高市首相のメンツが原因?「予算強行突破」の泥沼

衆院予算委員会で質問を聞く高市早苗首相(右)。その表情には疲れと苛立ちが垣間見える(写真:時事)

特別国会での最重優先課題である2026年度予算案。これをめぐる与野党の攻防が3月13日、最大のヤマ場を迎えた。

【写真あり】高市首相のメンツを懸けた強行突破はなぜ頓挫しそう? シナリオを狂わせた張本人とは?

高市早苗首相が「自らのメンツもかけて、予算年度内成立に猛進している」(自民党幹部)ことを受け、与党は“強行突破”による同日中の予算案衆院通過を図る方針。ただ、野党各党の反発で、与党少数の参院での予算審議は混乱必至だ。

結果的に、高市首相の意に反して「一定期間の暫定予算の編成を余儀なくされるという“落とし穴“にはまる可能性」(自民党の国会対策関係者)も否定できない。

審議日程をめぐって混迷の度合いが増す国会

高市首相は、泥沼の状況に陥りつつあるアメリカ・イスラエルとイランの武力衝突に伴う原油価格の高騰を引き金とする国民生活への悪影響を最小限にとどめるためにも、「予算の年度内成立が必須」と主張する。

しかし、参院側は与党も含めて「予算案が不正常な形で参院に送付された場合、衆院と同様の審議短縮は困難との立場」(自民党参院幹部)。週明け16日からの参院予算委員会での基本的質疑(3日間)開始も流動的で、19日に予定される日米首脳会談のための訪米前の質疑終了も見通せない状況だ。

高市首相の強い指示を踏まえて、与党側は13日の衆院予算委と、これに続く衆院本会議での予算案の可決・衆院通過を目指している。これに対し、野党4党は12日夜に「職権乱用」を理由に坂本哲志予算委員長の解任決議案を提出した。その結果、13日午前に開会予定だった衆院予算委の締めくくり質疑は午後1時からの解任決議案否決後に先送りとなった。

与党は同日午後に衆院予算委を開会。「60時間以上の審議時間」を確保したうえで、同夜中に予算案を衆院通過させる方針だ。

ただ、参院側が深夜に議院運営委員会や予算委で与野党協議を実施できるか、なお流動的。協議が週明けに先送りとなれば、与党が目指す16日からの基本的質疑の開始は「手続き上も困難」(参院議運委関係者)となる。

その場合、高市首相の訪米前に3日間の基本的質疑を消化できず、帰国後の23日以降に持ち越しとなる。そのため、「参院での審議時間が確保できず、年度内成立は断念せざるをえない事態」(参院自民党の国対関係者)に陥ってしまう。

13日の衆院通過により、予算は4月11日に自然成立するが、これまでの慣例で参院側は同月10日までに予算案を可決することが確実視されている。政府・与党はこれも踏まえて、年度末に10日間程度の暫定予算案を国会に提出し、ほかの日切れ法案とともに処理することになる。

これに関して、野党側は「暫定予算に原油高騰対策や高校無償化対策なども盛り込むことで、国民生活への悪影響は一定程度回避できる」(中道改革連合幹部)としている。ただ、年度内成立に固執してきた高市首相にとっては「政治的ダメージ」となることは避けられない。

ここにきて、問題発言も相次ぐ高市首相への批判からか、各種世論調査での内閣支持率の下落も目立ち始めている。自民党内でも「予算成立後の重要法案の審議には強硬姿勢は禁物」(国対幹部)との声が広がる。

高市首相の計算を狂わせた国民民主党の変心

玉木雄一郎代表が率いる国民民主党の心変わりが高市首相のシナリオに誤算を生じさせた(写真:ブルームバーグ)

今回の予算案衆院通過をめぐって与野党が全面対決する構図につながったのが、国民民主党の“心変わり”だ。

与党との連携で予算案に賛成の立場だった国民民主党が、与党の強引な国会運営への反発からほかの野党に同調する姿勢に転じた。これが高市首相にとっても「大きな誤算」(官邸筋)となった。

国民民主党の協力によって参議院での予算審議の促進と年度内成立を狙っていた高市首相と与党執行部だが、今のところ、参院で一部の無所属議員を取り込むことによる過半数確保の見通しも立っていない。

同党の玉木雄一郎代表は12日夜にBSフジの番組に出演した際、衆院予算委での与党の対応への反発から「反対の方向での結論になる」と語った。同党は13日午前の幹部会で予算案反対を決めたが、そもそも玉木代表は12日までの自民党との協議で「衆院予算委での審議後、1日を追加して16日の採決なら、われわれも賛成する」と伝えていた。

これを踏まえて、自民党内にも「高市首相がメンツにこだわらなければ、16日の円満衆院通過で、参院審議も円滑に進んだはず」(国対幹部)との“恨み節”も出始めている。

ただ、官邸側は「今さら、衆院通過を遅らせて暫定予算を組むという選択はできない」(首相側近)と態度を変えず、最終的に13日の“強行突破”に突き進むことになったのが実情だ。

高市首相の体調不安も新たな波乱要因に

高市首相は中東諸国の駐日大使らとの会合を急きょ欠席。木原稔官房長官(中央)が対応した(写真:時事)

そうした中、新たな波乱要因になりそうなのが、高市首相の体調不安である。高市首相は12日に中東諸国の駐日大使らとの会合を予定していたが、急きょ欠席することを決め、木原稔官房長官が対応した。政府関係者によると、高市首相に風邪の疑いがあり、医務官の治療を受けたうえで、安静を取ることにしたとされる。

ただ、高市首相は13日午前、首相公邸から徒歩で官邸入りし、閣議に出席。木原官房長官はその後の記者会見で「風邪の疑いがあったため、念のため、休息をとった。すでに体調は回復しており、本日の公務は予定どおり」と説明した。

いずれにしても、体調が完全に回復していなくとも13日の衆院本会議や、それに続く衆院予算委を欠席するわけにはいかない。「首相が欠席した形での締めくくり総括質疑などはありえない」(衆院事務局)だけに、与党内にも「13日午後の高市首相の体調次第では、同日中の予算案衆院通過という日程自体が崩壊しかねない」(自民党長老)との不安もなお残っている。