切迫する巨大地震は南海トラフ地震だけではない! 2度発表された「北海道・三陸沖後発地震注意情報」をどうみるか

後発地震発生の高まりを知らせた「北海道・三陸沖後発地震注意情報」, 2つの巨大地震への備えを呼びかける2種類の注意情報, 注意情報が当たるのは100回に1回でも「オオカミ少年」とみなすな, 気象庁マグニチュードとモーメントマグニチュード

【図表1】日本付近のプレート 千島海溝の陸側プレートを北米プレートの一部のオホーツク海プレートとすることもある 出典:気象庁「千島海溝地震、日本海溝地震とは」

後発地震発生の高まりを知らせた「北海道・三陸沖後発地震注意情報」

 今年(2026年)は、2011年3月11日に発生した東日本大震災から15年目の節目の年に当たります。しかし、震災からの復興がまだ道半ばの状況にもかかわらず、私たちは次の巨大地震を心配しなければなりません。そして、その到来への注意を促す情報が、昨年12月からの5か月の間に2度も気象庁から発表されました。「北海道・三陸沖後発地震注意情報(以下「後発地震注意情報」とも表記します)」です。

 後発地震注意情報は、北海道もしくは三陸沖で巨大な地震が発生する可能性が平時より高まっている、という注意の呼びかけです。北海道・三陸沖にはそれぞれ千島海溝と日本海溝が走っており、そのうち東日本大震災を引き起こした「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の震源は日本海溝に近い場所でした。

 海溝というのは陸のプレートの下に海のプレートが潜り込む(沈み込む)境目にできた溝で、日本海溝と千島海溝はともに北米プレートの下に太平洋プレートが沈み込むことで形成されています。2つのプレートの衝突により境界付近にひずみがたまり、プレートの岩盤が割れてそのひずみエネルギーが解放されることで地震が発生します。その地震は「プレート境界型地震」「沈み込み帯地震」「海溝型地震」など、さまざまに呼ばれています。

 近年、警戒すべきプレート境界型の巨大地震といえば「南海トラフ地震」がより衆目を集めてきました。トラフもまた海溝と同様プレート境界の溝地形であり、「水深がおよそ6000m以上の深い溝を海溝と呼び、それより水深が浅い溝をトラフと呼んでいます」(本連載第1回参照)。

 しかし、今回の後発地震注意情報により、改めて日本海溝及び千島海溝も忘れてはならないことを思い出させてくれました。

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【図表2】北海道・三陸沖後発地震の想定震源域と被害予想地域赤色のエリアが巨大地震の想定震源域、黄色の地域が巨大地震の揺れ・津波による被害予想地域 出典:気象庁「(参考)北海道・三陸沖後発地震注意情報について」

 日本海溝・千島海溝で最大級の地震が発生すると、津波による被害は千葉県にまで及ぶ可能性があるとされています。

2つの巨大地震への備えを呼びかける2種類の注意情報

 後発地震注意情報が発せられたのは、昨年12月8日に発生した「青森県東方沖の地震」の直後と、今年4月20日に起きた「三陸沖の地震」の直後です。「後発」とは、ある地震(先発)が起きた後に続いて起こる地震という意味です。

 後発地震注意情報は2022年12月16日に運用が開始されたばかりで、3年間は発表がありませんでした。昨年の12月8日に初めて発せられ、そのわずか4か月後に2度目の発表があったのです。

 この2つの地震と、2024年8月8日に宮崎県沖で起こった「日向灘の地震」も加えて、それぞれの基本データを図表3にまとめました。

 日向灘の地震を取り上げたのは、後発地震注意情報と同様、先発地震に続いて巨大地震がくるかもしれないという「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されたからです。2つの注意情報はほぼ同じ意味を持つ情報発信なのです。

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【図表3】巨大地震への注意が呼びかけられたプレート境界型地震気象庁のデータをもとに筆者が作成。マグニチュードは「気象庁マグニチュード(Mj)」

 では、どのような地震が起こったときに、巨大地震への注意が呼びかけられるのかというと、海溝またはトラフ付近で起こったモーメントマグニチュード(Mw)7.0以上の地震です(マグニチュードについては後述)。2つの注意情報の発表の要件や呼びかけ期間等を簡単にまとめると次のとおりです。

◉ 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)

・監視領域内でMw7.0以上の地震が発生したとき

・発表時期 地震発生後最短で2時間程度

・呼びかけ終了時期 地震が発生しないまま1週間経過後に国は警戒措置を解除するが、さらに1週間の注意を呼びかける

※想定震源域内のプレート境界でMw8.0以上の地震が発生した場合には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表され、事前避難が呼びかけられる

◉北海道・三陸沖後発地震注意情報

・想定震源域(及び想定震源域に影響を与える外側区域)でMw7.0以上の地震が発生したとき

・発表時期 地震発生後15分~2時間程度

・呼びかけ終了時期 地震が発生しないまま1週間経過後

 以上のように、2つの注意情報は地震の震源地や被害想定域こそ違えども、内容はほぼ同じです。留意すべきは、どちらの注意情報も1週間後に呼びかけが終了しても、巨大地震の発生可能性がなくなったわけではなく、危険性が薄まっただけということです。

注意情報が当たるのは100回に1回でも「オオカミ少年」とみなすな

 プレート境界付近でMw7.0以上の地震が起きたときに、なぜ注意情報が発出されるのかというと、過去にMw7.0以上の地震後に巨大地震が発生した例が複数回あるからです(図表4)。東日本大震災がまさにその例の1つで、2011年3月9日に三陸沖でMw7.3の大地震が起こった2日後にMw9.0の巨大地震が発生しました。また、1963年にも千島海溝沿いの択捉島南東沖でMw7.0の地震が起こった18時間後にMw8.5の巨大地震が発生しています。

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【図表4】大地震直後に巨大地震が発生した世界の事例Mw7.0以上の地震に続いて、Mw7.8(M8クラス)以上の地震が発生した例。1週間(7日)以内に発生したのは1529事例中19事例。なお、図中の「時空間ETASモデル」とは特定の期間・領域内で地震が発生する確率の計算手法、「ISC-GEM」とは「全地球機器地震カタログ」の1つ 出典:気象庁(参考)地震が続けて発生した事例

 さて、これまで3度発せられた巨大地震の注意情報は、幸運にもすべて空振りになりました。実のところそれも道理で、図表4に示されているように、Mw7.0以上の地震に続いてM8クラス以上の地震が発生したのは、1529事例中19事例だけであり、およそ100回に1.2回程度なのです。つまり、注意報が出ても当たる確率はおよそ1%にすぎないのです。

 しかし、これをして北海道・三陸沖後発地震注意情報や南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を「オオカミ少年」とみなしてはなりません。東日本大震災という巨大地震災害の恐ろしさを知る私たちだからこそ、注意情報が発せられるたびに、地震・津波への警戒心を新たにし、備蓄品や避難先・避難ルートの確認を行うことが肝要でしょう。

気象庁マグニチュードとモーメントマグニチュード

 本文の最後に、後発地震注意情報の話から離れて、「マグニチュード」という指標について紹介します。

 実は本連載の地震関連記事において、これまで「マグニチュード」がどのような指標であるかを詳しくは紹介してきませんでした。そこで今回あえて本文で2つのマグニチュードを使いました。

 マグニチュードは世界で地震が起こるたびに発表されますが、じつはマグニチュードには国際的に統一された規格はありません。計算方法や、その計算にどのデータを用いるかなど、さまざまな考え方があり、非常に多くのマグニチュードがあるのです。

 日本では主に気象庁マグニチュード(Mj)とモーメントマグニチュード(Mw)の2つが使われています。前者の「j」は「Japan」、後者の「w」は「work(仕事)」の頭文字です。2つのマグニチュードにはそれぞれ一長一短があります。

 気象庁マグニチュードは各観測点における地震波形の最大振幅をもとに計算されるので、迅速に発表することができます。ただ、経験式であり、物理的な意味が不明確です。また、巨大地震では振幅が正確に測れない現象が起こるために正確な値を出すことができません。

 一方、モーメントマグニチュードは地震波形全体から動いた断層の面積や動いた距離を反映する値を求める手法で、物理的意味が明確です。しかし、迅速に計算することが困難で、小規模地震の計算精度もよくありません。ただし、中規模地震ではMjもMwもほぼ同じ値になります。

 気象庁では現在、基本的には気象庁マグニチュードを使用しています。それは過去の地震との比較対照が可能だからです。しかし、2つのマグニチュードを特性に基づいた使い分けも行っています。

 2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の際には、地震発生(14:46)直後の14:49の速報値は7.9Mjでした。それが16:00に8.4Mj、17:30には8.8Mwになり、最終的に2日後の3月13日12:55に9.0Mwに決定しました。北海道・三陸沖後発地震注意情報や南海トラフ地震臨時情報の判断にもモーメントマグニチュードが使用されています。

 さて、プレート境界型の巨大地震では、家屋や建物の被害は地震の揺れによる倒壊よりも津波に流されることによる被害が多くなります。それに対して内陸の直下型地震では揺れそのものによって多くの家屋が倒壊します。次回は、建物被害の大小を地震波から解き明かします。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)

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