「地震リスクが世界一大きい」とされる浜岡原発のデータ不正、危険な原発を「安全」にすり替える悪質な体質

東電原発事故からわずか7年で不正に手を染めた中部電力, 23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発, 「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作, そこに本気はあるのか?東電側弁護士も含まれる「第三者委員会」

中部電力浜岡原発(写真:共同通信社)

 中部電力の浜岡原発は、南海トラフ地震を起こす断層面の真上にあり、世界で一番、地震リスクが大きい。そんな危ないところにあるにもかかわらず、中部電力はズルをして、揺れを小さく計算し、国の審査をすり抜けていたことが1月5日に発覚した。

 東京電力が不公正なやり方で津波の想定を小さくしたり、見直しを先延ばししたりして大事故を引き起こしてからまだ15年しかたっていないのに、電力業界は懲りていないようだ。

東電原発事故からわずか7年で不正に手を染めた中部電力

 東電事故のあと止まっていた浜岡原発3、4号機を再稼働しようと、中部電力は2014年から手続きを進めていた。その過程で、意図的に、大地震の際に想定される地震の揺れ(基準地震動)を小さく計算し、原子力規制委員会の審査に提出していた。

 そうしてズルをして小さくした数値で、23年9月に「おおむね妥当」と合格。その後、その数値で揺さぶられても原発施設の安全が確保されるか詳細な審査が続いていた。

 25年2月、規制委に中部電力が揺れの計算で不正をしていると外部通報があり、規制委が調査を開始。中部電力の林欣吾社長は26年1月5日に記者会見し、不正を確認したと述べた*1

*1 https://www.chuden.co.jp/publicity/rer_other/1217263_3509.html

「想定される地震の大きさは小さくなったのか。どうして意図的に選んだのか」という質問に、林社長は「ヒアリングの結果としては、意図的に選定し地震動を過小評価していた。具体的にどのくらい(小さくしたか)、どのような理由だったのかは第三者委員会の調べを待つ」と答えた。

東電原発事故からわずか7年で不正に手を染めた中部電力, 23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発, 「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作, そこに本気はあるのか?東電側弁護士も含まれる「第三者委員会」

浜岡原発の審査を巡る不適切事案について、臨時記者会見する中部電力の林欣吾社長=1月5日、名古屋市(写真:共同通信社)

 どのくらい小さくしていたかはまだ明らかにされていないが、不正な方法で小さめに想定しないと審査を通らないと考えていたのは間違いないだろう。逆に言えば、適切に想定すれば、浜岡原発は安全でないと露見する。それを恐れたわけだ。

 電力会社は地震の想定をめぐって、しばしば不正な手段を使う。たとえば東電は、津波が敷地を大きく超える計算結果を2008年には得ていた。しかしすぐには想定見直しをしないことを決め、「学会で研究する」という名目で先延ばししたり、「研究より対策すべきフェーズだ」という研究者の意見を規制当局に伝えなかった*2りして、2011年の事故を引き起こした。「対策は不可避」と認識していたのに、関係者に根回ししたり、都合の悪い事実を隠したりした結果だった。

*2 https://level7online.jp/2021/0312/

 当時、根回しと想定先送りを担当させられていた東電の技術者は、そのような方法を取ることについて「世間(自治体、マスコミ…)がなるほどというような説明がすぐには思いつきません」と悲痛な文面のメールを上司に送っていた*3

*3 https://level7online.jp/2021/20211209/ この記事の写真3

 中部電力によると、2018年以降、意図的に不正な方法を使ってきたという。東電事故からわずか7年で、電力会社が、また不公正な手続きで地震の想定を誤魔化していることに戦慄を覚える。

23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発

 今から23年前、地震の国際学会*4で、元東大地震研究所長の茂木清夫さんの講演を聞いた。茂木さんは、浜岡原発について「直下でマグニチュード(M)8の地震が起きる。極めて危険な状況だ」と警告した。

*4 https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8766987&contentNo=1

 浜岡原発は、敷地の直下にプレート境界がある。「M8の地震が起きるとわかっているところなのに、原発があるのはここだけ」と、地震の分布と原発の位置を重ねた世界地図を示しながら、茂木さんは強調した。

東電原発事故からわずか7年で不正に手を染めた中部電力, 23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発, 「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作, そこに本気はあるのか?東電側弁護士も含まれる「第三者委員会」

南海トラフ巨大地震の想定震源域と浜岡原発の位置(大阪管区気象台の地図に加筆)

