「森友問題」文書開示で見えてきた、衝撃の新事実…改ざんを指示する財務省の「なまなましいやり取り」

安倍路線を継ぐ高市政権が幕引きを図ろうとしている、国家中枢がついた嘘。昨年から始まった文書開示で「衝撃の新事実」が判明した!

自民党が残した未解決問題

高市・自民圧勝の選挙だった。しかし、その足元には、いまだ検証されていない深刻な問題が横たわっている。

「森友問題」だ。奇しくも総選挙投票日の2月8日、発覚から9年を迎えたが、真相解明は道半ばだ。問題は「安倍一強」のもと起こった。その安倍路線を色濃く引き継ぐのが高市政権だ。総理が万能感に浸るいま、検証の意味はいっそう重みを増している。

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森友問題をめぐる膨大な関連文書の開示が、昨年4月から2ヵ月ごとに行われている。これまでに9万ページ近くが公表され、最終的に17万ページを超えるという。その中には問題の深層に迫る新情報が数多く含まれていた。その一つとして、国家が不正を隠すためにどれほどのウソをついたのかを決定的に示す文書に、今回行き当たった。

まずは、問題を振り返ろう。

森友学園の小学校用地として、国有地が8億円以上も値引きされ、1億3400万円で売り払われた。名誉校長が時の安倍晋三総理の妻・昭恵さんだったことから、政治問題に発展。値引きが発覚した'17年2月、安倍総理は国会で昭恵さんとの関係を追及され、「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と言い切った。その後、取引文書の改竄が始まり、昭恵さんの名前はすべて消された。

杜撰極まりないこの取引に、会計検査院(以下、検査院)が検査に乗り出す。検査院は、内閣から独立した憲法上の機関で、政府から距離を保つことで、国の財政をチェックする役割を担っている。

ところが財務省は検査院にウソの説明をつき通した上、問題の土地を管理する国土交通省にも同じウソをつくよう「口裏合わせ」を行った。そのやり取りが、9年の時を経て今回初めて明らかになった。

財務省と会計検査院の生々しいやり取り

検査院が近畿財務局に臨時の検査に入ったのは同年4月。その際、財務局は財務省本省と相談の上、改竄した後の文書を提出した。ところが、この時点で、財務省の説明は省内だけでは完結しなくなる。土地を管理する国土交通省大阪航空局が改竄前の正しい文書を検査院に出していたからだ。

その矛盾に気付いた検査院は近畿財務局に説明を求める。回答次第では、改竄の事実そのものが露見しかねない。

すると同年5月22日、本省から近畿財務局に、検査院への回答内容を指示する一通のメールが届いたのだった―。

本省から近畿財務局に送られたメール。国交省との口裏合わせがうかがえる

《本事案の対応について、国交省と以下のとおり回答することで、調整しましたので、ご対応方お願いします。

●近畿財務局の回答≪案≫

(国交省にも)確認したところ、(内容は分らないが)お話を伺う限りは、国交省より提出した資料は、最終確定前のドラフト版(廃棄済)ではないかと思われる。なお、事実関係については、国交省に確認されたい。

●航空局の回答≪案≫

近畿財務局より、■■■〈筆者注・黒塗り〉と聞いた。国交省でも確認したところ、国会の関係で文書の管理が不十分であり、古い書類が送付されたものである》

本省は、国交省大阪航空局に「最終確定前の文書を誤って提出してしまった」と答えさせ、財務省と同一の虚偽説明を行うよう「調整」した。つまり、二つの省庁が歩調を合わせ、検査院に対しウソの説明を行ったのだ。

行政が検査院にウソをつく意味は重い。その重大さゆえに、検査院法は求めに応じて正しい書類を提出しなかった職員への懲戒処分を要求することができると定めている。

このとき近畿財務局で検査院に応対していたのが、改竄に巻き込まれ、後に命を絶った赤木俊夫さんだった。

赤木俊夫さんと8億円

一連の文書開示では、検査院との生々しいやり取りを記した赤木さんの手書きノートも明らかになった。そこには、大幅な値引きをめぐり、検査院が赤木さんを厳しく追及する様子が記されていた。

《どういう見方をしても基準上は(売却額が)1億3千万になりえなかった。どこの規定で「8億を差し引く」と読めるのか。そういう規定はない》、《なぜ価格に反映させなければならないのか。8億は引き過ぎ》

検査院は根拠となる資料を出すよう繰り返し求める。

《通達等の文書に基づき丁寧に説明してほしい》

《主任検査係として書類だけでもめくらせてほしい》

それでも「資料はない」と突っぱねる財務局に検査院は不信感を募らせた。

《本来は作成しなければならないもの。うがった見方をすれば、あえて作成していないのか?と思える》

《答えられないものがあるのか?裏があるのか?》

検査院は、組織的な「証拠隠し」を強く疑っていた。疑いはまさに正しく、財務省がどういう方針で検査に臨んでいたか、赤木さんは遺書で次のように告発している。

《本省から財務局に以下の対応の指示がありました。

●資料は最小限とする

●できるだけ資料を示さない

●検査院には法律相談関係の検討資料は「ない」と説明する》

検査院に虚偽の説明を行えという指示はさぞ苦しかっただろう。当時の胸中をうかがわせるメモも手書きのノートにあった。

赤木さんのメモには刑法の条項が書きこまれていた

《刑法258条》。そのそばに《刑訴法239条》の記載もある。前者は、公文書を破棄したり隠したりした場合の罪を定めた条文で、罰則は最長で7年の拘禁刑と極めて重い。後者は公務員が職務上犯罪を知ったら告発しなければならないと定めた刑事訴訟法の規定だ。俊夫さんは自ら改竄を告発するか迷っていたのだろう。結局彼が告発した場所は、遺書だった。

国の財政を預かる「最強」官庁が、国家の検証機能を否定してまで、検査院に改竄後のニセ文書を提出し、口裏合わせでウソをつき通した責任は重い。

後編記事『「森友問題文書」石破政権下で開示に踏み切ったものの、高市政権で逆戻りのおそれ……幕引きをはかれば日本は「闇の時代」へ』へ続く

相澤冬樹(あいざわ・ふゆき) /ジャーナリスト、元NHK記者。'62年、宮崎県生まれ。'87年、NHK入局。大阪放送局で森友事件を発生直後から追い続け、数々の特ダネをつかむ。'18年にNHKを退職し、大阪日日新聞で論説委員・記者を務めた。'21年からフリー。著書に『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』など

「週刊現代」2026年3月2日号より