おすすめしたい絵本1位は『おせち』 作者が子どもたちに伝えたい「幸せを願う料理があるんだよ」
全国の絵本専門店・書店の児童書売り場担当者の“おすすめしたい絵本”をランキング形式で発表する『第18回MOE絵本屋さん大賞2025』で1位に輝いた絵本『おせち』。作者の内田有美さんに、絵本に込めた思いや、制作するなかで苦労したことなどについてインタビューしました。
■MOE絵本屋さん大賞で1位に「本当にびっくり」

「MOE2026年2月号」 日テレNEWS NNN
絵本月刊誌『MOE』が全国3000人の絵本専門店・書店の児童書売り場担当者にアンケートを実施し、その年のおすすめしたい絵本30冊を決定する『MOE絵本屋さん大賞』。
今回1位を受賞したのは、累計発行部数16万5000部を突破している絵本『おせち』です。当初は、月刊絵本『こどものとも年中向き』として刊行されました。

『おせち』 内田有美 文・絵 満留邦子 料理 三浦康子 監修 福音館書店 刊 日テレNEWS NNN
「くろまめ ぴかぴか あまい まめ まめまめしく くらせますように」「きんとん きんかん きんいろ こがね おかねが いっぱい たまりますように」など、おせち料理に込められた願いを、まるで写真のような美しい絵とともに紹介しています。

作者の内田有美さんにインタビュー 日テレNEWS NNN
――『MOE絵本屋さん大賞』で1位を獲得された心境を教えてください。
とってもびっくりしています。『こどものとも』を出版された時もすごく反響をいただいてびっくりしたんですが、それが賞をいただけるところまで大きくなるなんて全く考えていなかったので、本当にびっくりしています。
――なぜ“おせち”を題材とした絵本を手がけられたのでしょうか?
元々「“おせち”っていうテーマで絵本を作りたいな」っていうのは、(担当編集者の)関根さんがすごく長年あたためてきた企画だったみたいで。私が表紙のイラストを担当した雑誌を関根さんが見てくださって、声をかけてくださって。初めてお会いした時に「“おせち”っていうテーマで絵本をどうですか」っていうお話になって、私も実は「おせち料理をいつか描いてみたいな」って思っていたので、「やりたいです」ってその場ですぐ決まりました。
――おせちを描いてみたかったきっかけは?
私が(おせちを描きたいと)考えていた時は東京オリンピックが始まる前で、 友達とZINE(個人や小さなグループが自由なテーマで作る小冊子)を作るのに外国の方がきっとオリンピックの時にいっぱい来るから。 日本の食文化は見た目も美しいし、その由来とか一個一個の料理の意味とか特徴があるというか、面白いものだなって思ってたので「きっと外国の方も興味をもってくださるんじゃないかな」と思って。「オリンピックが始まる前に、ZINEを作りたいね」って話をしてたんです。でも、コロナになっちゃってオリンピックも延期になったり。 あと、私の絵は(描くために)その物の写真が必要になってくるので「きれいなおせちをどうやって用意すればいいのか」とか考えると、すごく実現するの難しいなとか思って。そしたら関根さんから言っていただいて。
■おせち料理を色々な角度から何百枚も撮影

料理研究家の満留邦子さんが作ったおせち料理の写真 日テレNEWS NNN
絵本の制作にあたっては、料理研究家の満留邦子さんが作ったおせちを色々な角度から写真に撮り、絵を描いていったそうです。
――満留さんとは、どのような打ち合わせをされましたか?
満留さんとの打ち合わせは私はしていなくて、関根さんがお話してくださったんですけど。おせちの中身って地域によっても違いとか個性があるので、できるだけたくさんの方が認知されている料理で基本的なおせちを絵本にした方がいいんじゃないかっていうことをきっと話されてました。
満留さんのおせちがすごくきれいで、 食べたんですけどおいしくて「このままをちゃんと記憶して、それを絵に再現しなきゃな」って思いました。お皿に盛り付けていただいた一品一品を撮って、お重を撮って、最後に食べて。

