ルーチェはなぜ異例のデザインになったのか? フェラーリの問題作を担当デザイナーが解説

ルーチェはなぜ異例のデザインになったのか? フェラーリの問題作を担当デザイナーが解説
フェラーリの歴史から逸脱したデザインとして賛否を巻き起こし、会社の株価下落をも招いたルーチェ。デザインに関わっているのは、Apple出身のジョニ・アイブが設立したデザインスタジオ「LoveFrom」だ。担当デザイナーの肉声からデザインの意図を解読する。
フェラーリ初のEV(電気自動車)が、常識的な1台では終わらないことは予想されていた。とはいえ、それでもなお、「ルーチェ(Luce)」は、自動車業界に少なからぬ驚きを与えた。
そのデザインは議論を呼び、冗談や戸惑いも含めて話題になっている。フェラーリの株価は下落し、元幹部らからは不満の声も出た。さらに、ルーチェを見たローマ教皇レオ14世までもがコメントしたという。少なくとも、人々の話題となり、認知度を高めたという意味では、ルーチェのデザインは成功したといえるだろう。
出発点は、クロスオーバーに近いEVの開発
このデザインの出発点にあったのは、クロスオーバーに近い5ドアEVを開発するという判断だった。フェラーリの商品担当者であるピエトロ・ヴィルゴリンは、ルーチェの発表会でRoad & Trackに対し、「デザインを機能に従わせた」結果だと説明している。大型バッテリーと4基のモーターを備えるパワートレインを、車体の下に収めるためのパッケージング上の判断だったという。
彼は、エンジンを搭載している従来のフェラーリの制約についても話す。
例えばトランスアクスル(トランスミッションとデファレンシャルギアを一体化した構造)は後席の間に配置する必要があり、後席中央に人が座れない。一方、EVであるルーチェでは、フェラーリとして初めて後席に3人分の座席が設けられた。
乗員空間と外側のボディを、2つの形として見せる

Ferrari
ただし、そこから先が複雑だ。
議論を呼んでいるルーチェのデザインの中心にあるのは、ボディを2つの異なる要素として見せる考え方である。黒と、赤・青・黄などのボディカラーで塗り分けることで、グラスエリアを含む乗員空間が、外側のボディシェルをまとっているように見える。
このデザインには、アップル出身のジョニー・アイブが設立したデザインスタジオ「LoveFrom」が関わっている。LoveFromに所属する元アップルのデザイナー、マーク・ニューソンによれば、同社の作業は「ルーチェを4ドア、5シートのEVにする」というフェラーリの方針から始まったという。
ボディの内側と外側の形を分けて考えるアイデアは、デザインの初期段階から検討されていたものだった。発表後に公開されたルーチェの写真がいずれもツートーンの外観を採用しているのは、その考え方を明確に示すためである。
ニューソンは、「乗員セルが、ある意味で車のボディの中に収まっている」と説明する。それを表現する方法はいくつもあるが、最も分かりやすいのが色の使い分けだ。さらに物理的にも、車のベルトラインの周囲をぐるりと走る隙間によって、2つの要素は分けられている。
丸みのある空力形状と、フェラーリらしい性能の表現

Ferrari
ニューソンのチームは、乗員を包むシェルの自然な空力形状を強調することを選んだ。EVにとって効率が重要であることを踏まえた判断でもある。
一方で外側のボディは、前後にウイングのような造形を取り入れている。これにより、量感のあるプロポーションを保ちながら、大きく平らな面で空気抵抗を悪化させることを避け、ダウンフォースも生み出している。
つまり、黒とグラスエリアで構成された丸みのある乗員空間はEVらしい効率を視覚的にも示し、赤や青、黄などの色をまとった外側のボディシェルは、より典型的なフェラーリのパフォーマンスを想起させる役割を担っている。
インテリアにも貫かれた、内外一体のデザイン思想
インテリアも、フェラーリの内燃機関モデルとは大きく異なる。物理的なスイッチを重視するなど、近年のタッチスクリーン中心の流れからは距離が置かれており、むしろ少し前の時代を思わせる方向に振っている。
ルーチェは、外から想像するよりも車内が広いとニューソンは話す。また、後ろヒンジ式のドアについては「そのほうが優れているから」と冗談めかして語ったうえで、外側と内側という2つの空間のつながりを、できるだけクリーンに見せたかったと説明している。

彼が特に重視したのは、内外装を通じて一貫した体験を生むことだったという。インテリアのどこかに無理があったり、エクステリアとは別の文脈で作られたように感じられたりしないこと。その意味で、デザイン全体の整合性はきわめて重要だった。
このパッケージ全体が、すべての人に受け入れられるかは分からない。多くの人にとって、すんなり理解できるデザインではないかもしれない。それでもフェラーリとLoveFromがルーチェのデザインで大きな話題を生んだことは確かである。
ただし、ルーチェを手に入れたいと考える人は、価格に驚くことになるだろう。ルーチェの価格は約55万ユーロから。発表時点の為替レートでは約64万ドル。本記事公開時点(2026年5月30日)の日本円で約1億200万円に相当する。
Source / Road&Track
Translation / Eisuke Kurashima
※この翻訳は抄訳である。
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