岩国闇バイト強盗 日本刀で抵抗され「返り討ちで死亡」は不正確 別事件と混同

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

岩国闇バイト強盗 日本刀で抵抗され「返り討ちで死亡」は不正確 別事件と混同

検証対象

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

(以下引用)

この事例の場合、強盗の一人が返り討ちにあって死んだけど、過剰防衛にはならなかったんだよな

(※画像付き投稿。別の一般ユーザーの投稿を引用)

一般ユーザーのX投稿(2026年5月15日、約5400リポスト)

(以上引用)

判定

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

判定の基準について

画像にある山口県岩国市の強盗未遂事件では、強盗側は死亡していない。

ファクトチェック

投稿は、2026年5月に栃木県上三川町で発生した強盗殺人事件(参照)に関する他のユーザーの投稿を引用し、強盗に遭遇した人物が日本刀を構えて抵抗する様子のイメージ画像を添付したうえで、画像の事件では「強盗の一人が返り討ちにあって死んだ」「過剰防衛にはならなかった」と説明している。

「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し

添付された画像は、左上のロゴなどから、TBS系列のニュース番組「news23」の放送画面のようだ。内容から、これは2022年11月に山口県岩国市で発生した強盗未遂事件に関する報道と考えられる。

しかし、この強盗未遂事件で強盗側が死亡したという事実は無い。事件のいきさつは次のようなものだ。

いわゆる「ルフィ事件」と呼ばれた広域強盗事件の一環であるこの事件は、日当100万円をうたう「闇バイト」などで集められた実行役と運転役合わせて5人のグループが、「ルフィ」を名乗る人物らの指示を受けて岩国市の民家に侵入。金品を奪おうとしたものの、住人の男性(当時61歳)が日本刀を持ち出すなどして抵抗したため何も奪えずに逃走、強盗は未遂に終わった。実行役のうち1人はその場で取り押さえられ、逃走した残り4人もその後相次いで逮捕された(2023年1月の裁判報道1、2より)。2023年11月と12月には、事件に関与した指示役とリクルート役合わせて4人がそれぞれ逮捕された(参照1、2)。

後の報道では逮捕された実行役と運転役の人数を合わせて6人または7人とするものもあり、詳細は確認できなかったが、いずれにしても「返り討ちにあって死んだ」者がいるという情報は見当たらない。

投稿者は「別事件と混同」

検証対象の投稿者はその後、強盗側が死亡したのは別の事件だというさらに別の一般ユーザーの指摘を受け、「同じ2023年の事件だったので混同してました」と返信し、誤りを認めている。投稿者が混同したのは、2023年3月に東京都東池袋で発生した強盗事件とみられる。この事件では、現場にいた中国籍の男性が強盗側の1人を刃物で刺して死亡させた(参照)。犯行グループは指示役・実行役合わせて8人だったとされている(参照)。

なお、岩国市の事件の方は実際は上述の通り2022年11月に起きており、投稿者の言うような「同じ2023年の事件」ではない。

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

検証対象の投稿者による訂正投稿

以上のように、検証対象の投稿において、画像が表す住人が日本刀で抵抗した岩国市の事件と、本文が表す強盗側の1人が死亡した東池袋の事件は別のものである。個々の事件は実在するものの、別々の事件が1つのものとして混同されていることから、投稿は「不正確」と判定する。

訂正後も拡散続く

検証対象の投稿者による訂正の後も、同様の内容の拡散は続いている。

評論家の橋本琴絵氏が検証対象の投稿を引用した投稿は、約4600リポストを獲得した。

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

橋本琴絵氏の投稿(約4600リポスト)

また、強盗側でさらに2人が重傷を負ったとする確認できない情報や、AI生成とみられるイラストなどが加えられた投稿も、広く拡散されている。

ファクトチェック, 「日本刀で抵抗」の事件では死亡者無し, 投稿者は「別事件と混同」, 訂正後も拡散続く

拡散の例(それぞれ約9600リポスト、約5800リポスト)### 正当防衛の議論

一連の投稿では、日本刀で抵抗した住人に関し「過剰防衛にはならなかった」「正当防衛が認められ、不起訴」といった記述がされている。岩国市の事件において、住人の行為が警察や検察にどのように判断されたかは伝えられておらず、そもそも起訴が検討されたことがあったかも不明だ。

正当防衛に関し、刑法第36条第1項は「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」としている。また、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律(盗犯等防止法)第1条では、窃盗や強盗などに対する正当防衛の範囲がより広く認められる旨が定められている(参照1、2)。上述の引用投稿で橋本氏が、「怖かったから」などの理由で侵入犯を殺害した場合に罰しないとする法律があると述べているのは、この盗犯等防止法第1条第2項の規定を指しているものと思われる。

東池袋の事件で強盗を死亡させた中国籍の男性の場合は、2023年12月、盗犯等防止法に基づく正当防衛として不起訴にすべきとの付帯意見を付けたうえで、殺人容疑で書類送検されたという(参照)。その後男性が起訴されたかどうか、報道などの情報は見当たらなかった。

(大谷友也)