《ETCの不正通過が252回》お金を払わず高速道路を走り抜ける…無免許の男性(45)が裁判で語った手口と呆れた言い訳《裁判官には「いい質問ですねぇ…」》
裁判ウォッチャーとして知られるお笑い芸人の阿曽山大噴火さんは、東京地裁に通勤定期で通いながら裁判傍聴を続けています。そこで出会うのは「なんでこんなことやっちゃったの?」という事件ばかり! 『バカ裁判傍聴記』(Hanada新書)より一部を抜粋してご紹介します。
無免許、ひき逃げ、ETC不正通過

提供:アフロ
毎日裁判所にいると、罪名が珍しいってだけでその裁判を見たくなってしまうものです。
・罪名 道路整備特別措置法違反、道路交通法違反、無免許運転過失致傷
・被告人 内装工の男性(45)
起訴されたのは3件。
1つ目が、令和7年1月に、被告人が首都高を無免許で車を運転した件。
2つ目が、その時に男性(33)が運転する車に追従して車を走らせ、男性運転の車に衝突して加療2週間のケガを負わせたのに、警察に報告せず逃走した件。
3つ目が、直前にETC機能が付いていない車でETCレーンを通過した件。
無免許運転のひき逃げというだけでなかなか呆れた事件ですが、ETCの不正通過は超レア! 罪名の「道路整備特別措置法違反」はETCの件だったんですね。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は令和3年2月に車を運転中、他の車に衝突して逃走するという事件を起こしたそうです。
警察から出頭命令が出されたのに出頭しなかったので、令和5年に免許取り消しに。しかし被告人は内装業の現場に向かう際、ほぼ毎日運転をしていたという。
そして犯行当日。渋滞していた首都高で、被告人がウトウトしていたところ、被害者運転の車に衝突。無免許がバレると思った被告人はその場を離れ、赤信号を無視して逃走したそうです。
そして、令和5年4月~2年間に252回もETCを不正通過。今回だけじゃない常習犯なんですね。本件の事故の前から警察の出頭命令に従わなかったりして、出鱈目な人物のようです。そして被告人質問。まずは弁護人から。
「免許があろうがなかろうが……」

写真:optimus/イメージマート
弁護人「令和5年4月に運転免許取り消しになったのに、運転してたのはなぜですか?」
被告人「まず1つ、こちらも生活があるもんですからね。内装の仕事は道具も多くて、電車ではムリなんで。それで車に乗りました」
生きるために仕方がなかったんだと力説です。
弁護人「ETCの件ですが、どういう方法で不正通過してたんですか?」
被告人「前の車に追従する、いわゆる“カルガモ”と呼ばれる走り方で、一定の距離ならETCのバーが降りないんです」
先行車を親に見立ててピッタリくっついて走ってたようです。
弁護人「やるようになったきっかけは何ですか?」
被告人「ETCカードがちゃんと入ってなくて、料金の請求書が届いたことがあったんです。あとで払えばいいやってのが最初です」
最初は偶然ETCを通過できてあとで料金を支払った。それがクセになったのか、先通過の後払いを繰り返すようになって、支払いをしなくなってたそうです。
弁護人「首都高以外でもやってたんですか?」
被告人「はい、NEXCO東日本さんや中日本さんです」
ETC不正通過252回というのはあくまでも首都高だけの数字で、実際には他にもやってると。

『バカ裁判傍聴記』より。イラスト:阿曽山大噴火
弁護人「昔、保育士もやってんですよね。保育士のほうは考えてる?」
被告人「別れた妻が保育園を開いてて、籍は置いてますけど、前科はつくし、親御さんにどういう影響があるのかなと、そこが不安で。働けるなら働きたいですね」
いかにも建築関係で働いてる男性といった無骨な感じですが、保育士経験者なのでそっちの仕事も考えてるそうです。続いて検察官から。
検察官「まず衝突事故ですが、居眠りをしてたと?」
被告人「居眠りっていうか仕事が忙しくて疲れてたんでしょうねぇ。一瞬ですよ。一瞬コクっと寝落ちして、ブレーキ踏んだけど間に合わなかったと。疲れてる時に運転しちゃダメってわかってんですけどね」
疲れてる時以前に、免許がなかったら運転しちゃダメなんですけどね。
検察官「寝落ちして事故起こしたのは、無免許運転だったってことと関係してますか?」
被告人「それは~……免許があろうがなかろうが、寝てしまってたんじゃないですか?」
免許の有無と寝落ちに因果関係はないかもしれませんが、被告人が言うとふてぶてしい印象を受けますね。それでも憎めないのは、保育士をやってただけあって人柄の良さかも。
裁判官の質問を高評価

写真:monterosportsjp/イメージマート
検察官「ETCの不正通過の回数聞いて、どう思いますか?」
被告人「どうって言われてもね……。数えてたわけじゃないし、そんなにやってたかー!って他人事みたいですけど、あり得ないなぁと」
他人事だと思っている自分を冷静に客観視している被告人。
検察官「取り調べでね、料金はあとで払えばいいと思ってたと答えてましたよね。たとえばスーパーとかでもそうなんですか。商品を持って店を出てあとで払おうと」
被告人「いやいや、それは万引きじゃないですか! それとこれとは違いますよ。さっき言ったじゃないですか。ETCを偶然通過してあとで払ったのが頭にあったんでね」
事件に対してどこか軽い気持ちでいるような印象。最後は裁判官から。
裁判官「料金を払わなかったのはなぜですか?」
被告人「まぁ、手持ちないんでね」
裁判官「払うお金のアテはあったんですか?」
被告人「無くはないですよ。無くはないけど、ハッキリとあったのかと訊かれるとねぇ~……んまぁ……なんともね、言えないですね……」
裁判官「アテも無いのに、あとで払おうと思ってたんですか?」
被告人「それは~……いい質問ですねぇ……」
裁判官の質問を高評価の被告人。そして、質問に答えないという高等テクニック。
裁判官「請求額は総額いくらなんですか?」
被告人「把握できてないですけど、確定してないところが数十カ所あって」
首都高だけで252回なので、割増料金も含めると百万円単位で請求されそう。
裁判官「今後、免許は再取得するんですか?」
被告人「はい」
裁判官「免許取れるのはいつなんですか?」
被告人「知らないです」
何も知らない被告人。
裁判官「また無免許運転、不正通過しませんかね?」
被告人「する気もないです。車使わない仕事だけにしてますんで」