出会った日本人のこんな言葉だった。「フランスのバゲットは焼きたてがおいしい。お店で買ったあと、ちょっとかじっちゃう」

町を歩くフランスの人々を見ると、胸に抱える長いバゲットの先がちょっとだけ、かじられている。親しみの感情が一気にわいた。

今日本で、私はフランスをより身近に感じている。私が使うシェアオフィス(多様な仕事をする人が共同で使う職場)で出会った、フランス人のニコラさん。とある企業の社長で、いつも難しい顔をして、電話の向こうの人にフランス語で話していた。

料理を教えてもらうきっかけができたのは、シェアオフィスのキッチンで、みんなで手作りカレーを作って食べたとき。

普段全くしゃべらないニコラさんが、英語で料理を絶賛。不思議そうにしている私にニコラさんの同僚が、「ニコラは日本に来たら日本語で話したいと思っている。でも日本語が分からないから無口になっちゃうんだ」と教えてくれた。ニコラさんへの親しみがぐっと増した。

大量のチョコとバターを「湯煎なし」で

ニコラさんは子供のとき、エンジニアになるかパティシエになるか迷ったほどお菓子作りが好きで、特におばあちゃんから教わったチョコレートケーキが得意だという。お願いして後日、マフマーニュと呼ばれるそのケーキを作ってもらえることになった。

大量のチョコレートとバターを鍋で溶かし(湯煎をしないことに驚いた)、そこに少量の小麦粉を丁寧に混ぜて生地を作っていく。

ケーキを作りながら、これがもともと、ひいおばあちゃんのレシピで、100年もの歴史があることを教えてくれた。「秘伝だから、家族以外に作り方を明かしたことはない」「このケーキが好きだから、自分の結婚式では自分で作ってみんなにふるまった」。そんな家族とケーキの歴史に耳を傾けながら、チョコを混ぜるのを手伝っていると、「混ぜ方が足りない、ちょっと失礼」とチョコを混ぜ始めた。

「どんな状態になったら生地の完成ですか?」と聞くと、ニコラさんは「言葉では説明できない、見て感じて」。職人らしい厳しさをみせた。

手作り、なのに品のいいレストランの味

ケーキをオーブンで焼いている間、「余った生地をちょっとなめてもいいよ」と出してくれた。小麦粉がほとんど入っていないため食べてもいいようだ。フランス語でこうしたつまみ食いを「グテ」と呼ぶ。

焼けたらケーキを一晩寝かせるといい。寝かせる前後、それぞれ食べ比べてみたが、寝かせた後のほうが味にまとまりがある。

ケーキは、翌日、シェアオフィスの仲間たちに振る舞われた。

切り分けて皿に盛ったら、クレーム・アングレーズ(イギリス風のクリーム)をかける。濃厚だけれど甘さ控えめなチョコレートの味わいに、ソースが品のよい風味を加えている。フランス料理店でいただくデザートのようだ。

ケーキを振る舞いながら、「これは私のおばあちゃんの秘伝のレシピ。秘伝のレシピが公開された記念すべき日です」とニコラさん。なので、新聞で紹介させてもらいました。ニコラさん、そしてそのレシピを生んだ彼のひいおばあちゃん、おばあちゃんも、ありがとう。

マフマーニュ(フランスのチョコレートケーキ)のレシピ

材料(4人分)

バター・・・225グラム

ダークチョコレート(カカオ65%)・・・500グラム

 ※カカオ62%を400グラム、カカオ82%を100グラムでも可

砂糖・・・200グラム

小麦粉・・・大さじ1

卵・・・6個

作り方

1.鍋にバター、チョコレートを入れて、弱火にかけて溶かす。混ざったら火を消し、砂糖を加えて混ぜる。

2.ボウルに小麦粉を入れて、卵1個を割り入れる。ハンドミキサーでよく混ぜたら、残りの5個を入れ、全体が白色に近づくまで混ぜる。

3.②に①を入れ、木べらで大きくすくうように混ぜる。次第にもったりと重さが出て、表面につやが出てくる。木べらを持ち上げ、リボン状になって落ちるくらいまで、しっかりと混ぜる。

4.バター(分量外)を塗ったケーキ型に③を流し入れる。しっとりと焼き上がるように、型より大きな耐熱容器に水をはり、そこにケーキ型を入れる。水の量は、ケーキ型の高さの真ん中あたりまでが浸るくらい(水が足りないと固くなる)。

5.180度に予熱したオーブンに④を入れ、45分焼く。

6.オーブンから⑤を出し、水をはった容器を外し、さらに15分焼く。

7.⑥をオーブンから出し、粗熱を取る。その後、冷蔵庫に入れて24時間寝かせる。

8.食べる2時間前に冷蔵庫から出す。あるいは、ケーキ型ごとお湯に入れて30秒置く。

ケーキに添える「クレーム・アングレーズ」

材料

牛乳・・・1リットル

砂糖・・・100グラム(※量はお好みで調節しても)

小麦粉・・・小さじ1

卵黄・・・6つ

ラム酒・・・大さじ1(お好みで)

作り方

1.牛乳、砂糖を鍋に入れ中火で温める。沸騰の直前で止める。

2.ボウルに卵黄、小麦粉を入れ混ぜる。最初に軽く混ぜ、その後、ハンドミキサーなどでよく混ぜる。

3.①を木べらで混ぜながら、②に入れる。

4.③を鍋に戻し、ラム酒を加える。約82度を保ちながら、10分程度、とろみが出るまで温める。(※84度を超えると卵黄が固まるので注意)

5.④をざるでこす。粗熱が取れたら冷蔵庫で3時間寝かせたあと、ケーキにかける。

織田博子(おだ・ひろこ) 

食を旅するイラストレーター、マンガ家。料理教室「世界家庭料理の旅」を主宰、3児の母。「世界の子育てくらべてみたら、心がふわっとラクになった」(WAVE出版)など著書多数。