極端な「減塩」が認知症を招く? 血流低下が脳機能を奪う、良かれと思った習慣が引き起こす皮肉

「塩分は悪」と思い込んでいませんか?, 塩分は「体を動かすため」に必要, 極端な減塩で起きる「低ナトリウム血症」, 「最近ぼーっとする」の背景に塩不足, ケース①「味噌汁の味がしない」80代女性, ケース②「健康意識が高すぎた」70代男性, 脳は「血流低下」に弱い, 「健康のため」が逆効果になる怖さ, 減塩は「ほどほど」が大事, 医師として感じること, 本当に大事なのは「続けられる食事」

「塩分は悪」と思い込んでいませんか?

高血圧対策として、「減塩」が大切なのは間違いありません。

実際、塩分の取りすぎは、高血圧や、脳卒中のリスクにつながります。

そのため、健康診断などでも「塩分を控えましょう」と言われることが多いですよね。

ただ最近、外来で気になるのが、「減塩を頑張りすぎている人」が増えていることです。

中には、「塩はとにかく悪い」と思い込み、極端な薄味生活を続けている方もいます。

もちろん塩分の取りすぎは問題です。

ただ、「減らしすぎ」もまた、体に悪影響を及ぼすことがあります。

塩分は「体を動かすため」に必要

塩分というと悪者扱いされがちですが、実際には体に必要不可欠な成分です。

特に重要なのが、ナトリウム。

ナトリウムは、

・血圧維持

・神経伝達

・筋肉の働き

・水分バランス

などに深く関わっています。

つまり、塩分が少なすぎると、体は正常に働きにくくなるんです。

極端な減塩で起きる「低ナトリウム血症」

実際に問題になるのが、低ナトリウム血症です。

これは、血液中のナトリウム濃度が低下した状態。

高齢者では特に起こりやすく、

・食欲低下

・極端な減塩

・過度な水分摂取

などが重なると発症しやすくなります。

「最近ぼーっとする」の背景に塩不足

低ナトリウム血症になると、脳の働きにも影響が出ます。

  • ぼーっとする
  • 集中力低下
  • ふらつき
  • 反応が鈍い
  • 物忘れが増える

こうした症状が出ることがあります。

「塩分は悪」と思い込んでいませんか?, 塩分は「体を動かすため」に必要, 極端な減塩で起きる「低ナトリウム血症」, 「最近ぼーっとする」の背景に塩不足, ケース①「味噌汁の味がしない」80代女性, ケース②「健康意識が高すぎた」70代男性, 脳は「血流低下」に弱い, 「健康のため」が逆効果になる怖さ, 減塩は「ほどほど」が大事, 医師として感じること, 本当に大事なのは「続けられる食事」

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高齢者では、「認知症が進んだと思ったら、実は低ナトリウムだった」というケースもあります。

ケース①「味噌汁の味がしない」80代女性

印象的だったのは、80代女性です。

「血圧が高いから塩は全部悪いと思って」と話され、かなり極端な減塩をされていました。

味噌汁はほぼお湯状態。

漬物も完全に中止。

醤油もほとんど使わない。

さらに、「健康のため」と大量の水を飲んでいました。

その後、

・ふらつき

・ぼーっとする

・食欲低下

が出現。

検査すると、低ナトリウム血症が見つかりました。

ご家族は「認知症が始まったと思った」とかなり心配されていました。

ケース②「健康意識が高すぎた」70代男性

70代男性で、「減塩を徹底しています」という方もいました。

テレビで減塩特集を見てから、かなり厳格な塩分制限を開始。

ただ、夏場に大量発汗が続き、その後から、

・だるさ

・思考力低下

・集中できない

という症状が出現しました。

検査ではナトリウム低下。

汗で塩分を失っているのに、補給が追いついていなかった状態です。

脳は「血流低下」に弱い

さらに極端な減塩では、血圧が下がりすぎることがあります。

すると脳への血流が低下し、

「頭がぼーっとする」

「考えがまとまらない」

といった状態につながることがあります。

特に高齢者では、もともと動脈硬化があるため、血圧低下の影響を受けやすい。

「血圧は低ければ低いほど良い」とは、一概には言えないんです。

「健康のため」が逆効果になる怖さ

最近かなり増えているのが、「健康情報を真面目にやりすぎる人」です。

・塩は悪

・糖は悪

・脂質は悪

こうやって極端になると、かえって栄養バランスが崩れてしまいます。

「塩分は悪」と思い込んでいませんか?, 塩分は「体を動かすため」に必要, 極端な減塩で起きる「低ナトリウム血症」, 「最近ぼーっとする」の背景に塩不足, ケース①「味噌汁の味がしない」80代女性, ケース②「健康意識が高すぎた」70代男性, 脳は「血流低下」に弱い, 「健康のため」が逆効果になる怖さ, 減塩は「ほどほど」が大事, 医師として感じること, 本当に大事なのは「続けられる食事」

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特に高齢者では、「食べられなくなること」のほうが危険な場合もあります。

減塩は「ほどほど」が大事

もちろん、塩分過多は問題です。

ラーメンの汁を毎回全部飲む、加工食品ばかり食べる、という生活は見直したほうがいいでしょう。

ただ一方で、「完全な薄味」を目指しすぎる必要もありません。

特に、以下のような方は、極端な減塩が体調不良につながることがあります。

  • 高齢者
  • 食事量が少ない人
  • 汗をかきやすい人

医師として感じること

外来でよく感じるのは、「真面目な人ほど極端に走りやすい」ということです。

健康のために頑張る。これは本来、とても良いことです。

ただ、体は「バランス」で成り立っています。

塩分も同じです。

「ゼロが正義」ではありません。

本当に大事なのは「続けられる食事」

個人的には、「適度においしく食べられること」がかなり大事だと思っています。

極端な制限は、

・食欲低下

・低栄養

・筋力低下

にもつながります。

結果として、体力や脳機能まで落ちてしまうこともある。

だからこそ、健康管理は「やりすぎない」ことも大切なんです。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。