一般家庭の省エネと脱炭素化、カギを握るのは「もう隠さない」最先端の住宅分電盤

一般家庭の省エネと脱炭素化、カギを握るのは「もう隠さない」最先端の住宅分電盤
写真提供:パナソニック スイッチギアシステムズ
<脱炭素化に向けて必須となる住宅のエネルギーマネジメント。新たな省エネ基準「GX ZEH」運用も迫るなか、その推進に役立つのが、HEMS対応住宅分電盤「FLEXIID smart(フレキシード・スマート)」だ>
日本政府が2050年までの達成を目指すカーボンニュートラル。日本のCO₂排出量の15%を占める家庭部門については、2030年までの66%削減(2013年比)が目標に掲げられている。
その一環として、2025年4月にはすべての新築住宅・建築物における省エネ基準適合を義務化。2030年には、新築住宅の省エネ基準がZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準に引き上げられることが決まっている。
この取り組みを加速させるべく、2027年4月からは新たな省エネ基準である「GX ZEH(グリーン・トランスフォーメーション・ゼッチ)」の運用もスタートする。
住宅の年間の一次エネルギー消費量をゼロとするZEHに対し、GX ZEHではさらなる省エネ性能の向上に加え、太陽光発電パネルや蓄電池の設置、それらと連携したHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)による効率的なエネルギーの制御が必須となる。
こうした家庭の脱炭素化を推進するために、何が必要になってくるのか。
パナソニックが今年4月に発売する「FLEXIID smart(フレキシード・スマート)」は、昨年発売された同社の住宅分電盤「FLEXIID」シリーズの最新モデル。1月に行われた製品発表会では、パナソニック スイッチギアシステムズの井田瑞人社長が「日本の住宅におけるGX ZEHの『当たり前化』を推進すべく、従来品の機能やデザインを刷新したもの」と、同製品を紹介した。

製品発表会で登壇した井田瑞人社長。パナソニック スイッチギアシステムズは住宅分電盤や電設盤、ブレーカーなど、パナソニックグループの電路事業を担う 写真:西田嘉孝
GX ZEHが求める「高度エネルギーマネジメント」の必要性
「新たな省エネ基準であるGX ZEHにおいて求められるのは、再生可能エネルギーの発電量把握や住宅内設備の制御、蓄電池の充放電管理といった、高度なエネルギーマネジメント。そのために必要なHEMS機器と連携できるHEMS対応住宅分電盤の重要性が、住宅市場において今後ますます高まっていきます」
井田社長の言うHEMSとは、住宅のエネルギー使用状況を「見える化」し、設備を効率的に制御するシステムのこと。「FLEXIID smart」は、このHEMSとの連携を前提とした性能を標準で搭載し、最大43回路までの電流計測が可能だ。この性能により、パナソニックのHEMS機器「AiSEG3」などと連携することで、家庭での使用電力の見える化と効率的な省エネ管理をより実現しやすくなるという。

パナソニックのHEMS機器「AiSEG3」では、エアコンや照明などの機器の遠隔管理や電力消費量に応じた自動制御などが可能 写真:西田嘉孝
また、現場の技術者不足に配慮した施工性の高さも、「FLEXIID smart」の特徴だ。住宅業界は現在、第二種電気工事士の人手不足という問題に直面している。
「電気工事士の数は2015年頃から減少傾向となっており、2020年以降は現場で必要な人員の数を下回っている状況です」と、井田社長は説明する。
「高齢層の退職や入職者の減少に加え、2024年4月からは建設業においても時間外労働の上限規制が適用され、現場の職人不足やそれに伴う工期の延長などが課題となっています。そのため電気工事の現場では作業効率がますます重要になり、施工性に配慮した製品がこれまで以上に求められているのです」
その点、「FLEXIID smart」には、現場作業を効率化するための細かな工夫がなされている。やや専門的になるが、そのうちの一つが、「1階キッチン」「リビング照明」といった負荷名称(回路名称)の表示が分電盤のカバーではなく本体側に残る設計だ。
従来製品では表示のボックス(ラベル)がカバー側にあり、カバーを外しての作業時には都度カバーの表示を確認するストレスがあった。今回の設計ではそうしたストレスが取り除かれ、スムーズに作業ができるうえ確認ミスによる誤配線も防ぐことができる。

