ベテルギウスで観測される長周期の変光は伴星の航跡が引き起こしている可能性
こちらは、オリオン座の一等星「Betelgeuse(ベテルギウス)」とその伴星「Siwarha(シワルハ)」を、最新の研究成果にもとづいて描いたイメージ図。
巨大な赤色超巨星であるBetelgeuse、その周囲に広がった彩層の中を公転するSiwarhaの後方には、まるで彗星の尾のような“航跡”が伸びています。

【▲ 最新の研究成果をもとに描いたオリオン座の「Betelgeuse(ベテルギウス)」とその伴星「Siwarha(シワルハ)」のイメージ図(Credit: Artwork: NASA, ESA, Elizabeth Wheatley (STScI); Science: Andrea Dupree (CfA) - https://science.nasa.gov/asset/hubble/betelgeuse-and-wake-of-its-companion-star-artists-concept/)】
CfA(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)のAndrea Dupreeさんたち研究チームは、2026年1月に開催されたアメリカ天文学会の第247回会合(AAS 247)にて、約6年周期で繰り返されるBetelgeuseの長周期の変光にSiwarhaの航跡が関わっているとする研究成果を発表しました。
今回の成果は、Betelgeuseの長周期変光の原因を説明すると同時に、Siwarhaの存在を支持するものとして注目されます。
Betelgeuseの観測データと予想されるSiwarhaの公転運動に関連性を発見
誕生してから約1000万年が経ったとされるBetelgeuseは、赤色超巨星の段階まで進化した大質量星であり、周期的に明るさを変える変光星のひとつでもあります。
Betelgeuseの主な変光周期は約400日で、星が膨張と収縮を繰り返す脈動によって生じると考えられています。
一方、これとは別に約6年の周期でも明るさが変化することが以前から知られています。長周期の変光の原因は、未発見の伴星によるものではないかとも指摘されていました。
2025年7月、Betelgeuseの伴星を検出した可能性があるとする研究成果を、NASA(アメリカ航空宇宙局)エイムズ研究センターのSteve Howellさんたちが発表。その名称としてSiwarhaを提案しました。
・ベテルギウスの伴星を発見か? 名称「シワルハ」提案も、存在の確認には数年かかる可能性(2025年7月27日)

【▲ ジェミニ北望遠鏡の観測装置「‘Alopeke」で2024年12月に観測されたBetelgeuse(ベテルギウス、オレンジ色)と、伴星の可能性がある天体(青色)(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: M. Zamani (NSF NOIRLab) - https://noirlab.edu/public/images/noirlab2523a/)】
今回、DupreeさんたちはHST(ハッブル宇宙望遠鏡)や地上の望遠鏡で取得された、Betelgeuseの可視光線と紫外線の約8年にわたる観測データを分析。
その結果をもとに、Siwarhaの航跡がBetelgeuseの長周期変光の原因になっている可能性があるという結論に至りました。
研究チームによると、Betelgeuseの分光観測(電磁波の波長ごとの強さの分布を示すスペクトルを得る観測手法)データを分析したところ、Betelgeuseの彩層に含まれる物質(鉄など)のうち、地球の方向へと移動するものから放出された光の成分が強まったり弱まったりするように見えるタイミングと、予想されるSiwarhaの公転運動に関連性がみられることがわかりました。
具体的には、SiwarhaがBetelgeuseの手前側にある時はこの成分が強く、SiwarhaがBetelgeuseの向こう側にある時にはこの成分が弱くなるように見えるのだといいます。

【▲ Betelgeuse(ベテルギウス)で観測された鉄(Fe II)の輝線のスペクトル。色の違いは推定される伴星の公転運動に対応していて、オレンジ色は伴星が手前側にある時、水色は伴星が向こう側にある時に観測された強さを示す。中央左のピークに大きな違いがみられる(Credit: Illustration: NASA, ESA, Elizabeth Wheatley (STScI); Science: Andrea Dupree (CfA) - https://science.nasa.gov/asset/hubble/betelgeuse-effect-of-companion-star-wake/)】
Betelgeuseの長周期変光はSiwarhaの航跡が原因?
こうした変化が観測される理由として、研究チームは以下のようなメカニズムを提案しています。
Betelgeuseの彩層内部を公転するSiwarhaは、その後方に高密度なガスの航跡を重力の作用によって形成し続けています。航跡はBetelgeuseから遠ざかりつつ拡散していき、やがて密度が低くなって消えていきます。冒頭の画像では、Siwarhaの公転軌道面を見下ろすアングルで航跡の様子が描かれています。
もしも地球から航跡を直に観測することができたら、Betelgeuseの手前を横切るSiwarhaから生じた細い航跡が、SiwarhaがBetelgeuseの向こう側へと回り込んでいくにつれて幅広くなっていく様子を見られるでしょう。
この航跡はBetelgeuseから放出される光の一部をさまたげますが、航跡のうち地球から見える部分は、高密度で幅が狭い状態から、低密度で幅が広い状態へと変化していきます。そのため、航跡が光をさまたげる効果も時間とともに変化し、SiwarhaがBetelgeuseの手前側にあるタイミングで最も弱く、SiwarhaがBetelgeuseの向こう側にあるタイミングで最も強くなるのだといいます。
航跡は公転するSiwarhaが作り出しているので、航跡の変化はSiwarhaの公転周期、すなわち約6年周期で繰り返されることになります。航跡を直接見ることができなくても、「Betelgeuseの明るさの変化」として観測すれば、約6年周期で明るさが増減する様子を捉えることになるでしょう。これこそが、Betelgeuseの長周期変光の原因ではないか、というわけです。
2026年1月現在、SiwarhaはBetelgeuseの向こう側にあり、次に出現するタイミングは2027年だと予想されています。天文学者はSiwarhaの観測を計画しており、Betelgeuseに限らず、他の超巨星や巨星における同じような謎の解明にもつながるかもしれないと期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
・NASA - NASA Hubble Helps Detect 'Wake' of Betelgeuse’s Elusive Companion Star
・CfA - CfA Scientists Detect 'Wake' of Betelgeuse’s Elusive Companion Star
・Dupree et al. - Betelgeuse: Detection of the Expanding Wake of the Companion Star (arXiv)