北越高校の部活遠征バス事故 「明日はわが身」「うちも同じ状況」現役顧問と保護者が語る「遠征リスク」と不安

■「明日はわが身」と現役顧問, ■貸切バスは高すぎて頼めない, ■食い違う高校とバス会社の説明, ■「バス代高騰」「時間規制」でバス代捻出できない, ■高校もバス会社も「非難できない」, ■最優先すべき「安全」が「グレー」, ■部活で「車出し」経験のある保護者は, ■小さなズレが積み重なった?

 磐越道でマイクロバスが事故を起こし、乗っていた北越高校(新潟市)の男子ソフトテニス部に所属する生徒1人が亡くなった。現役の部活動顧問や保護者に取材すると、予算逼迫に苦慮する部活動「遠征」の危うさが浮かび上がった。

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■「明日はわが身」と現役顧問

 5月6日朝、福島県郡山市の磐越道で事故を起こしたマイクロバスには北越高校の男子ソフトテニス部員20人が乗っており、一人が死亡し、複数人が重傷を負った。

 高校で強豪運動部を指導する顧問は、事故についてこう切り出した。

「ニュースを見た瞬間、胸がざわつきました。部活動顧問や指導者は誰もが不安になったのではないか。私自身、明日はわが身のことのように思っています」

 というのも、「遠征」は多くの部活動にとって、頭の痛い問題だからだ。

■貸切バスは高すぎて頼めない

 この顧問自身が、このゴールデンウィークにワンボックスカーを借りて複数の生徒を乗せ、片道約4時間の道のりを遠征していた。

「貸切バスが理想だとわかっていても、料金が高すぎて頼めない。となると、誰かが運転するほかない。他の学校の部活動も遠征の足に悩んでいるところがほとんどだと思います」(顧問)

 部活動の予算は限られている。大会で勝ち進むほどに、遠征の費用負担は膨らむ。顧問が自らハンドルを握ることが「現実的な選択肢」になってしまう。そして、少なくない部活動が、「同様の選択をしているのでは」と語る。

「都県をまたぐ広域大会には、レギュラー以外の部員も連れていきたい。学校から費用は出ないとなると、保護者に頼むことになってしまう。どこの学校も事情は同じだと思います」(同)

 顧問が運転することは、現状、致し方ないことだと思う。ただ、事故を受けて、一部の送迎を保護者に頼むことについては、気持ちが揺らいでいるとも語った。

「保護者も部活動の送迎について、『万が一の場合』を考えていると思います」(同)

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■食い違う高校とバス会社の説明

 事故を起こしたマイクロバスは、新潟市中央区から福島県富岡町へ向かう途中だった。乗っていた高校ソフトテニス部員は日帰りで遠征する予定で、顧問はマイクロバスを別車両で先導していた。

 マイクロバスは貸切ではなく、「白ナンバー」(営業用ではない自家用車)のレンタカーで、新潟県胎内市在住の68歳の男性が運転していたという。有償で旅客をマイクロバスで運ぶのに必要な「大型2種免許」は持っていなかった。

 プロではないドライバーが白ナンバーのレンタカーで生徒を送迎したことについて、北越高校側と蒲原鉄道の説明は、現在のところ、食い違っている。

■「バス代高騰」「時間規制」でバス代捻出できない

 前出の顧問は「金銭的な事情も背景にあるのではないか」と声を落とす。

「貸切バスの場合、日帰りで17万円くらい、マイクロバスにしても15万円はかかるでしょう」

 物価高による貸切バス代の高騰に加え、2024年度からバス運転手に時間規制が導入された。これにより運転手の拘束時間は1日原則13時間以内になった。13時間以上拘束する場合は、往路と復路を別の運転手で対応する「ツーマン運行」をとらざるを得ない。費用は最低でも約1.5倍になるという。

「1日当たり、バス代と運転手の拘束代で25万円ほどかかる。3日間の県内遠征となれば、70万~80万円ほどにふくらみます」(同)

