ロシアで拡大中「無人機工場」実態は…アフリカ人女性の勧誘で騒動懸念広がる

ウクライナ侵攻が長期化する中、ロシアは無人機の大量生産に向け、労働力の確保を進めている。2025年には若いアフリカ人女性の勧誘をめぐる騒動が起き、現地で懸念の声が広がった。国をあげた量産体制の裏側で、いま何が起きているのか。

■“極秘”無人機工場を公開…学生も動員

ロシア国営メディアは25年7月、“異例”の特集番組を放送した。極秘だとする軍用無人機の生産工場を公開したのだ。工場の責任者は「ロシアが何をしているか、しっかり見せる必要がある」と強調した。無人機の量産体制を確立したとアピールする狙いがあったとみられる。

工場があるのは、ロシア中部タタルスタン共和国の「アラブガ経済特区」。ここでは「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれる自爆型無人機が大量生産されている。

番組内で明らかにされたのは、生産現場に少年少女たちが動員されているという事実だ。10代半ばの学生たちが、付属の学校で学びながら働く仕組みがあるという。無人機工場における学生の動員は、以前から指摘されていた。ロシア独立系メディアは23年、学生たちが過酷な長時間労働を強いられていると報じ「授業の後に夜中まで働くこともある」との声を伝えている。

■表向きは若いアフリカ人女性たちの“キャリア支援”…しかし実態は

アルバトロス社/民生用無人機を生産するアフリカ人女性 日テレNEWS NNN

この無人機工場をめぐっては、若いアフリカ人女性の動員も指摘されている。ロシアは22年、主にアフリカ各国の若い女性を対象に、教育と就労の機会を提供する国際プログラム「アラブガ・スタート」を始めた。その宣伝動画には、“民生用”無人機の生産に従事するアフリカ人女性の姿も確認できる。

表向きは“キャリア支援”の国際プログラムだが、米シンクタンク・科学国際安全保障研究所は女性たちの9割以上が、実際は“軍事用”無人機の生産に従事していると推計している。また渡航前の段階では、具体的な業務内容が知らされていないという。

英BBCは25年11月、「1000人以上のアフリカ人女性が工場で無人機の生産に従事している」とした上で、ある女性へのインタビュー内容を報じた。「クレーンのオペレーターで働くことを希望していたが、全員が無人機工場で働くことになった」「化学物質で皮膚をやけどした」「多くの命を奪うものを作る仕事に関わるなんて、本当に恐ろしい」女性はこう思いを語っている。

■インフルエンサーの「勧誘動画」に批判殺到

南アフリカのインフルエンサー(動画は削除済み) 日テレNEWS NNN

若いアフリカ人女性たちは、なぜロシアへ渡るのか。そこには、SNSを通じた巧みな勧誘手法がある。南アフリカでは25年8月、インフルエンサーの宣伝動画をめぐり、大きな騒動が巻き起こった。南アフリカの現地メディアによると、TikTokで170万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーの女性は、実際にロシアへ撮影に赴いた上で、プログラムの宣伝動画をSNSで公開した。「無料航空券」「整った宿泊施設」「高収入」などをうたった内容だ。こうした動画を、複数のインフルエンサーが公開していた。

これに対し、南アフリカ政府が注意喚起のメッセージを発信。「宣伝内容と実際の待遇は大きく違う」「帰国の支援を求めて私たちの大使館に助けを求めた女性もいる」「パスポートを取り上げられ、厳しい環境で常に監視されていた」…このように述べ、ロシアによる勧誘には問題があると指摘。さらに「条件が良すぎて本当とは思えないような宣伝には惑わされないことが大切だ」と警告した。

その後、インフルエンサーには批判が殺到。インフルエンサーの女性は「十分な調査をしなかった」と謝罪し、後悔の言葉を口にした。

■アフリカの失業問題につけ込むロシア

チャールズ・マファ氏 日テレNEWS NNN

実態を調査したザンビアの調査報道メディア「MAKANDAY」のジャーナリスト、チャールズ・マファ氏はNNNの取材に対し「ロシアがアフリカの若者の失業問題につけ込み、戦時産業に組み込んでいる」「広告やインフルエンサーの動画は非常に“夢のある”内容で、おしゃれな寮や近代的な教室を見せて、国際的なキャリア、人生が変わるような機会を強調する。自国で職がない状況であれば、誰でも飛びついてしまうでしょう」と指摘する。

その上で「勧誘はよりピンポイントになり、限定的なグループを使ったり、紹介制といった形に変わりつつある」として、アフリカで疑惑が広がる中でも、依然としてロシアの勧誘は続いていると言及した。

■拡大続く無人機工場…北朝鮮から1万2000人受け入れか

ロシア大統領府のHPより 日テレNEWS NNN

米シンクタンク・科学国際安全保障研究所は25年7月、衛星画像の分析結果として、無人機工場の周辺で4万人以上の労働者を収容できる新たな居住区の建設が進んでいると発表した。労働力の確保を進め、無人機生産をさらに拡大する狙いがあるとみられる。

こうした動きを裏付けるように、25年11月にはロシアが北朝鮮から約1万2000人の労働者を工場に受け入れる計画があるとウクライナ側が主張。ロシア外務省と北朝鮮企業との間で協議が行われていて、条件は「時給約400円、1日12時間以上の勤務」だという。国内の若者、そしてアフリカ人女性らの勧誘には限界がみえ始め、ロシアが北朝鮮に協力を求めた可能性が浮上したのだ。戦時下で深刻な人手不足に苦しむロシアは、なりふり構わぬ姿勢で労働力確保に奔走しているもようだ。