「高齢になったら痩せないで」目指すは健康的なふくよかさ 瘦せ形は死亡リスク高く

高齢者に「太る心配よりも痩せへの対策に重きを置いてほしい」と訴える栄養士の中村悠乃さん(田中万紀撮影)
〝痩せ信仰〟が強いといわれる日本人。「太ることは不健康」とダイエットに励む人もいるが、高齢になれば、むしろ痩せているほうが死亡リスクが高くなるという。意識を切り替え、健康的なふくよかさを目指したい。
「みなさま、瘦せているイコール健康だと思っていませんか?」
埼玉県のスポーツクラブで3月下旬に開かれた高齢者向けの健康セミナー。講師の管理栄養士、中村悠乃さん(31)は、「肥満対策から痩せ対策に180度かじを切らなければなりません」と言葉を継いで呼びかけた。
痩せているか太っているかの目安となるのが、体格指数(BMI)だ。体重(キロ)を身長(メートル)で2回割って計算する。
病気になりにくいとされる「適正体重」の目安は、BMI18・5~25未満の間。18・5未満だと「痩せている」と判定される。ところが-。
「それは60歳未満の分析に基づく目安。65歳以上の高齢者はBMI21・5未満でも痩せすぎとなります」
全国で在宅療養支援診療所を運営する「悠翔会」理事長の佐々木淳医師(51)は、そう警鐘を鳴らす。
軽度肥満でも死亡リスク上がらず
実際、65歳以上の場合、痩せていると死亡リスクが上がる傾向がある。BMI18・5~20未満だと、死亡リスクは「軽度肥満」(25~30未満)を上回り、17未満になると、さらに跳ね上がる。むしろ「軽度肥満」のほうが、「適正体重」の20~23未満よりわずかに死亡リスクが低くなり、さらに男性だと「肥満」(30以上)になっても死亡リスクは上がらない。
佐々木さんらの調査によると、在宅高齢者が緊急入院する原因の約50%が肺炎と骨折。そして「どちらも低体重や低栄養による筋肉量の減少が大きな要因です」。高齢者の場合、肥満よりも痩せているほうが、健康を害するリスクが高いと説く。
好きなものを食べたいだけ食べる
65歳以上の人が健康維持の目安とするBMIは、21・5~24・9の間だ。高齢になると食が細くなり、体重が落ちてしまうこともあるが、健康のためには「何よりも、食事の量を食べることが大事」と佐々木さん。「食べ過ぎや栄養バランスを気にするよりも、体重と筋肉量を維持することを意識して、カロリーとタンパク質をとるように心がけてください」

食が細くなっている場合は、「いつもの食事に〝ちょい足し〟するといいですよ」と管理栄養士の中村さん。朝食のトーストにはチーズやベーコンを、昼食の冷凍グラタンには豆腐をのせたり粉チーズをかけたりして、タンパク質をとるように心掛けるといいという。
高齢になるほど減りがちな脂質も、工夫して摂取したい。みそ汁にオリーブオイルを数滴たらしたり、サラダのドレッシングをノンオイルタイプからオイルベースのものやマヨネーズに変更したりすれば、手軽にとることができる。
一度にたくさん食べられない人は、食事を数回に分けたり、積極的におやつをとったりしよう。「おやつにはカロリーの高いチョコレートやアイスクリームなどを。甘いものが苦手な人はチーズやナッツでも」。意外なことに、体に悪いと思われがちなファストフードは、高タンパク高カロリーなので高齢者の食事には向いているのだとか。

「好きなものを食べたいだけ食べましょう。そのうえで近所を散歩するなどして体を動かし、社会とのつながりを保つことが、健康で長生きする秘訣(ひけつ)です」と佐々木さんは勧めている。(田中万紀)