「週3回以上歩く」「歌いながら家事」「インターバル速歩」 最新の研究で判明した健康寿命を延ばす運動習慣ルール10<病気を予防する筋トレもイラスト図解>

 日本人女性の平均寿命は現在87.14才。だが、元気に生活できる期間を表す「健康寿命」は75.45才と、約12年もの開きがある。人生を最期まで楽しく過ごすためには、人生の質を左右する健康寿命を延ばすことが重要だ。そこで、最新の研究で見えてきたすぐ取り入れるべき新常識を専門家が解説する。

長生き遺伝子「サーチュイン遺伝子」を活性化する, 平均寿命と健康寿命の違い, <運動編>毎日しっかり体を動かすことで、病気のリスクを軽減できる, 寿命を延ばすスポーツランキング

健康寿命を延ばす方法を専門家が指南

教えてくれた人

今井伸二郎さん/代謝機能研究所所長・東京工科大学名誉教授、山田陽介さん/東北大学大学院医工学研究科スポーツ健康科学教授、樋口満さん/早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授

長生き遺伝子「サーチュイン遺伝子」を活性化する

 健康寿命とは、病気で寝たきりになることなく命をまっとうできることをいう。人生の質を左右する健康寿命は、60才以降も延ばせるのだろうか?代謝機能研究所所長の今井伸二郎さんが説明する。

「科学的に寿命は、テロメアの長さによって決められると考えられています。テロメアは細胞の核の中にある染色体の末端にあり、細胞分裂のたびに短くなることが知られています。テロメアの長さは細胞の寿命を表し、老化により短くなると体の機能が衰え、がんや動脈硬化などの病気にかかりやすくなる。いくつもの研究で、テロメアの長さは生活習慣を見直すことで復活することが明らかになっています」(今井さん・以下同)

 テロメアの長さを復活させる鍵となるのが、長寿の遺伝子とも呼ばれる「サーチュイン遺伝子」の存在だ。

「サーチュイン遺伝子が活性化し増加すると、テロメアの長さが伸び、メタボリックシンドロームや認知症の予防にもつながるといわれています。そして、バランスのとれた食事、適切な運動、充分な睡眠、良好な人間関係によって活性化します」

 では、具体的に何をどう改善すべきなのか?

 健康寿命と大きく関わる運動について見ていこう。

平均寿命と健康寿命の違い

<女性の平均寿命>

87.14才

<女性の健康寿命>

75.45才

<男性の平均寿命>

81.09才

<男性の健康寿命>

72.57才

※2022、2023年「厚生労働省」資料より

<運動編>毎日しっかり体を動かすことで、病気のリスクを軽減できる

【ルール1】6000〜7000歩を目標に毎日歩く

 京都府亀岡市の高齢者を対象とした調査「亀岡スタディ」(2023年)によると、1日の歩数が5000歩以上になると死亡リスクが大きく下がることが明らかになった。同調査にかかわった東北大学教授の山田陽介さんが説明する。

「フレイルの高齢者を対象にした調査では、1日の歩数が5000歩未満の人に、あと1000歩増やしてもらったところ死亡リスクが23%も下がりました。また、7000歩で死亡リスクの減少が底を打つこともわかっています。60才を過ぎたら6000〜7000歩を目標に歩くことを推奨します」

【ルール2】週3回以上歩く

 カナダのラヴァル大学老年医学研究ユニットが4000人を超える高齢者の運動習慣を4年間、追跡調査したところ、週3回以上歩く人は、そうでない人に比べ認知症発症リスクが3分の2に減少するという。

「有酸素運動をすることで脳への血流が改善し、血糖値も正常になることから、認知症の発症リスクも低下したのではないかと考えられています」(今井さん)

【ルール3】早歩きをする

 早稲田大学スポーツ科学学術院名誉教授の樋口満さんは、「ウオーキングをするなら、できるだけ早歩きをするといい(※1)」と言う。

「続けやすく、効果も高いのが『インターバル速歩』です。ややキツイと感じる程度の『サッサカ歩き』(3分)と、息を整える『ゆっくり歩き』(3分)を交互に繰り返します。これを1日5セット(30分)、週4日程度行うといいでしょう」(樋口さん)

※1出典:「ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方」(能勢博/講談社ブルーバックス)

【ルール4】有酸素運動に筋トレをプラス

 山田さんは「ウオーキングなどでの早歩きに加え、筋トレを行うのがベスト(※2)」と続ける。

「下図のように足を前後に開いて行う“ランジ”は、自宅でもできるのでおすすめです。筋トレは3〜5分でも毎日続けることで生活習慣病予防につながります」(山田さん・以下同)