 実際、「いまはもう貸切バス代を捻出できなくなった」と話す他校の顧問は少なくないという。

「バスが出せなければ、電車など公共交通機関で行くしかない。地方の電車やバスは運行本数が少なく、現実的でない」(同)

 そうした場合の選択肢として、レンタカーが出てくるのではないかと話す。

「レンタカーにすれば5万円、運転手に謝礼として5万円渡したとしても1日10万円ですむ。私のように顧問が運転したり、あるいは保護者が送迎したりというケースもあると思います」(同)

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■高校もバス会社も「非難できない」

 安全管理上の理由から、教員による生徒の送迎を原則禁止している自治体もある。

 山形県では、県立高校の教員が生徒を送迎する場合、事前に講習を受けることが義務づけられている。

「生徒を乗せていれば、どの教員も慎重に運転すると思います。けれども、事故は個人の注意だけで完全に防げるわけではない。講習を受けさせておけば、万が一の事態に教育委員会が『対策はとっていた』と言えるだけの話だと思います」(同)

 最後にこの顧問は「高校もバス会社も一方的には非難できない」と話し、こう語った。

「北越高校の男子ソフトテニス部の顧問は遠征費用を抑える工夫をしていて、その気持ちをくんだバス会社がレンタカーの手配をしたのかもしれない。痛ましい事故でした。亡くなった生徒やその保護者を思うと、言葉もありません」

■最優先すべき「安全」が「グレー」

 一方、レンタカーでの遠征自体に疑問を呈する教員もいる。

 ある演劇部の指導教員は「貸切バスでプロドライバーが運転する、という基本を守るべきだった」と話す。自分自身、以前勤めていた学校では、遠征の際、生徒が電車で向かい、顧問が車で機材を運んでいたが、「危険だと思ったので、赴任してすぐに貸切バスに切り替えた」という。

 この教員は事故について、学校側と業者側、双方の姿勢に問題があるのではと話す。

「レンタカーで2種免許もない高齢の運転手に長距離を任せるのはありえない。学校もバス会社も、最優先すべき『安全』をどこかで『グレー』にしてきた。それが最悪の形で出てしまったのではないか」(教員)

■「明日はわが身」と現役顧問, ■貸切バスは高すぎて頼めない, ■食い違う高校とバス会社の説明, ■「バス代高騰」「時間規制」でバス代捻出できない, ■高校もバス会社も「非難できない」, ■最優先すべき「安全」が「グレー」, ■部活で「車出し」経験のある保護者は, ■小さなズレが積み重なった?

■部活で「車出し」経験のある保護者は

 ある強豪運動部の保護者は、自身も子どもの部活動で「車出し」をした経験がある。

「練習試合で、複数の生徒を自家用車で送りましたし、夫は県外まで片道1時間以上かけて車を出したこともあります。私は反対でした。他のご家庭のお子さんを乗せるとなれば、とても気を使います。万が一の事態に、どう責任を取るのか。懸念している保護者は多いと思います」

■小さなズレが積み重なった?

 今回の事故は「保護者の車」ではなく、「レンタカー」を借り、「運転手を雇った」という体裁だが、「誰か一人の過失」ではなく、複数の小さな要因が積み重なった結果ではないかと感じている。

「学校側に『できるだけ安く費用を抑えたい』という意識があったかもしれないし、保護者からも『そこまで遠征費用を出せない』という声があったのかもしれない。小さなズレが積み重なって、今回の事故につながったように思います」(保護者)

 部活動のあり方そのものにも疑問を投げかける。

「部活動によっては競技人口が多くないから、県外に行かないと練習試合の相手がいない、という事情もあるのかもしれません。貸切バス料金や人件費も高騰している時代に、どこまで保護者や学校が負担できるのか。そこを考えないと、同じようなことがまた起きてしまう気がします」(同)

(AERA編集部・米倉昭仁)

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