外国人労働者が急増「日本で働きたい」円安・物価高でも日本を選ぶ「メリット」と特定技能2号の恩恵とは

■中国では日本で暮らすように暮らせない, ■特定技能2号は外国人の勤労意欲を高める, ■企業も「特定技能2号」に熱視線, ■日本は「選ばれない国」になったのか, ■日本は「差別の少ない」国

 物価高や円安の影響で、「日本は外国人労働者から選ばれない国になった」といわれている。だが、実際はこの1年で外国人労働者数は大幅に増加し、現在230万人もの人々が在留資格を得て働いている。。なぜ彼らは日本を目指すのか。

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■中国では日本で暮らすように暮らせない

「もし、中国で子育てをしていたら、日本で暮らすようには暮らせていません。中国では誘拐のリスクから、子どもたちだけで公園で遊ぶことはできないし、登下校にも親の付き添いが必要です」

 物価高への愚痴をこぼしながらもこう話すのは、中国福建省出身の林興(リン・コウ)さん(35)。来日して15年、日本で結婚し、3人の子どもがいる。

 いま、林さんにとって、日本の魅力は「安全な暮らし」だ。来日当初の目的こそ、日本で「稼ぐ」ことだったが、次第に日本の平穏な暮らしに満足感を覚えるようになった。

■特定技能2号は外国人の勤労意欲を高める

 注目すべきは、そんな日本に、働きながらステップアップし、移住する手立てがあることだ。2019年に始まった特定技能制度の「2号」は23年、対象分野が2分野から11分野へ大きく拡大した。

 特定技能とは人手不足の分野で即戦力となる外国人労働者を受け入れる制度で、24年10月末時点で、特定技能外国人は20万6995人。技能実習生(47万725人)の半分以下だが、政府は24年度から5年間で特定技能の受け入れ枠を82万人に拡大することを閣議決定した。特定技能外国人は急速に増えており、技能実習の伸び率が前年比14.1%なのに対して、特定技能は49.4%も増えた。

 2号のメリットは、技能実習や特定技能1号とは違い、家族帯同(配偶者と子)が可能なことだ。在留期間の更新に上限がなく、更新を重ねれば、「永住者」の在留資格を得ることも可能になる。日本に移住するための、安全で確かな切符といってもいい。技能実習から特定技能1号へ、そして特定技能2号へとステップアップすることもできる。

 実際、「2号を目指したい」という外国人労働者が大勢いるという。

■中国では日本で暮らすように暮らせない, ■特定技能2号は外国人の勤労意欲を高める, ■企業も「特定技能2号」に熱視線, ■日本は「選ばれない国」になったのか, ■日本は「差別の少ない」国

■企業も「特定技能2号」に熱視線

 外国人材紹介会社大手「マイナビグローバル」(東京都千代田区)の杠元樹(ゆずりは・もとき)代表取締役・社長執行役員は、こう語る。

「弊社が行ったアンケートによると、2号まである特定技能制度そのものが、外国人の『日本で働きたい』という意欲を高める要因になっています。外国人労働者の中心的な在留資格は特定技能に変わってきており、実数もじき技能実習を上回るでしょう」

 25年1月末から2月中旬にかけて、マイナビグローバルがインターネットで行った「日本在留外国人の日本での就労意欲・特定技能への意識に関する調査」には、704人から回答が寄せられた。

「特定技能2号を知っている」と回答した500人のうち、84.0%が「特定技能2号で働きたい」と答えた。うち、「2号で働きたいと強く考えている」人は59.8%で、24年の調査よりも7.9ポイント増加した。

 特定技能2号を取得することは、外国人労働者だけでなく、雇用する企業側にも大きなメリットがある。

「特定技能2号試験に合格するには高い日本語能力が問われます。企業としても、日本語でコミュニケーションがとれる優秀な人が残ってくれるのはありがたい。2号取得者はまだそれほど多くありませんが、日本人同様に働いています」(杠さん)

■日本は「選ばれない国」になったのか

 これまで政府は人手不足を訴える経済界からの要請で、外国人材を受け入れる政策をとってきた。

 最近の物価上昇や円安により、日本は外国人労働者にとって「魅力の薄い国」「選ばれない国」になったかというと、実情は違うようだ。

 日本の外国人労働者数は、前年から25万3912人増加し、230万2587人(24年10月末時点)で、過去最高になった。日本全体で増加した就業者42万人の、実に6割を占める。

「『外国人労働者の日本人気は衰えているのでは』と、尋ねられることが多いのですが、弊社が行ったアンケートからは、そのような傾向はありません」(同)

「現在の在留資格が切れた後も、日本で働きたいですか」という、アンケートの問いに対して、「働きたい」と回答した人は92.3%にものぼった。「働きたくない」は4.5%、「どちらともいえない」は3.1%だった。

 回答者の在留資格は「技能実習」(194人)、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」(178人)、「留学」(171人)、「特定技能」(121人)、「特定活動」(41人)。

 24年の調査と比較しても、「留学」以外のすべての在留資格で「日本で働きたい」と回答した割合が2.3~7.8ポイント増加した。

■中国では日本で暮らすように暮らせない, ■特定技能2号は外国人の勤労意欲を高める, ■企業も「特定技能2号」に熱視線, ■日本は「選ばれない国」になったのか, ■日本は「差別の少ない」国

■日本は「差別の少ない」国

 なぜ、多くの外国人労働者が日本で働き続けることを望むのか。

 シンプルな理由としてまず挙げられるのが、賃金だろう。杠さんも、「日本で働いて得られる報酬が、希望する額を上回っていることが、大きい」と話す。

 アンケートで「就職先を選ぶ時に重視するポイントは」(複数回答)と尋ねると、「給料」は64.6%、「仕事内容・職種」は53.6%、「勤務地」は52.5%。ちなみに「残業が少ない」は14.6%だった。

 欧米に比べて、日本が人種差別が少ない国であることも「理由のひとつでは」と語るのは、中国の大学生を日本の企業に紹介してきた一般社団法人・高度外国人材支援センター代表理事の琴安国(こと・あんこく)さんだ。

「欧米では中国人への露骨な差別が、いまだに珍しくない。言葉の嫌がらせだけではなく、身の危険を感じることもある。特にコロナ禍でのヘイトクライムについては、多くの人が報道などで知っている。日本は差別が少ない国だというのは、中国人の間では共通認識です」(琴さん)

 日本で在留資格を取得して働くことを選択し、生活の基盤を日本に置く。そんな選択をする外国人が増えるのは、世界情勢を鑑みれば、当然のことかもしれない。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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