スマホの「充電80%制限」は本末転倒かも…将来のバッテリー劣化を防ぐため「今」を犠牲にする矛盾

私を含め、多くの人が信じているバッテリーに関する豆知識があります。それは「バッテリーの劣化を遅らせるために、バッテリー容量を減らす」というものです。

つまり、「充電を制限する」ということ。スマホやノートパソコンの充電を80〜85%で上限設定するという機能もあり、その背景にある科学的な根拠は本物です。

しかし、ここからが重要なのですが、その論理は破綻していると言わざるを得ません。

バッテリー充電制限の科学的な背景

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まずは、評価すべきところは評価しましょう。

フル充電の状態になると、正極からリチウムがほぼ完全に剥がれ落ち、結晶構造に物理的なストレスがかかります。

たとえるなら、「満員電車に、さらに人を乗せようとしている」といったところでしょうか。

一方、負極の保護膜である「SEI被膜」は充電レベルが高いとより早く厚さを増し、充放電のサイクルごとにリチウムを永久に閉じ込めてしまい、バッテリーの最大容量を少しずつ減らしていくのです。

高い電圧と高温の組み合わせは最悪のシナリオで、そのダメージは蓄積され、あとから元に戻すことはできません

これが、充電を制限する科学的な根拠となります。

もしバッテリーが85%から100%の領域に達しなければ、そこまで熱くならず、電極へのストレスもかからなくなり、劣化のスピードは遅くなるはず。とても筋が通っているように聞こえます。

しかし、ここで実際に提案されている解決策とは「そこまで充電しなければいい」というものです。でも、それは根本的な解決にはなっていません

そもそもスマホは賢く充電を制御している

実のところ、スマホには私たちが容量を諦めなくても済むように、まさにこの問題に対処するためのメカニズムがすでに備わっています

最新のスマートフォンの多くは、AndroidとiOSのどちらにも「バッテリー保護」「バッテリー充電の最適化」といった設定が用意されています。

これらの機能は、スマホがフル充電に近づくにつれて充電速度を落とし、特にダメージを受けやすい最後の段階での発熱を抑えるためにつくられているのです。

さらに、賢い「夜間充電」の機能もあります。これは、スマホが睡眠スケジュールを検知し、起きる直前まで100%に達するのを意図的に遅らせるというものです。

この機能によって、フル充電の状態で何時間も放置されて熱を発生させる事態を防いでくれます

こうしたシステムは、まさに85〜100%の充電帯でのダメージを減らすために存在しています。

充電の最大値を85%に制限することは、これらの機能を補完するどころか、スルーしてしまうようなものなのです。

バッテリーの充電制限が合理的でない理由

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そもそも、なぜ私たちは健康なバッテリーを求めるのでしょうか。それは、より多くの「使える容量」を確保するため。

それなのに充電を制限するということは、将来もっと容量を使えるという約束のために、今の容量を犠牲にしていることになります

3年後にバッテリー容量が85%に減ってしまう可能性を避けるために、毎日、自発的にバッテリーの85%しか使わないことを受け入れているわけです。

これは、おかしな話ではないでしょうか。ひょっとすると到達することすらないかもしれない未来の容量を守るために、何年にもわたって、今日も明日も少なくなった容量で過ごすことに違和感を覚えていないのです。

少し計算してみましょう。1日1回スマホを充電する平均的なユーザーは、1年間にだいたい365回の充電サイクルをこなします。

Appleの公式仕様によれば、iPhone 15は1,000回の完全な充電サイクルを繰り返しても本来の容量の80%を維持するように設計されています

つまり、その基準に達するまでには、毎日充電したとしても約2.7年かかる計算になります。アメリカの平均的なユーザーがスマホを買い替えるまでの期間は、およそ2年半です。

これが意味するのは、充電制限をしていなかったとしても、バッテリーが劣化していることに気づく前に、端末そのものをアップグレードしてしまう可能性が非常に高いということです。

つまり、充電を制限したときに実際にしているのはこういうことです。

「とにかく最初の日から劣化した状態のバッテリーを受け入れます。その見返りとして、いずれスマホを手放す時期が来たころに、少しばかり恩恵を受け取れるかもしれない」というものです。

なお、ここでの議論はあくまでスマートフォンにのみ当てはまります。アルカリ電池や電動工具のバッテリーといったほかの種類のものには、スマホの充電器ほど賢い機能は付属していません。

充電制限がすべて悪いわけではない

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たとえば4〜5年ほどの長いスパンで見るとして、数千回の充電サイクルをこなすような場合、充電を制限したバッテリーは、制限しなかったものに比べて非常に多くの容量を維持するようです。

もし1つのスマホを5年以上使い続けるタイプかつ、バッテリー交換はしないという人なら、最大充電を制限することは本当に役立ちます。

また、再販価値の視点も見てみましょう。特にiPhoneの場合、バッテリーの状態は目に見える数値として表示され、売却時の価格に直接影響を与えます

この特定のケースにおいては、制限をかけることに意味があります。それは「より多くの容量を使いたいから」ではなく、「次の持ち主により高い数値を売るため」にほかなりません。

未来のバッテリーのために「いま」を犠牲にしない

私たちは、一定のバッテリー容量を持つデバイスを購入しました。

その容量は、使われるために存在しています。長期的な保存という名目のもとに毎日その容量を減らすのは、まさに本末転倒です

それよりも、バッテリーを激しく消費するアプリを減らしたり、より優れた純正アプリを活用したり、適切な設定に変更したりすることで、バッテリーの性能を最大限に引き出すほうが建設的でしょう。

充電を制限する必要はありません。常にバッテリーセーバーモードで生活するのもやめましょう。お金を払って手に入れたはずの体験を、最適化のしすぎで自ら手放さないでくださいね。

▼充電もスマートに

著者紹介:Amir Bohlooli

仕事術とクリエイティブ部のセグメントリーダー。現在、薬学博士課程の学生で、臨床アウトカムと薬剤経済学に興味を持つ。父親の趣味に影響を受け、DIYプロジェクトの才能を開花させ、高校生の時に初めてのクワッドコプターを製作。18歳で3Dプリントに関する執筆活動を始め、現在はMUOに寄稿し、生産性、スプレッドシート、写真、音楽などに関する執筆と編集を行っている。

Source: Make Use Of(1, 2, 3), Apple, REVIEWS.org