従来製品では負荷名称の表示ボックスが外したカバー側についていた 写真:西田嘉孝

「FLEXIID smart」では負荷名称の表示ボックスを本体側に残す設計に。施工性の向上に加えミスの防止も期待できる 写真:西田嘉孝
また、カバーを水平方向に脱着できる設計で狭い空間での作業も簡単に。配線孔スペースの拡大やボックス形状の最適化により、ケーブルの取り回しやアクセス性も向上させた。さらには標準搭載の計測アダプタと分岐電流センサにより、CT(交流器)不要で電圧計測設定が自動化されるため、配線工事も設定も大きく省力化できる。

パナソニックのデザイン思想である「Archi Design」で設計された「FLEXIID smart」。主張しないデザインで、リビングなどの住空間にも美しく溶け込む 写真提供:パナソニック スイッチギアシステムズ
「隠すもの」から「魅せるもの」へ。デザインの革新
そしてデザイン面においても、「FLEXIID」シリーズは従来の住宅分電盤の概念を覆そうとしている。
これまで住宅分電盤は脱衣所や廊下の隅といった目立たない場所に設置されるのが一般的だった。しかし住宅機能の複雑化などに伴う回路数の増加やHEMS機器の追加などにより、分電盤のサイズは年々大きくなっている。
結果として設置スペースを十分に確保できないケースも増え、「リビングやダイニングなど、住空間に調和できるデザイン性が求められるようになっています」と、井田社長は語る。
「FLEXIID」シリーズでは、パナソニックの共通デザイン思想である「Archi Design(アーキデザイン)」を導入。水平垂直を基調としたフォルムや、業界最薄クラスとなる厚さ100ミリのシンプルなデザイン、天井面や壁面に隙間なくぴったりと配置できる設計など、空間に美しく収まる配慮がなされている。

設置場所を選ばない「FLEXIID smart」。天井面や壁面などにぴったりと設置することも可能だ 写真提供:パナソニック スイッチギアシステムズ
「表面にはマットで上質な質感を表現する特殊なシボ加工も施され、家具や壁などにも自然に調和します。フレキシードは、住宅分電盤をこれまでの『隠すもの』から『魅せるもの』へと進化させた製品なのです」
パナソニック スイッチギアシステムズでは、2030年までにHEMS対応住宅分電盤の販売数量を、2025年度比で約2倍となる年間10万面まで拡大する目標を掲げる。2027年度にはインテリアの選択肢を広げるブラックカラーの展開も予定。それらすべての住宅分電盤は同社の瀬戸工場(愛知県)において、最先端の生産ラインと技術者による手組みの組み合わせによって製造される。

瀬戸工場での組み立て風景。「FLEXIID」シリーズなどの住宅分電盤は、熟練の技術者の手で一面ずつ組み立てられていく 写真:西田嘉孝

同じく瀬戸工場での検査風景。最新のITも使いつつ、出荷前の最終チェックなど重要な部分は現在も人の手と目で行われる 写真:西田嘉孝
住宅分電盤の国内シェアナンバーワンを誇る同社が、昨年90周年を迎えるにあたり打ち出したスローガンが「電気の安心をずっと。未来への挑戦をもっと」。その存在は地味であるものの、エネルギー制御の司令塔として大きな役割を果たすHEMS対応住宅分電盤が、日本の家庭の脱炭素化を推進する。

日本の住宅で最初期に使用されていた同工場製の陶器製ブレーカー。住宅分電盤や電設盤など、パナソニックは日本のブレーカーの進化を担ってきた 写真:西田嘉孝

日本における住宅分電盤の変遷。工場内では同社の電路事業などにまつわる数々の展示も見ることができる 写真:西田嘉孝
西田嘉孝