私立大学“多すぎる”問題 財務省が250~400校の削減案 少子化も進む今、本当に必要な大学とは

私立大学“多すぎる”問題 財務省が250~400校の削減案 少子化も進む今、本当に必要な大学とは

財務省の諮問機関で、全国に624校(2024年時点)ある私立大学を、2040年までに少なくとも250校、最大で400校削減する提言が示された。理由には、少子化の一方、大学数が増え、私立大学の半数以上が定員割れしていることにある。

提言では「授業の質」も問題視しているが、文部科学省は反発。国からの補助は出続けている。そこで『ABEMA Prime』では、有識者とともに、本当に必要な私立大学とは何か考えた。

■少子化なのに大学数は増加

財務省が公表した大規模な私大削減案では、大学数813校(2024年)のうち、私立大学624校を2040年までに「約250〜400校削減(16〜25校/年)、学部定員14万人削減(8700人/年)」とすることで、18歳人口の減少に対応すべきというもの。そこには「経営体力がある段階での撤退等を促すべき」「経済成長に資する分野等に重点支援が必要」といった理由がある。

私立大学の削減について議論した、財務省の財政制度等審議会で委員をつとめる土居丈朗氏(慶應義塾大学教授)は、「2040年の18歳人口減少を見据え、そのペースと学校数を合わせると、250校は減らす必要がある。『400校』は、アメリカやイギリスなどで学生10万人あたり22校程度あることに基づき、2040年の人口から計算した。もちろん機械的な試算だが、それだけ減っても主要国並みの校数が存在するため、学ぶ機会は失われない」と説明する。

元文部科学省官僚で、京都芸術大学客員教授の寺脇研氏は「計算でそうなるのは事実だが、どうするかの問題だ。小泉政権の規制緩和により、ゆるい基準で大学を作れるようになった。諸外国と比べると確かに多いが、『閉鎖しなさい』と言う権限は国にない。そもそも、私立大学は学校法人が作り、そのお金は各自が集めている。学校法人に出した私有財産は、私有権が放棄されるため、学校法人が解散しても戻ってこない」といった問題点を示す。

また、「現在は私立学校に税金が入っているが、1970年代以前の大学は、自力で経営していた。1975年に私立学校振興助成法が成立して、大蔵省(現在の財務省)から約30%が認められた。その時、国会では『50%を目指す』という付帯決議がされたが、できないままに『定員割れが激しい所は助成しない』となる」とも語る。

自身が所属する京都芸術大学を例に出し、「定員を満たしている人気大学だが、助成は10%を切り、90%は自力で稼いでいる。文科省も、結果的に『経営努力するか、閉校するか、合併するか』と考えている」とする。

■いわゆる「Fラン大学」の存在価値は

大正大学准教授の田島悠史氏は、いわゆる「Fラン」と称される大学も必要だと考えている。「偏差値だけで『Fラン』と決めるのは良くない。2023年に一般入試で大学入学したのは、全体で47%と言われている。一般入試から算出する偏差値は、残りの半分を見ていない。その数字で、大学のクオリティーや教育力を見られるのか」。

YouTuber「wakatte.TV」に自身の大学が取り上げられた時、「Fラン」と言われたというエピソードを出し、「Fランではない。揶揄する言葉が世論になり、私学助成のカットにつながるのは不本意だ」と批判する。「地方に18歳人口が少なく、学生が減ることで、ボーダーフリーになる場合がある。ただ地方にも教育力が強いところは多い。地場産業を支える人材を育てる大学もある。なくなれば、地方の衰退につながる」と危惧する。

一方で、「wakatte.TV」の高田ふーみん氏は、Fラン大学は不要と考える。「税金には限りがあり、高学歴に投資してほしい。東大も京大もまっとうな成果を出しているが、研究予算が足りていない。なのにFランや偏差値の低い大学に、お金が流れてしまうのは“国の損失”だ。Fラン大の数を減らすか、税金をあげない方がいい」。

政治学者の岩田温氏は過去に驚いたこととして、「『内容がわからなくても単位を出して』と言われた。教員の教え方が悪いならば、教員はレベルを下げるしかない。『1+1=2』はできても、ちょっと高度なことはできない。高度と言っても高校レベルで、それを15回かけて教えてもできないなら、わざわざ国民の税金を投入する意味があるのか」と語った。

高田氏は「専門性に力を入れている大学もある。明海大学は『不動産学部』を作り、不動産鑑定士や宅建の資格が取れる。武蔵野大学も『アントレプレナーシップ学部』で起業家精神を育てている。そうした改革を頑張っている大学は、自然と人気になっているが、努力していない大学が『税金をくれ』というのはおかしい」と考える。

そして「大学の統廃合を進め、努力が必要な大学は、成功している大学に吸収された方がいい。関西にあった教育系の聖和大学は、関西学院に吸収された結果、人気になった。どんどんFランを吸収していき、経営陣が大学改革を進めるべきだ」とアドバイスする。

■今度、大学はどうなるべきか

高等教育の在り方について、寺脇氏は「時代に合わせてチェンジするのは難しい。1980年代に中曽根総理直轄で臨時教育審議会が設けられ、そこでは『2020年を念頭に変えよう』と話し合われたが、ずっと変わっていなかった」と振り返る。

しかし、「文科省が2月にグランドデザイン(高校教育改革に関する基本方針)を公表し、初めて『2040年に向けて変えないと』と目標を決めた。人口減少やAIの普及、地方の衰退に対応できるように、高校教育を変えないといけない。となると、小中学校も当然、それに合わせて変えることになる。2030年からは学習指導要領もドラスティックに変わるのでは」との見通しを示す。

土居氏は「文科省は『人文社会科学系のダウンサイジング』を言っているが、一番は首都圏の私立大学が、人文社会科学系の学部をたくさん持っている点にある。地方に大学生が残らないのは、首都圏にたくさん学校があるから。地域バランスは考える余地がある」と話す。

助成については「優れた大学にお金を出そうとしているが、まだメリハリが効いていない。どうすれば補助金が生きるのか、もっと議論を深めるべきだ。ただコロナ禍で出生数が減り、2030年代後半は、学生数が確実に減る。V字回復すれば別だが、出生数が激減しており、待っていられない状況だ。決断を遅らせているうちに、経営体力はなくなってしまう」とした。

(『ABEMA Prime』より)

【映像】財務省 VS 文科省 私立大学削減を巡る論点は

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