アメリカによる「属国化」からの脱却が不可欠…破壊されつつある地域の「農と食と暮らし」を守るため、わたしたち一人ひとりにできること

2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。

農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!

コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。

『もうコメは食えなくなるのか』連載第45回

『「令和のコメ騒動」鎮静には“根本原因の解消”が必要…「流通・農協悪玉論」に責任転嫁してきた日本政府が今こそ示すべき“ビジョン”とは』より続く。

アメリカによる「胃袋からの属国化」

増産できないなら、輸入米でまかなえばよいかのようなストーリーも、トランプ関税との絡みでつくられている。これでは、稲作農家はさらに追い詰められて、やめる農家が続出しかねない。輸入米が増え、コメの自給率さえ大きく下がってしまったら、極論でも暴論でもなく、いざというときに国民は餓死しかねない。

さらに、「令和のコメ騒動」では、皆がこぞって、流通・農協悪玉論を展開したが、原因はコメ不足だと認めた時点で、流通・農協悪玉論は否定されたはずだった。なのに、流通・農協悪玉論が間違いだったと認める発言がないのはなぜなのか。そこにはコメ騒動を契機にして農協マネーと全農を米国のグローバル企業に売り渡す計画の実行が意図されている。

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それだけではない。この一連の騒動には、米国との関係が大きく影響していることを押さえる必要がある。今回のコメ騒動の根底には減反政策があるが、それは、米国の日本占領政策の一環としてコメ消費を減らして日本人が米国の農産物に依存しないと生きていけないようにする「胃袋からの属国化」の結果だ。

また、米国の占領政策に対応して、農業を生贄に差し出して自動車産業の利益を得ることで経済発展を遂げるという日本の戦略もコメ騒動で最終局面を迎えた。自動車産業を守るために、絶対に譲ってはならないはずの日本人の命の要であるコメさえも差し出すから許してくれと言う「盗人に追い銭」外交で、コメも差し出し、自動車の利益も失った。コメ騒動が米国にコメをも差し出す流れにつながった。

巨悪との「最後の闘い」の時が来た

さらに、米価下落に対応するセーフティネット政策が打ち出せないのも、米国との関係による。米国からの要請に応えて武器などの購入に莫大な予算が必要になる。それは拒否できないので、そのぶん、どこからか予算を削減しなくてはならない。

その一番の標的に農業予算が位置付けられている。そのため、稲作農家の所得補償政策が打ち出せない。田んぼを潰せば「手切れ金」だけ出すという水田の畑地化政策も予算削減に資するものとして行われた。

下は、2025年4月に佐賀県を訪れた際、佐嘉神社に掛けてあった詩だ。

私の父親は45年前に海で亡くなった。人は皆、人生の不条理を乗り越え、さまざまな想いを胸にしまって、何とか前を向いていければと思う。

佐賀県に由来する『葉隠』の本質は「一瞬一瞬を真剣に如何に生き抜くか」だと思う。

父が亡くなった年齢をずいぶん超えるまで私も生きてきた。

私のような高齢世代は、次世代を守る盾になれるか、巨悪との「最後の闘い」の時が来たように思う。

自分たちの地域から取り組みを始める必要

日米のオトモダチ企業の利益のために農家・中小企業・街の商店街・協同組合を潰し、地域コミュニティを崩壊させる「今だけ、金だけ、自分だけ」の政治・行政の流れがますます強まってきた。

私たちは、米国による「胃袋からの属国化」から脱却し、独立国として米国と対等な関係を築かなくてはならない。今こそ、「胃袋からの独立」を実現しなくてはならない。

そのためには、政治・行政にもがんばってもらいたいが、まず、自分たちが自分たちの地域から自分たちの力で地域の農と食と暮らしを守る仕組み作りを強化して、「みんなで作ってみんなで食べる」自給圏作りを進めることが大切だ。

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希望の光は確実に広がってきている。

本書は、木原進治氏と荒井香織氏の多大なご尽力なくして完成することはできなかった。末尾に記して謝意を表したい。

2025年秋