道路陥没で続く悪臭の影響は?「補償が不十分」との声も 自衛隊機が落ちたため池では住民が再発防止を訴え

2025年2月28日に撮影した埼玉県八潮市の県道が陥没した現場(左)と、復旧工事が今も続いている2025年12月の様子(右)=共同通信社ヘリから
埼玉県八潮市で県道が陥没し、トラック運転手が亡くなった事故からまもなく1年。昨年、メディアに大きく取り上げられたニュースの現場はどうなっているのか。今回は、道路陥没事故と、愛知県犬山市のため池に航空自衛隊の練習機が墜落し、乗員2人が死亡した事故の「その後」を追った。(共同通信=中田久美子、森清太朗【道路陥没事故】、名古屋編集部・諏訪圭亮【自衛隊機墜落】)

埼玉県が開いた住民説明会で専門家の説明を聴く参加者=2025年11月、八潮市
▽続く復旧工事、遠い日常
埼玉県八潮市で昨年1月28日、県道が突然陥没し、トラックが転落する事故が発生した。地中にあった下水道管の腐食が原因とみられ、穴は次第に拡大。国が各自治体に下水道管の一斉調査を要請する事態に発展した。現場では今も大規模な復旧工事が続き、付近には下水の悪臭が漂う。健康被害を訴える住民も多く、日常生活を取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。
「夜中に目が覚めてしまうくらい臭う」。11月23日、埼玉県が八潮市で開いた住民説明会で、陥没現場近くに住む50代女性はこう訴えた。
集まった約90人からは健康への悪影響を懸念する声が続出。登壇した専門家は悪臭の要因となっている硫化水素について「低濃度で直接的な健康被害はない」と強調したが、住民らは健康診断やさらなる調査を求め、不安は払拭されなかった。
県は2025年度内に道路の仮復旧を目指すが、下水道管を増設する複線化などの対策工事には5~7年を要すると見込んでおり、住民の不自由な生活は当面続く。
事故の補償について、県は周辺の419世帯を対象に単身世帯で5万円、さらに家族が1人増えるごとに2万円を一律で支払うと決めた。他にも、悪臭で窓を開けられずエアコンなどを使った場合の電気代や、家屋の修復費用も補償。八潮市も477世帯に一律3万円の見舞金を支給する。
ただ住民側からは「補償が不十分」との声も上がっている。大野元裕知事は11月21日の定例記者会見で「健康被害など新たな相談がある場合は真摯に対応していく」と説明。県担当者も取材に「医師が因果関係を認めれば、医療費なども補償する方針だ」と話す。
事故からもうすぐ1年。住民の長谷田忠夫さん(84)は陥没現場を避け、遠回りに歩いて病院や銀行へ向かう日々に疲労をにじませ「生活の不便は続いている。県は今後も住民の声を聞いて対応してほしい」と語った。
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◎埼玉・八潮の道路陥没事故
昨年1月28日午前9時50分ごろ、埼玉県八潮市の県道が陥没した。転落したトラックの男性運転手(74)=千葉県八街市=の救助は下水や土砂に阻まれ難航。男性は5月2日、下水道管内で見つかり死亡が確認された。

2025年8月15日、愛知県犬山市の入鹿池から引き揚げられた、墜落した空自T4練習機の一部とみられるもの
▽捜索4カ月、影響大きく
愛知県犬山市の農業用ため池「入鹿池」で昨年5月、航空自衛隊新田原基地(宮崎県)所属のT4練習機が墜落し、乗員2人が死亡した。池周辺の貸しボート店は事故後4カ月以上休業して自衛隊の捜索に協力。10月に営業を再開したものの、客足の戻りは鈍い。周辺地域の稲作への影響は確認されなかったが、住民は「市街地に落ちていたら、どうなったか。二度と事故が起きてほしくない」と再発防止を訴えた。
入鹿池は周辺自治体の田んぼ約570ヘクタールに農業用水を供給する他、ブラックバスやワカサギ釣りの名所として知られる。5月14日の事故発生後、防衛省は8月から機体の引き揚げを始め、9月末に終了した。空自はエンジン2基や主翼、胴体の一部を回収し、事故原因を調べている。
釣り用貸しボートを扱う7店舗は自衛隊にボートや休憩場所を提供。池の水質などに異常がないことを確認し、営業を再開したが、ボート組合の中村直人組合長(62)によると、釣り客は例年と比べ半減している。客から「機体の引き揚げは続いているのか」と聞かれることもあると言い、中村組合長は「風評被害の影響があるのでは」と肩を落とす。
事故のため燃料の一部が漏れ、オイルフェンスを設置するなど対策を重ねた。池を管理する土地改良区の担当者は「水質に問題はなく、例年通り配水し、コメ作りに影響はなかった」とほっとした口ぶりだった。
現場周辺には二つの空自基地があり、今も自衛隊機の飛行が続く。池は山あいにあるが、数キロ先から市街地が広がり、犬山市の原欣伸市長は10月、市役所を訪れた中谷元・防衛相=当時=に厳しい表情で再発防止を要請した。市内に住む40代女性は亡くなった隊員を悼みつつ「これまで考えてもいなかったが、大きなリスクがあると痛感した。墜落原因をしっかり調べ、決して事故がないようにしてほしい」と力を込めた。
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◎愛知の空自機墜落事故
昨年5月14日午後3時6分ごろ、航空自衛隊小牧基地(愛知県)から所属先の新田原基地(宮崎県)に向け離陸したT4練習機が、直後に高度約1400メートルから急降下し愛知県犬山市のため池「入鹿池」に墜落した。乗っていた井岡拓路1等空尉=当時(31)、特別昇任で3等空佐=と網谷奨太2等空尉=当時(29)、同1等空尉=が死亡した。

入鹿池のほとりで取材に応じる中村直人さん=2025年11月、愛知県犬山市