【ご結婚33年】 宮殿「車寄せ」には陛下と雅子さまのドラマが詰まっている 「これまで見たことない」と職員を驚かせた、アドリブシーン

 結婚から33年の節目は、海外では「アメジスト婚」とも呼ばれる。33年前となる1993年6月9日、天皇陛下(当時、皇太子さま)と皇后雅子さま(当時、小和田雅子さん)の結婚の儀が執り行われた。おふたりは、午後4時45分、オープンカーで皇居を出発し祝賀パレードに臨んだ。元赤坂の東宮仮御所まで4・2キロの沿道には19万人が列を作り、おふたりを祝福した。

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 朝から降っていた雨は止み、雲の切れ間からうす日が差していた。

 皇居・宮殿の南車寄せに停まる黒塗りの車は、宮内庁が4千万円で購入したロールスロイス社製のオープンカー。平成の天皇の即位の祝賀パレードにも使われた車だ。

 当時、皇太子であった天皇陛下と皇太子妃となった雅子さまが、南車寄せに姿を見せた。

 陛下は尾服に「大勲位菊花大紋章(だいくんい きっか だいじゅしょう)」の勲章を、雅子さまは白いローブ・デコルテに女性皇族にとって最高位の勲章である「宝冠大綬章(ほうかんだいじゅしょう)」をつけて、車寄せに姿を見せた。

 ローブ・デコルテのデザインは故・森英恵氏によるもので、顔の上には「皇太子妃の第一ティアラ」、そして首飾りなど宝飾品が煌めいていた。

 周囲に会釈をしながら歩むおふたり。同時に、陛下は何度も雅子さまに視線を向けていた。それは、数時間前に民間人である「小和田雅子さん」から皇族となった雅子さまを気遣うようにも見える。

 午後4時45分、陛下と雅子さまを乗せたオープンカーが皇居の宮殿を出発し半蔵門を通過した。このとき半蔵門前で取材をしていた皇室ジャーナリストの故・松崎敏弥さんは、雅子さまが目にそっと指を添え涙をぬぐった光景を目にしたと筆者に話していた。

 両陛下が賓客の出迎えお見送り、皇族方の儀式の出入りに使われるのが宮殿の南車寄せだ。

 お出ましは一瞬。しかし実はここで、陛下と雅子さまがお互いを見つめ表情豊かなほほ笑みを交わすなど、おふたりの絆が伝わるような素顔を目にすることができる場所でもある。

 印象的なのは、令和皇室がスタートした2019年秋。「即位の礼」の一連の儀式で執り行われた、祝賀パレード「祝賀御列の儀」の場面だ。

 

 南車寄せに現われた陛下と皇后雅子さま。燕尾服の陛下は最高位である「大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)」と「大勲位菊花大綬章」の勲章。

 雅子さまは、ローブ・デコルテに「宝冠大綬章」、そして頭上には「皇后の第一ティアラ」と首飾りなど宝飾品が煌めいていた。

 横には皇嗣家となった秋篠宮ご夫妻が立ち、周囲には側近ら並び、君が代の演奏が流れる。

 ご結婚のときと異なるのは、オープンカーに乗り込むおふたりがより豊かな笑顔を見せている点だ。映像や写真からは、陛下と雅子さまがリラックスした笑顔で言葉を交わしながら移動されている様子がうかがえる。

 雅子さまは、本当におかしいときは、感情豊かに口を開けて笑い、背と首をすこし前にかがめたりといった様子で全身で感情を表現することも少なくない。このときも、陛下と雅子さまの楽しげな声が聞こえてきそうなほどだ。

 オープンカーに乗ったおふたりは、何かを確認し合うように互いの目を見つめ、ひとことふたこと言葉を交わされていた。

  皇居・宮殿からお住まいの赤坂御所までの約4・6キロの沿道には平成の即位パレードを超えるおよそ11万9千人が集まり、おふたりを祝福。皇后雅子さまが涙をぬぐう場面も話題を集めた。

