「次の25年」に予想される五つのイノベーション

これまでの25年間は目まぐるしい技術革新の連続だった。最先端技術は、PDA(携帯情報端末)の「パームパイロット」や折り畳み式携帯電話機からモバイルインターネット、人工知能(AI)、ゲノム配列解析などへと進化してきた。
これからの25年間ではどこへ向かうのだろうか。5人の技術専門家に、次の四半世紀で実現すると思われる大きなイノベーションを一つずつ予測してもらった。
脳で制御するデバイス
キーボードやマウスは忘れよう。米カーネギーメロン大学の生物医学工学教授であるビン・ハー氏は、25年後にはほとんどの人がブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を使って思考でデバイスを操作しているだろうと述べている。こうしたインターフェースは脳の活動を解釈し、人間の意図を、コンピューターが理解できるコマンドに変換できるようになる。
ハー氏は「BCIはスマートフォンのような技術になり、大多数の人が持つようになるだろう」とし、「考えるだけで自分の環境を制御できるようになり、あらゆることがとても便利になる」と語った。
25年後には、何十億人もの人々がBCIを使って、友人へのメッセージ送信や照明の点灯、コーヒーを入れるなど、あらゆることを行うようになるという。
BCIは現在も存在するが、その多くは頭蓋骨に穴を開け、脳が外部デバイスと通信できるように物理的なインターフェースを埋め込む手法に頼っている。ハー氏たちは非侵襲的な(体に傷をつけない)インターフェースを開発したが、これらは不格好で使い心地が悪い。
しかし、あと25年たてば研究者たちはこうしたハードウエアの課題を克服し、将来のインターフェースは現在のワイヤレスイヤホンと同じくらい便利になるとハー氏は考えている。
克服すべき二つ目のハードルは、脳の信号を解読してコンピューターコードに変換するという「ソフトウエアの課題」だ。ハー氏はこちらの方が大きな課題だと考えているが、AIの進歩が開発を加速させ、研究者がますます複雑な思考を解読し、BCIをより洗練されたものにするのに役立つと述べる。
宇宙採掘
米タフツ大学工学部の教授で米電気電子学会(IEEE)フェローのカレン・パネッタ氏は、AIとロボット工学の進歩によって、月や小惑星の資源、さらに最終的には他の惑星にある資源にアクセスできるようになると話す。自律型ロボットが原材料を採掘し、それを使って宇宙ステーションを建設し、深宇宙探査のミッションのための装備ができるようになるという。
このコスト削減は探査にとって恩恵になるとパネッタ氏は言う。「宇宙飛行のコストの多くは打ち上げによるものだ」とし、「宇宙の原材料を活用し、必要なものをその場で組み立てられれば、大量の材料を運搬せずに済むため、使用する燃料が大幅に少なくなる」と語った。
同氏によると、他にも利点がある。大規模な商業宇宙旅行や宇宙ホテルの新たな機会、現在では予測できない方法で地球上の生活を向上させる新発見など、さまざまだという。
地球上で多くのことが起きているのに、なぜ宇宙探査にお金を使うのかとよく尋ねられるが、人々が気づいていないのは、その技術が常に地球に還元され私たちに利益をもたらしているということだとした。
家庭用の人型ロボット
米スティーブンス人工知能研究所(SIAI)の所長であるブレンダン・エングロット氏は、現在の人型ロボットは不器用でとてつもなく高価かもしれないが、さらに25年間の研究を経れば不可欠な家庭用アシスタントに変貌すると述べる。
より洗練されたAIとコンピューティングコストの低下だけでなく、無人航空機や自動運転車向けに開発された低コストの組み込みセンサーからも恩恵を受け、研究は急速に発展している。

