【特集】2025年度入試で開花、「国公立コース」6年の指導…桜美林
桜美林中学校・高等学校 (東京都町田市)は、2019年度から高校に「国公立コース」を開設し、文系・理系両方の学力を高めるカリキュラムを進めてきた。生徒が互いに 切(せっ)磋(さ)琢(たく)磨(ま) する学習環境が整い、新コース誕生の年に中学に入学したこの学年の生徒は、25年度の大学入試で過去最高の合格実績を達成した。学年主任を中高6年間務めた竹村泰典教諭と、進路指導部で英語科の秦純一教諭に国公立コースで行ってきた指導のポイントを聞いた。また卒業生3人に桜美林での日々を振り返ってもらった。
生徒の興味・関心を抱かせる工夫にあふれた授業

学年主任を中高6年間務めた竹村教諭(左)と進路指導部で英語科の秦教諭
同校の中学課程は3年間、全員同じカリキュラムを学ぶ。竹村教諭は「中学は基礎学力の定着と生活習慣をつけることを重視しています。ただ、勉強ができれば良いというわけではありません。話を聞く姿勢や相手の立場になって物事を考えることを身につけることにも注力します」と語る。
また、生徒の興味関心を引き出すことも大事だと強調する。「好きなことを探究する中で、やりたいことが見えてくる。そのために勉強を頑張れるというのが理想です。総合学習や探究の授業は興味関心を引き出す一つの手段であり、学年全体で取り組む作品づくりでもあります。中学校では自分たちが通学する地域を世界に紹介する日本語・英語版の冊子『わが町タウンマップ』を作り、市長への表敬訪問を行いました」
中3の12月に「国公立コース」への進学希望をとり、3学期の実力試験で決定する。例年は中学4クラスの中から5〜10人が進むが、中学で6クラス編成だったこの学年からは15人が国公立コースへ進んだ。
高1では文理に分かれず、8科目をバランスよく学習しながら、自らの将来の進路、興味・関心の方向性を見極めさせる。各科目の学びは深く、教科書の枠を超えることもよくある、と秦教諭は語る。「例えば英語の授業でキューバ危機を学びましたが、ケネディ大統領の演説を単なる語学教材として読むのではありません。なぜキューバが核ミサイル基地を建設しようとしたのか。どのようにしてアメリカはその事実を知り、ケネディ大統領は核戦争を防ぐため、どのように対処したのかを英語で深く学びます。高1には難しいでしょうが、調べた情報は知識となって生徒に蓄積していく。総合力が試される難関大学の入試では、この知識と経験が生きるのです」
学期末、定期試験終了から長期休暇に入るまでの間には特別授業を行う。「この学年では数学の授業でプレゼンテーションを行ったり、多様性についてディスカッションしたり、教科横断の多彩なテーマで授業を行いました。知識を一方的に伝えても自主性は育まれないので、各科目の先生がそれぞれ趣向を凝らしてくれていましたね」
高2からは文系・理系に分かれ、大学入学共通テスト・国公立大2次試験へ向けた授業を実施する。特に高3では、定期的にガイダンスを行うなど、生徒一人一人に対し、きめ細かなサポートをする。
夢や興味が大きく育つ中高の学園生活

微生物の研究を突き詰めたいと語る林君
「国公立コース」からの卒業生で、東京大学理科1類に通う林太一君は、小学校の頃に読んだ漫画がきっかけで微生物に興味を持ち、高2の探究活動では「微生物燃料電池の電極開発」という論文を書き、高く評価されて、桜美林大学の講堂で全生徒を前に発表も行った。
「微生物の研究を突き詰めたいと思い、最初は大学入試でも、この探究テーマを基にして総合型選抜に挑戦しようと考えていました。でも秦先生や進路指導の先生から総合型選抜の難しさを教えてもらい、一般入試に絞りました。早い時期に切り替えられたので、本当に良かったです」
今は中高の6年間で培ったキリスト教の教えが役に立っているという。「大学には外国から来た留学生や、ユニークな考えを持つ人がたくさんいます。日本の常識とは外れた行動があっても、まずは相手の考えを理解し、受け入れようと思えます。これは桜美林で成長したおかげです」

長岡君は「パイロットになるのが夢」という
幼い頃からパイロットになるのが夢という長岡宏一君は、東京科学大学工学部に進学した。中高の6年間は、部活には所属せず、興味を突き詰める学園生活を送ったという。「探究では、シミュレーションソフトウェアを用いて滑空距離と燃費を比較し、航空機の飛行特性を調べました。コロナの時期は時間があったので、『スケッチアップ』という3Dモデリングソフトウェアで建物をつくるのにハマりました。そのほかにも、電化製品の仕組みや車のエンジンの構造など調べるのが大好きでした」
授業での課題や、礼拝での説教の感想をつづる日々の習慣が、大学生になった今も役に立っているという。「6年間、A5サイズの礼拝ノートに感想を書き続けた結果、文章力がつきました。大学のレポートが三つ四つ重なっても苦ではありません。日々の課題を計画的に進める習慣がついたことは、私にとっての宝物です」
仲間と切磋琢磨する自習室

自習室を「自分の勉強部屋」にしていたという野村さん
千葉大学薬学部に合格した野村 美(み)月(つき) さんは、国公立コース専用の自習室を「自分の勉強部屋」にしていたという。「高校から入学した友人との出会いが私を大きく変えてくれました。この友人は毎日自習室を利用していて、途中から私も交ぜてもらいました。部活のある日は1〜2時間、ない日は3〜4時間自習室で勉強しました。一緒に頑張る仲間がいることがやる気につながりました」
「コロナ禍があって、『学校に行き、毎日友人と会うことは当たり前じゃない』と気づいてから、友達と会う時間を大切にするようになりました」と言う。放課後の自習室の輪は徐々に広がり、林君、長岡君も参加するようになった。「多い日は30人くらいが自習室を利用していました。わからない問題があれば教えあい、お互いが刺激を受けながら学力を高められたと思います」
竹村教諭は、「勉強を強制するのではなく、生徒の好きを見つける手伝いをするのが私たちの仕事です。生徒が困った時には支えるし、心細くなった時は背中を押す。常に生徒が中心にいて、周りでサポートするのが教員という考えです」と話す。
そして、今後取り組みたい課題として竹村教諭は「生徒の頑張りを伝えていくこと」を挙げた。「国公立コースに限らず、素晴らしい結果を残した卒業生がたくさんいます。こうした成果を多くの人に知ってもらえる機会を設けたいと考えています」と抱負を語った。
(文:安達悠 写真:中学受験サポート 一部写真提供:桜美林中学校・高等学校)
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