「生活習慣病の予防につながる筋トレ“ランジ”」

<1>立った姿勢から右足のひざを90度に曲げ、腰を下ろす。

<2>元の姿勢に戻り、次は左足のひざを同様に90度曲げる。

<3><1>と<2>を左右交互に10回繰り返す。

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筋トレ“ランジ”

※2出典:東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上諒子講師・澤田亨教授および九州大学の本田貴紀助教の研究グループの研究による

【ルール5】週1回まとまった運動をする

 ウオーキングや筋トレに加え、週1回、スポーツを行うのもおすすめだ。

 デンマークのコペンハーゲン市内の成人8577人を25年間にわたって追跡調査した「コペンハーゲン調査」によると、運動習慣のある人とない人の平均寿命に差があることがわかった。

「同調査では、スポーツの種目別に寿命差があることを示しており、1位はテニス、2位はバドミントン、3位はサッカーでした。それぞれの運動には、週あたりの時間差はあるものの、健康・美容体操もしっかりやれば、寿命が3.1年延びることも期待されています」

寿命を延ばすスポーツランキング

<1>テニス:9.7年

<2>バドミントン:6.2年

<3>サッカー:4.7年

<4>サイクリング:3.7年

<5>水泳:3.4年

<6>ジョギング:3.2年

<7>健康・美容体操:3.1年

<8>ヘルスクラブでの活動:1.5年

※出典:International Journal of Exercise Science「Long-term Tennis Participation and Health Outcomes: An Investigation of “Lifetime” Activities」

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「寿命を延ばすスポーツ」※出典:International Journal of Exercise Science「Long-term Tennis Participation and Health Outcomes: An Investigation of “Lifetime” Activities」

【ルール6】座りっぱなしをやめる

 オーストラリア肥満・生活習慣研究(AusDiab)が行った研究解析によると、テレビ視聴などで座りっぱなしの姿勢が続くと1時間増すごとに平均余命は22分減少するという。

「WHO(世界保健機関)は30分ごとに立ち上がり、1分間、体を動かすことを推奨しています。30分に1回が難しい場合は、せめて1時間に1回は椅子から立ち上がり20〜30歩でも歩くこと。立つのが難しければ座ったまま足の上下運動を行い、血流をよくしましょう」

【ルール7】ローイングエクササイズで病気を予防

<1>両足をそろえて体育座りをする。チューブ中央を足裏にかけ、両端を手のひらに巻きつけ腕を伸ばす。

<2>「いち」と言いながら両足を前に蹴り出し、同時に両ひじを引く。息は止めずに自然に呼吸を行う。

<3>「に」と言いながら肩の力を抜き、両腕を前に出して、両ひじを真っ直ぐに伸ばす。

<4>「さん」と言いながら両ひざをお腹に引き寄せ曲げる。<1>〜<4>を1分で20回繰り返し、合計10分行う。

※出典:樋口満著『体力の正体は筋肉』(集英社新書)

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「ローイングエクササイズ」※出典:樋口満著『体力の正体は筋肉』(集英社新書)

【ルール8】こまめに家事をしてカロリーを消費する

 こまめに動くことも長生きにつながる。

「私たちの研究(※3)では、日常生活の中のちょっとした動きの積み重ねがカロリー消費に役立つことがわかっています。特に食事を終えたらすぐ片付けるなど、こまめに体を動かせば血糖値の急上昇が防げ、生活習慣病の予防にもつながります」

※3出典:畑本陽一、田中宏暁、山田陽介、吉村英一著「デサントスポーツ科学」第37巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団

【ルール9】歌いながら家事をする

 歌うこともカロリー消費につながる(※4)。

「1曲歌うと10〜20kcalを消費することができます。家事をする際に歌いながら行うと、運動効果が高くなります」

※4出典:第一興商「カラオケ楽曲の消費カロリー標準値」

【ルール10】散歩の途中で「1分ジョギング」を

 息があがる運動は心肺機能を高めるのに有効で、1分でも充分効果がある。

「学術雑誌『ネイチャーメディシン』に掲載された研究では、たとえば30分の散歩の途中で“1分ジョギング”を息があがるくらいのスピードで3回行えば、長生きにつながるという報告もあります」

取材・文/廉屋友美乃 イラスト/藤井昌子 写真/PIXTA

※女性セブン2025年7月24日号