『おせち』 内田有美 文・絵 満留邦子 料理 三浦康子 監修 福音館書店 刊 日テレNEWS NNN
――リズミカルで読みやすい言葉が特徴的ですが、このような文章にされた理由は何でしょうか?
おせちの意味って“立身出世”とか“子孫繁栄”とか、かまぼこの紅白も“縁起がいい”とかってみんな大体知ってるじゃないですか。 でも、「縁起がいいとか子孫繁栄って何?」と思う方も(いらっしゃると思うので)“分かりやすくて、口に出しやすい、子どもが覚えやすいように、リズムがある短い言葉で意味が伝わらないと”と思って何回も声に出して。
■さまざまな色を使って表現 苦労する絵は“白い食べ物”

内田さんが持っている色鉛筆やアクリル絵の具の一部 日テレNEWS NNN
水性色鉛筆、油性色鉛筆、アクリル絵の具を使って絵を描いているという内田さん。さまざまな色を使っておせち料理を表現しています。
――特に苦労した絵はありますか?
おせちに限らずなんですけど、食べ物で“白い食べ物”を描くのは難しいなって思っていて。個人制作で“白い食べ物”っていうテーマで絵を描いたことがあるんですけど、 的確なところに影を入れないと、全体的に入れちゃうと白さがなくなっちゃう、グレーになっちゃうというか、 白の美しさみたいなのがなくなっちゃうので。 手数を極力入れないで、的確に入れて描くっていうのが難しくて、おせちの中だと花れんこんとか、なますの大根の部分とか汚く見えないようにっていうのは意識しました。
――絵本の中でこだわりはありますか?
仕上がりが好きなのは、えび。えびっていいですよね(笑)。あとは、 一つ一つのお重はやっぱりきれいですよね、色んな色が入ってて、色んな質感もあって。
■子どもたちに知ってほしい思い 「幸せを願う料理があるんだよ」

『おせち』 内田有美 文・絵 満留邦子 料理 三浦康子 監修 福音館書店 刊 日テレNEWS NNN
――今回初めて絵本に挑戦されたとのことですが、いかがでしたか?
本当に私は分からなくて「どうしたら子どもは喜んでくれるのかな」って。絵本ってかわいらしい絵と物語があってっていうのが印象にあるので、私の絵で一個一個の料理を説明するって「楽しんでくれるのかな?」っていうのはすごく不安で、もうずっと「これ大丈夫? 売れますかね?」って関根さんに。
私自身は、小さい頃おせち大好きだったっていう子供じゃないんです。おせち料理は当たり前に年始に家族で囲んで食べるけど、“大人が食べるもの”っていうか。 なので、どれぐらい子どもが興味を示してくれるのかっていうのも、自分はそうじゃなかったから「知らない」「食べない」みたいなふうになっちゃったら心配だなあって思ってたのに、「文章でも覚えて言ってくれます」とか「自然と覚えてくれます」とかっていう声を聞くと「よかったな」って。

『OSECHI Food for the New Year』内田有美 文・絵 アーサー・ビナード 英語版テキスト 満留邦子 料理 三浦康子 監修 福音館書店 刊 日テレNEWS NNN
そして2025年10月には英語版となる『OSECHI Food for the New Year』が刊行されました。
――『おせち』は、どのような方に読んでいただきたいですか?
おせち料理は家族の健康とか成長とかを願ったり、自分の大切な人の幸せを願う料理だから、そういう気持ちって日本だけじゃなくて海外の人にも共感してもらえる、世界の人が同じ気持ちをもってる普遍的なものだと思うんです。最近は、おせちを手作りする家も少ないだろうし、買って用意するおうちももしかしたら少ないかもしれないですけど、「そういう幸せを願う料理があるんだよ」っていうのを子どもたちがこの本で知ってくれたらうれしいなあって思います。