円安でインフレなら「日本株は買いだ」と投資のプロが考える納得の理由

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円安とインフレが進めば、生活は苦しくなる。そう考えるのが自然だろう。にもかかわらず、「日本株は買いだ」と言い切る投資のプロがいるのはなぜか。実は、自国通貨安とインフレが同時に進む局面では、株価が上昇しやすい一定の構造がある。その仕組みを理解すれば、見えてくる景色は大きく変わる。※本稿は、ファンドマネージャーの堀井正孝『経済はお金から学べ』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

預金の金利だけでは

物価上昇に追いつけない

「物価が上がるけれど、何か対策はありますか?」という質問をすると、生活が苦しくなるだろうから、「(今までどおり)これからも預金する」という人が多くいます。物価が上がるのに預金……この答えに、少し矛盾を感じてほしいのです。

 たしかに、預金とは、元本はそのままに、コツコツと利息を積み上げていくリスクの少ない投資の1つで、デフレ局面や利下げ局面では、頼りになる資産運用です。

 しかし、インフレ局面や利上げ局面に変わると、預金では、物価上昇や金利上昇に対し、後れを取ってしまいます。ほかと比べて、自分のお金だけ増えていかないという状態になってしまうのです。

 最近の米国がその実例です。米国は、今の日本よりも数年早く、インフレと利上げの局面に入りました。物価も調達金利も上がりましたが、図4-12のとおり、2025年7月現在、政策金利は4.5%まで上がっていても、預金金利は0.59%程度とかなり出遅れています。預金をしていても、金利上昇の妙味がほとんどないということです。

同書より転載

 預金金利が上がらない理由は、銀行の利益は利ザヤ(貸出金利-預金金利)だからです。低金利が長く続いたのちに利上げが行われると、銀行の保有している債券や貸し出している資金の評価損が膨らむのは致し方ないとしても、預金金利を上げてしまうと、逆ザヤ(利ザヤがマイナス)となってしまい、銀行の収益がさらに圧迫されてしまうからです。

 日本も、利上げと同じペースでは、預金金利は上がらないと思われる一方、物価は需給やコストに敏感に反応し、すでに上昇しています。今後もインフレが続くと見込まれる中、投資や資産運用を預金だけに頼っている場合ではありません。

長期にわたるデフレで

預金神話が広まってしまった

 日本は、デフレ局面が長かったので、現金としてのお金とは、持っていれば安心なもので、その理由は、価値が下がらないからと思っている人が多いかもしれません。しかし、お金を現金のままで持っていると、その価値が下がってしまうのが、インフレ局面なのです。

 今なら現金10万円で、自転車を2台買うことができるとして、デフレ局面とインフレ局面で、1年後の現金の価値を考えてみましょう。

 現金10万円は、そのまま持てば、いつでも10万円のままです。自転車はどうでしょうか。デフレ局面では、モノの価格が下がり、1年後に10万円で同じ自転車が3台買えるようになりました。10万円の価値が、自転車2台分から3台分に膨れ上がったのです。一方、インフレ局面では、モノの価格が上がり、1年後には10万円で1台しか買えなくなります。

 つまり、物価が下がって「お金の価値が上がるのが、デフレ局面」で、物価が上がって「お金の価値が下がるのが、インフレ局面」です。

 特に、悪いインフレのときは、賃金(給与)の手取り額が減っているわけではないのに、生活が苦しく感じるはずです。なぜなら、物価の上昇に対して、手取り額というお金の価値が下がっているため、今までと同じようにモノを買うことが難しくなるからです。

 インフレ局面では、資産の価値を維持するためには、現金を何かに変えて、お金にもっと働いてもらい、お金を増やさないといけません。お金に働いてもらう、つまり、投資が必要なのです。

 インフレ局面では、資産の価値が上がるので、高額な資産を持っている人ほど、裕福になる傾向があります。

 たとえば、インフレで資産価値が1年後に2割上がるとしましょう。もし、1台1000万円の車を持っていたら、1年後に1200万円(+200万円)になり、1軒1億円の家を持っていたら、1年後に1億2000万円(+2000万円)になります。

 つまり、インフレのときには、車、不動産、株式など、保有している資産が高額であればあるほど、その資産価値は大きく増えるのです。

 もちろん、資産は高額ならどれでもいいわけではなく、価値が上がるものを厳選しておく必要はありますが、資産を持っている人と持っていない人、投資をしている人としていない人、その格差は、インフレのときにこそ広がってしまうのです。

自国通貨安に陥った国は

株価が上昇しやすい

 インフレ局面では、なぜ株価は上昇するのでしょうか。もちろん投資に絶対はありませんが、ヒントとなる考え方ならあります。

 まず、図4-14のとおり、2025年7月時点で、過去5年間で株式が上昇した国は、アルゼンチン、トルコ、ナイジェリア、エジプトなどで、これらの国の共通点は、インフレ率が高いことです。

同書より転載

 では、なぜインフレ率が高いと、株価が上昇するのでしょうか。

 理由は、図4-15のように、通常時とインフレ局面での、企業の貸借対照表を比べると分かりやすいでしょう。

同書より転載

 まず、貸借対照表は、左側に資産、右側に負債と純資産があり、左右が同じ金額になるようにできています。

 資産は、企業の売上、保有資産や在庫などなので、インフレ局面では、その価値は上昇します。一方、負債は、いわゆる借金なので、インフレ局面でも金額自体は変わりません。そして、企業価値である純資産は、資産-負債で求められるので、インフレで資産が増えた分が増加することになります。

『 経済はお金から学べ 』(堀井正孝、SBクリエイティブ)

 インフレ局面では、負債は増えず、資産と純資産が増えるので、業績が好調と理解され、株価が上がるのです。

 ただし、インフレ体質の国では、自国通貨が下落しやすいことも特徴になります(図4-14)。

 自国の通貨安=高インフレ率=株高の関係が成り立つので、株価が上がっても為替で損をすることが多々あるため、為替を考えなくてはならない海外投資家にとっては投資妙味が少なくなってしまいます。

 もし、日本の円安がインフレ高に基づくものであれば、株価が上昇してもおかしくはありません。インフレが続くなら、為替が絡まない日本の国内投資家にとっては、日本の株式が、意外にも投資の中核になるかもしれません。