キックボクシングの試合に出場した、中国の宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)の人型ロボット。動きはますます「人間」に近づくかもしれない
エングロット氏は「われわれは人型ロボット革命が起こる絶好のタイミングに居合わせている」とし、「25年先を見据えると、こうしたロボットはエイジング・イン・プレイス(住み慣れた所で年を重ねる)の助けになり得る。障害者や個別の在宅ケアを必要とする人を助けられる」と語った。
もちろん、ロボットはどのような形にすることもできるが、人型ロボットには特に家庭内で利点があるとエングロット氏は言う。「私たちは皆、人間のために作られた空間に住んでおり、階段、ドアノブ、引き出しなどは人間が使うためのインターフェースとなっている。家庭内のこれら全ての設備と私たち自身との相互の関係を模倣しようとするなら、人型ロボットは最も明白な解決策だと思う」とした。
それに加えて、人間のように見えるロボットは、例えば話し相手や心の支えといった、介護者に求められるものを提供するのに適している。そのロボットには持ち主が求める特性を与えることもできる。
「こうした新しい人型ロボットに備わる機能によって、テレプレゼンスの革命も想像できる。何百マイルも離れた場所に住む愛する人の化身が、そばにいて世話をしてくれるようになる」とエングロット氏は言う。それは、愛する人に似ていて、その人の声で話す人型ロボットになる。その人がロボットの動作を遠隔操作することも可能になるかもしれない。
民間の気象制御
たとえ世界中の政府が向こう25年間で炭素排出量を削減できたとしても、科学者たちは、すでに蓄積されたダメージがあるため気候ははるかに不安定になると予想している。このことが、民間の気象制御時代の到来を告げる可能性がある。
米コンサルティング会社フューチャー・トゥデイ・ストラテジー・グループ(FTSG)の創業者で最高経営責任者(CEO)のエイミー・ウェブ氏は「25年後には、予測可能で安定した天候はぜいたく品になると思う」とし、「私たちはマイクロクライメイト(局所的気象)を制御する技術を大規模に利用できるようになる」と話す。
基本的な気象制御は現在でも可能だ。中国は以前から、重要なイベントの際に北京上空を青空にするために、雨が北京に到達する前に人工的に雨を降らせるクラウドシーディング(人工降雨)技術を利用してきた。ウェブ氏は、25年後には個々の企業が、限られた狭い地域で気温や降雨量などの気象要素を細かく制御する技術にアクセスできるようになると予想している。例えば、ブドウ園がブドウ栽培の条件を最適化したい場合や、リゾート施設がビーチでの雨を避けたりスキー場で雪を降らせたりしたい場合が当てはまるという。

中国でのクラウドシーディング(人工降雨)作戦の準備
しかしリスクは重大だ。局所的な天候の一時的な変更が、隣接地域やより広範な気候にどのように影響するかは不確実なままだ。ウェブ氏は「これまで地球規模で実施されたことがないので、私たちには分からない」と話す。
核融合による豊富なエネルギー
未来学者で米ノートルダム大学の企業イノベーション教授を務めるマイク・ベクテル氏は、25年後にはクリーンで豊かな新しいエネルギー源である核融合が実現していると考えている。
同氏によると、商業規模の核融合発電はこれまで期待を裏切り続けてきた。「この技術は過去50年にわたり、あと20年で実現するように感じられてきた」
今回がこれまでと違うのは、核融合がついに重要な節目であるネットエネルギーゲイン(正味のエネルギー利得)を達成したことだとベクテル氏は述べる。「管理された実験室環境で、核融合反応を起こすために投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを取り出せるようになった。これは核融合が科学プロジェクトから、エンジニアリングと拡大・成長のプロジェクトへと転換する始まりを意味する」とした。
技術的な課題は依然山積している。核融合発電は太陽などの恒星と同じ原理で機能する。原子同士が融合する際、副産物としてエネルギーが生成される。核融合炉内のプラズマは、カ氏数百万度という超高温に達する。熱の問題に対する解決策は現在存在するが、課題は、規模を拡大し炉を安定して稼働させ続けることにある。
しかし、核融合がより多くの公的および民間資本を引きつけるにつれ、研究者たちはこれらの問題を克服し、2050年までに核融合を商業的に存続可能なエネルギー源にするとベクテル氏は予想している。核分裂とは異なり、核融合は「長寿命の放射性廃棄物を生成しない」と述べ、また化石燃料とは異なり、有限の資源の燃焼や炭素排出を伴わないとした。
気候変動は大きな問題だが、核融合は大規模な淡水化などにも役立つ可能性がある。淡水化は以前から技術的に実行可能だったが、大きなエネルギーを必要としている。ベクテル氏はまた、AI向けデータセンターやビットコインのマイニングといった、大量のエネルギーを必要とするケースにも恩恵があると考えている。豊富でクリーンな新エネルギー源は、エネルギー不足に基づく現在の地政学的前提を覆し、新たなイノベーションの波を引き起こす可能性がある。
ベクテル氏は、開発による影響の幅広さから「AIはよく電気に例えられる」とし、100年単位での比較としては適切だと述べている。だが核融合は、文明にとって重大な転機になるという点では火のようなものになると考えている。