 令和も8年目に入り、おふたりで築く令和流も色濃く感じられるようになった。

 たとえば、5月27日には、国賓として来日したフィリピンのマルコス大統領夫妻を歓迎する天皇、歓迎式典が皇居・宮殿の東庭で催されたときのことだ。

 午前9時過ぎ。赤い絨毯の敷かれた皇居・宮殿の東庭に白い制服の儀仗隊が整然と並び、日の丸の隣には白と青、赤の三色に黄色い太陽と星で構成されるフィリピンの国旗が掲げられていた。両国の国歌が演奏されるなか、天皇陛下と秋篠宮ご夫妻、フィリピンのマルコス大統領夫妻が歓迎行事に臨んだ。

 歓迎行事を終えたおふたりは、大統領夫妻を宮殿に案内し宮殿「竹の間」で面会。

 日本サイドの職員は、予定を過ぎても4方が車寄せに現れないことに焦りつつも、「お話が盛り上がっているようです」と、入った連絡に安堵の表情。

 車寄せに4方が姿を現したのは、予定時刻を10分ほど過ぎていた。

 車寄せで立ち話が続く大統領夫妻と両陛下。異様に盛り上がり、笑い声が響いている。原因は、大統領夫人が取り出したマグロの寿司のキーホルダー。和食の話題で盛り上がったのだという。この大統領と天皇を含めた「元首夫妻トーク」は、メディアでさかんに取り上げられ話題を集めた。

 

 この車寄せにおいて、雅子さまが2度ほどチャーミングな笑顔を見せた瞬間があった。

 大統領夫妻とあいさつをする陛下と雅子さま。大統領夫人とあいさつをするために、交互になってしまったようで、雅子さまが「あっ」という表情を一瞬みせると、やや頭をかがめて「ちょっと失礼」といった様子で陛下の後ろ側を素早く周るシーンもあった。

 この動作は2回ほど見られた。その度に雅子さまは、ユーモラスかつチャーミングな笑顔を見せた。陛下とゆるぎない絆とリラックスできる環境があるからこその光景だった。

 この日は、宮内職員をして、「いままで見たことありません」と驚かせしめたアドリブシーンもあった。

 「竹の間」での面会から南車寄せでお見送りを終えたおふたりが、広間「南溜」へ外扉と内扉の間を通過した瞬間のことだ。

 おふたりで、顔を見合わせると、そこに建っていたフィリピン側の報道陣のもとへスタスタと歩を進めて話しかけた。

 予定にない両陛下のアドリブに、宮内庁のスタッフらもざわついた。

「会話は聞こえませんが、少なくとも私は、こうしたことは見たことがない」とつぶやいた。

 おふたりと話をしたのは、フィリピン側の同行記者のアイヴァン・ラメシス・マイリナさんだ。

 アイヴァンさんは、おふたりはとても優雅に歩み寄り、高貴な仕草で、

「日本に来たのは初めてですか」「好きな場所は?」

 と話しかけたという。

 アイヴァンさんは、日本の美しい文化と土地、そして和食や日本でのショッピングは、とても魅力的で、多くのフィリピン人は私を含め2、3回は日本をたずねていると答えた。

「会話はすごく短い時間だったから、それだけです。政治の話題もしたほうがよかったかな」と冗談を交えて感想を口にするアイヴァンさんに、日本側の職員は「絶対ダメ」と苦笑とともに返す。

「でも、素敵なサプライズだった」と、アイヴァンさんは笑った。

 留まるのはわずか数分程度の南車寄せ。ここで両陛下は儀式を終えてカメラの前に初めて姿を見せたり、ときには大切なゲストを出迎え、そしてお別れを交わしたりする。そこでの陛下と雅子さまのわずかな仕草や表情からは、時にドラマティックな胸の内を読み取ることができそうだ。

(AERA 編集部・永井貴子)

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