「2年以上同じ学校にいたことがない」幼なじみがいないトリンドル玲奈が、日本語の柔らかさを愛するワケ

 唐沢寿明が推理クイズ番組の司会者・樺山を演じて主演を務める映画『ミステリー・アリーナ』が公開。唐沢のアフロにド派手衣装の強烈なビジュアルも早くから話題を集めているが、劇中の番組内で、樺山の隣に笑顔で立つアシスタントのモンテレオーネ怜華役・トリンドル玲奈も、変化を見せる役柄で印象を残す。

トリンドル玲奈さん

 映画への出演は、実に2016年の『任侠野郎』以来、10年ぶりとなったトリンドル。今年の2月に第1子を出産し、ママになったばかりでもあるトリンドルに、自身の変化を振り返ってもらった。

◆「モンテレオーネ怜華」のキャラ変化に自らアイデア出しも

——映画のお仕事は久しぶりですね。ご自身でもその意識はありましたか?

トリンドル:ありました。撮影スケジュールはどんな感じだろうとか、映画ならではの規模感やセットの迫力もすごいだろうな、と想像していましたね。何より今までたくさん観てきた堤幸彦監督の作品なので、すごくワクワクしていました。

——モンテレオーネ怜華は前半と後半で大きく変化するキャラクターです。その変化をより印象づける、ある見た目の変化について、ご自身から提案されたと聞きました。

トリンドル:怜華はショートヘアが似合いそうだなと思って、提案させていただきました。その変化がパッとわかる行動を堤監督が考えてくださったのですが、展開やキャラクターの気持ちの変化にもバッチリ合いましたね。

——完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?

トリンドル:現場で感じていた“良い緊張感”が、映像にもすごく出ていましたし、自分がいないシーンは脚本でしか読んでいなかったので、純粋に「すごい!」と思いました。最後は何だか泣きそうになって……。あと、唐沢さんが演じた樺山のキャラクターが、本当に救いようがないというか(笑)。隣にいたのに「どうやって演じていたんだろう」と改めて思ってしまうくらいでした。このようなキャラクターは、観ていくうちに良い部分が表れてくることが多いと思うのですが、樺山は一切なくて、「樺山のいいところを知っている人っていたのかな?」と、改めてそんなことを思いました。

◆「1日1回は辞めたいと思う」それでも続けてきた理由

——トリンドルさんと同世代の読者も多く読んでいます。20代と30代で、ご自身で感じる変化はありますか?

トリンドル:出産したばかりで、今はちょっとふわふわしています(笑)。20代はがむしゃらに頑張ってきて、30代で少しずつ肩の力が抜けてきた感覚です。

——では仕事と対峙していて、辞めたいと思ったことはありますか?

トリンドル:1日1回は感じてしまうものだったりしますよね(笑)。でも冷静になってみると、周りに助けられることも多く、実際に辞めようとしたことはなかったです。

——特に大変だった時期はありますか?

トリンドル:辞めようと思えば辞められた時期は、大学生の時です。実家暮らしだったこともあり、芸能も大学も辞めようと思えば、正直、いつでもどちらかを辞められる状態だったと思います。それがどちらも続けられたのは、周りの人に「もうちょっと頑張ってみたら」と言ってもらえたからです。本当にその一声で、なんとなくもう少しやってみようと思えて、今に至ります。

◆子どものころの引っ越し体験が与えてくれたもの

映画『ミステリー・アリーナ』より (C) 2026 Amazon Content Services LLC or its Affiliates. All rights reserved.

——お母さんになったことも大きな変化だと思います。自分自身への発見はありますか?

トリンドル:意外と強いということでしょうか。子どもの予防接種に行ったとき、自分の方が泣いちゃうのではないかと思いました。でも「大丈夫、大丈夫」と言っている自分がいて。結構心配性なタイプなのですが、そういう強さが自分の中に意外とあるんだというのは発見でした。

——トリンドルさんはオーストリア出身ですが、ご自身が子どもだったころはフランスや米国、日本と数多く引っ越しを経験されてきたとか。その経験が、今の自分につながっていると感じることはありますか?

トリンドル:いわゆる幼なじみがいないんです。オーストリア内でも引っ越していましたし、2年以上同じ学校に通ったことはないかもと思うくらい引っ越していました。そのおかげなのか、初めての場所に行ったり、初めての人に会うことへの抵抗がありません。緊張しないということではないんですけどね。自分も新しく入ってくる側だったこともあれば、逆に新しく入ってくる人を見たこともある。「どちらの気持ちもわかる」というのは結構プラスになっているのかなと思います。

——ご自身の経験からも、どこから来た人といった偏見を持つことがない?

トリンドル:むしろプラスに捉えていると思います。オーストリアは、いろんな国の血が入っている人がすごく多いんです。なので日本にいても、それをマイナスとして捉えたことはないですね。

◆海外への欲よりも「日本語の柔らかさ」が好き

——海外志向はありますか?

トリンドル:それがないんです。ありがたいことに20歳までにそのような経験がたくさんあったので、逆に海外へ行きたい欲が全くないです(笑)。Netflixで何か見ようと思っても、昔の日本のドラマを見たくなります。日本の作品が好きですね。

——日本語もお好きですか?

トリンドル:好きです。難しいですが、だからこそいいなと思う面がたくさんあります。ドイツ語は表現がはっきりしていて、言い方がちょっと強かったりする部分もあるんですが、日本語はもう少し落ち着いていて、柔らかく話せる感じがします。いまだに知らない日本語の表現の良さに気づくこともあって、まだまだ発見があるステキな言語だと思います。

◆「なるようになる」だからこそ日々を大切に

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——最後に、これからの自分に期待していることは。

トリンドル:今までは自分の時間がたくさんあって、良いことも悪いことも考えようと思えばいくらでも考えられたのが、子どもが生まれて子どもと向き合う時間がほとんどとなると、自分のことを考える時間が良い意味で少なくなりました。あれこれ考えなくてもいいというのは、逆に少し楽になりましたね。今までとは違う頑張り方ができそうな気もしていて、それはすごく楽しみです。仕事でいうと、芸能のお仕事は、何かできたと思っても、すぐ次の課題が見つかる。「悔しい」と感じることが今でもたくさんあります。それはずっと続くんだろうなと思います。

——悔しさがモチベーションにもなるんですね。

トリンドル:「なるようになる」とも思っています。この1年を振り返るだけでも、自分が思い描いていたものとは違っています。そもそも芸能の世界に入ったときも、前の年には自分が芸能の仕事をすることになるとは思っていませんでした。今だって、少し前の自分は、まさか今の自分に子どもがいるとは思っていませんでしたからね。人生は予測がつかないと思う分、1日1日の出来事を「最後かもしれない」と思って大切に生きたいと思っています。

<取材・文・撮影/望月ふみ>

【望月ふみ】

ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi