個人破産が13年ぶり高水準、ハウスメーカー倒産も急増…不動産市況の「不気味な兆候」

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2025年の個人破産件数が13年ぶりに8万件を超えた。一方、長期金利も一時、約29年ぶりとなる2.8%まで上昇している。住宅ローンや貸出金利が上昇局面にあるなか、金融機関の間では個人破産の動向を懸念する声が広がり始めている。その背景には、物価高によって賃上げ効果がかき消され、実質賃金が目減りしている現状がある。さらに、旺盛な住宅需要を支えてきたハウスメーカーでも倒産が急増している。加熱する不動産市況に翻弄される住宅ローン債務者とハウスメーカーの現状について、東京商工リサーチ(TSR)が解説する。(東京商工リサーチ情報本部 小林祐大)
個人破産件数が13年ぶりの高水準に
最高裁の「司法統計年報」によると、2025年の自然人(以下、個人)破産は3年連続で増加し、8万3100件(速報値)に達した。8万件は、2012年の8万2668件以来、13年ぶりの高水準だ。
破産のピークは、消費者金融やヤミ金が大きな社会問題になった2003年の24万2849件で、これに比べると3分の1にすぎない。だが、消費者金融問題が整理されていなかった当時とは件数の意味合いが異なる。
現在は、経営者保証ガイドラインよって、以前と比べて会社の倒産と経営者個人の破産が切り離されるようになり、法人破産と同時に経営者個人も破産するケースは減少している。また、個人向け貸し出しも総量規制などで個人破産リスクが低下している。そうした中での増加だけにインパクトは大きかった。
日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会がまとめた「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産は「単身世帯」で「持ち家ではない」人が、「浪費・遊興費」で過剰債務を抱えて申請する構図が浮かび上がる。個人破産は増えているが、住宅ローンに絡む破産はまだ本格化していなかった。
住宅ローン返済が家計の重荷に
最近になって金融機関の融資担当者は、別の視点から個人破産に注目している。住宅ローンを抱える人の破産リスクに神経をとがらせているのだ。
住宅価格の高騰が続くなか、「さらに値上がりする前に」と焦って購入を決断する人は少なくない。すでに背伸びして住宅を購入した人について、ある融資担当者は「所得に占める住宅ローン返済の比率が高く、生活苦による破産が増える傾向にある」と指摘し、今後も同様のケースが増えることを懸念する。
また、別の金融機関の融資担当者は、「物価上昇を考えずに地元の高価格マンションを購入したものの、実質賃金が目減りして破産寸前に陥っている債務者もいる」と警鐘を鳴らす。
金利や物価上昇を上回る賃上げが実現すれば問題ないが、現実には実質賃金の減少が続いている。住宅ローン返済が家計の重荷となり、生活に苦しむ債務者は水面下で増えているようだ。
金利負担は10年前に比べて3倍のケースも
国土交通省が公表した不動産価格指数は、2010年を「100」とすると、住宅地、戸建住宅、マンション(区分所有)を合わせた住宅総合は、2013年3月まで100を割り込むことが多く、2014年12月まで103台にとどまっていた。
だが、2015年に104に上昇すると、2017年1月110.5、2021年6月120.5、2022年5月130.9、2024年9月140.8、2025年12月148.0と急カーブを描く。現在はさらに上昇しているとみられ、2010年と比較すると単純に不動産価格は1.5倍に上昇している。
住宅金融支援機構の長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の借入金利(最低)をみると、各年3月の金利は、2009年は2.980%だった。その後、低下を続け、2013年は1.990%、2017年は1.120%まで低下した。ところが、2017年を底に、一転して上昇に転じ、2026年3月には2.250%まで上昇した。直近の6月は3.210%と一気に3%台に突入している。
長期金利の急上昇が、住宅ローンに跳ね返っている。仮に、2017年3月と2026年6月で、住宅ローン5000万円、ボーナス返済無し、35年ローンの条件で返済額を単純計算すると、2017年は月返済14.4万円で返済総額は6047万円、利息は1047万円だった。
一方、2026年6月は月返済19.9万円で総返済額は8330万円、利息は3330万円だ。
2017年3月と比べ、月返済は5.5万円多く、返済額は2283万円も多い。金利だけで3倍を超える計算になる。
これだけ不動産価格も金利も上昇すると、購入者は躊躇する。購入予算を引き下げる購入者も増えてくる。この動きがハウスメーカーを直撃する。
ハウスメーカーの倒産が急増
ハウスメーカー(木造住宅)の倒産が急増している。2026年1~5月の累計は98件(前年同期比81.4%増)と、前年同期から2倍近く増加している。資材高騰に人手不足も重なり、建築コストは上昇するが、同業者との競合で簡単には価格転嫁できない。また、新築だけでなく、リノベーション物件との競合も激しさを増している。
1~5月の倒産98件は、過去10年間で最も多い。バブル期の1989年以降でみると、金融危機からITバブル崩壊につながる2004年の172件が最多で、これに比べると現状は半分にとどまる。だが、コロナ禍の2022年から1~5月比較では5年連続で前年を上回っており、明らかに住宅業界を取り巻く環境が悪化している。
2026年1~5月の倒産98件を原因別にみると、販売不振が70件(構成比71.4%)、累積赤字による経営悪化が18件(同18.3%)で、業績不振が大半を占める。また、従業員別では、5人以下が79件(同80.6%)で、小・零細企業への影響が際立っている。
都道府県別では、大阪府、兵庫県、埼玉県が各8件で最多となった。次いで、愛知県が6件、福岡県と神奈川県が各5件で続く。倒産は主に大都市圏で増加している。
もっとも、今後は中東情勢の動向によって、ナフサやシンナーなど化学製品の供給不足や価格上昇が広がる可能性がある。そうなれば、建築資材のさらなる値上がりや納入遅延を招き、工事費の上昇が経営を圧迫する。倒産増加のペースが一段と加速するのは確実だ。
足もとで広がる不動産不況の兆し?
住宅ローンは低金利で、地価も安定し、住環境はバツグン。そんな夢のような時代は、今や懐かしいものとなった。現在は金利上昇に加え、地価の高騰、住宅資材や人件費の上昇が住宅価格に反映され、価格は天井知らずの様相を呈している。マンション市場では、地方都市でも「億ション」が珍しくない状況だ。
こうした状況で不動産を購入するには、予算を増やすか、住宅ローンの返済期間を延ばすか、希望エリアから外れた地域に変更するか、あるいは賃貸に住み続けるか、難しい選択を迫られる。
「いつが買い時なのか…」。そう悩む人が増えれば増えるほど、ハウスメーカーなどの関連業種への影響も広がる。足もとでは、大手企業も例外ではない。マンションや戸建住宅の販売・建設を手がける上場企業の株価は総じて軟調に推移している。
個人破産の増加に加え、ハウスメーカーの倒産も急増している。さらに、景気の先行指標とされる株価も下落基調にある。これらの動きは、不動産不況の前触れなのか。それとも一時的な調整局面にすぎないのか。その答えは、いずれ市場が示すことになるだろう。