「愛子天皇論」是か非か、議論の前に考えるべきこと 女性リーダー好意的に受け止められる時代にこそ必要な視点とは

愛子さまの公務での落ち着いた振る舞いや言葉遣い、女性首相の誕生も相まって「愛子天皇」を待望する声がより一層高まっている。こうした中、識者は「一番大切なことを見落としている」と苦言を呈する。AERA 2026年1月12日号より。
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皇室を取り巻く社会の価値観は時代とともに変化を遂げてきた。なかでも、戦後とくに大きく変わったのは、女性の働き方と社会への関わり方だ。昨年は、男女雇用機会均等法が1985年に制定されてから40年の節目の年だった。
管理職に就く女性は珍しくなくなり、秋には、ついに憲政史上初の女性首相である高市早苗首相も誕生。社会が女性リーダーを「当然」とする雰囲気のなか、「愛子天皇論」はますます勢いづいている。
だが、ジェンダー論に詳しい東京大学大学院の藤田結子准教授(社会学)は、「皇室に対する考察は専門外」と前置きしたうえで、ことはそう単純ではないと話す。
「若い世代も含めて、女性首相の誕生に好意的であり、女性の活躍に対しては賛同しています。しかし、高市さんのフレッシュな印象が好きなだけであって、どのような政策や政治思想を持っているのかまで十分理解しているわけではない。日本に渦巻く『女性ブーム』を観察すると、表層的な面もある」
■愛子さまが望むことを
同様に「愛子天皇論」や「愛子さま」ブームは、温厚で知的で品のあるプリンセス、という愛子さまのキャラクターへの注目に終始しているのではないか、と指摘する。
いま、「女性天皇論」や女性が結婚後も皇室に残る制度や「女性宮家創設」などにつながる動きが注目を集めているのは確かだ。けれど、「女性天皇」と「女系天皇」の違いや、「愛子天皇」の誕生が皇室の存続にどのような影響を与えるのか、といった皇室制度の根幹や歴史的背景に踏み込む部分への関心は、そう高くはないのが現状だろう。

そして、藤田准教授は「愛子天皇」の是非の議論の前に「まず考えるべき、一番大切なことを見落としてはいないでしょうか」として、こう話す。
「まず、愛子さまご自身が、またはご両親である天皇陛下と皇后雅子さまが、愛子さまが天皇になることを本当に望んでいるのかどうか。そして、結婚しても皇室に残りたいと、ご本人が希望しているのか。そういう視点も含めて、こうした議論をするべきだと思います」
社会で女性の活躍の場が広がり、女性リーダーの誕生も好意的に受け止められている時代だが、その根底には、女性たちが自分の生き方を自分で選択することができるようになったという事実がある。「結婚するのか、しないのか。どんな職業に就き、どんな働き方をするのか。女性たちが自分で全て決めたといえるようになったのが今の社会です」(藤田准教授)
それを皇室にも当てはめて考えたいところではないだろうか。その願いは皇室の中からも聞こえてくる。24年、秋篠宮さまは自身の誕生日会見で、「該当する皇族は生身の人間なわけで──」と述べ、皇室制度を変える議論を行うことによって、「その人たちがそれによってどういう状況になるのか、(略)その人たちがどういう考えを持っているか」を、少なくとも宮内庁は理解する必要があるのでは、と訴えている。
高まる「愛子天皇論」と期待。その空気を感じながら、愛子さまはご自身の歩む道をどのように見据えているのだろうか。
(編集部・永井貴子)

※AERA 2026年1月12日号より抜粋
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