 福島第一原発の場合、大地震をもたらした震源域は、敷地から100キロ以上離れていた。一方、浜岡は敷地の真下、十数キロのところある。東電事故後、全国の原発のうち、浜岡原発だけは、政府はすぐに停止するよう要請した。そのくらいリスクが大きいと考えているのだ。

 問題の根っこは、中部電力が、そこが巨大地震の巣であることを知らずに建設地を決めてしまったことにある。

「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作

 中部電力は、当初は三重県に原発を作るつもりだった。1963年に熊野灘の候補地点を発表したものの、地元の強い反対で断念。67年になって静岡県浜岡町(現・御前崎市)で原発計画を進めると発表し、68年には用地取得を終えた。

 今でこそ南海トラフ地震のリスクは広く認識されるようになったが、プレート同士の衝突という現象を明らかにしたプレートテクトニクスが考え出されたのは1960年代の後半。東海地方でM8級の大地震が起きると茂木さんが指摘したのは69年のことだ。

 中部電力は、浜岡原発で想定している揺れの大きさを最大450ガルとして建設していた*5。地震の研究が進むにつれ、それでは足りないことがわかって何度も想定を見直し、現在は最大1200ガルとして申請し、原子力規制委員会の審査で合格していた*6

*5 中部電力 浜岡原子力発電所 原子炉設置変更許可申請書(2号炉増設)1972年9月 添付書類 8-106

*6 https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/hamaoka/anzen/shinkisei/shinsajokyo/kijunjishindou20231101/

 しかしそれでもまだ過小評価だったわけだ。450ガル想定で造ったプラントを、後から補強するにも限度があり、不正な手段を使ってでも、想定する揺れの数値を低く抑えざるを得なかったのかもしれない。

「大地震は想定済み」とずっと宣伝してきた中部電力に対し、茂木さんは「大地震のことはわかっていないことが多い。地震のたびに、想定外のことが起きている」と技術者の慢心も心配していた。ところが中部電力は、慢心どころか、データを意図的に操作して想定を小さくする悪質な手口を使っていたわけだ。

そこに本気はあるのか?東電側弁護士も含まれる「第三者委員会」

 揺れの想定を意図的に小さく計算して審査をすり抜けるという重大な不正を、末端の社員だけで決めたとは考えにくい。上層部がどこまで関わったのか、組織の意思決定の様子を解明することが必要だろう。

 中部電力は「事実関係および原因の調査、再発防止策の検討等を行うため、当社から独立した外部専門家のみで構成される委員会(以下「第三者委員会」)を設置することを取締役会で決議いたしました」と発表*7。林社長は記者会見で、「原子力部門の解体的な再構築を視野に入れて覚悟を持って取り組んでいく」と話した。

*7 https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1217264_3273.html

 しかし、どこまで本気なのかは疑わしい。第三者委員会のメンバーには、東電事故で東電側の弁護をしている、いわば原子力業界の御用達の事務所に所属する弁護士が選ばれている。それを「第三者」と称している時点で、「解体的な再構築」という掛け声は虚しく聞こえる。各地の脱原発訴訟に住民側から関わっている弁護士をメンバーに入れるぐらいでないと、信頼できる「第三者委員会」とは呼べまい。

 また、中部電力の不正行為は、外部から規制委に通報があったことで発覚した。規制委は、自力では中部電力の重大な不正を見抜けず、合格させてしまっていた。審査の核心となる重要なデータのイカサマさえ見抜けぬ能力に問題はないのか検討する必要もあるだろう。

東電原発事故からわずか7年で不正に手を染めた中部電力, 23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発, 「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作, そこに本気はあるのか?東電側弁護士も含まれる「第三者委員会」

浜岡原発3、4号機の再稼働審査で中部電力が基準地震動を意図的に過小評価した疑いがある問題を巡る原子力規制委の会合で発言する山中伸介委員長=1月7日、東京都港区(写真:共同通信社)

 林社長は、電気事業連合会の会長も務めている。昨年12月19日の会見で、既存の原発に関して「稼働率を高くすることが大切だ。それだけでは足りないので、新増設やリプレース(建て替え)の検討を進めていくことが重要だ」と語っていた。

 電力の確保は重要だが、原発より安くて安全な発電方法は、もうほかに登場している。稼働率を高めるためなら、世間の理解を得られないような不正な手段を選ぶこともためらわない組織に、原発をまかせるのはやめた方がいい。それが311の教訓だったはずだ。

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