「小さな身体で懸命に生きた」愛嬌たっぷりの猫・もんた。飼い主との出会いと、温かな暮らし

福岡で飼い主が出会ったのは、ちょっと変わった風貌の保護猫・もんた。多くの不安を抱えながらも引き取って始まった暮らしは、自然豊かな糸島での散歩や、そっと寄り添う時間に満ちていたそう。SNSへの投稿をきっかけに、多くの人に愛されてきたもんたと、飼い主。ここでは、一人と一匹の出会いについて紹介します。

※ この記事は『もんたのいた日常』(辰巳出版刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

【写真】生後3か月頃のもんた

「もんたのいた日常」、猫のもんた。(写真・芳澤ルミ子)

2019年10月、もんたとの出会い

生後3か月頃。高いところは登れないけど小上がりは好き。(写真・もんたの飼い主)

私がもんたと出会ったのは2019年10月12日、福岡市内で開かれていた保護猫の譲渡会だ。

保護当時の状況について保護主によると、もんたが母猫についていけずにはぐれているところを保護したとのこと。その猫は会場の別室でタオルで囲われたケージの中にいた。ケージのプレートには「名前 サラ 女の子」と書かれていた。

顔が映画グレムリンに出てくるギズモに似ていることから保護主からはギズモちゃんと呼ばれていた。なお、譲渡会直前にオスだと判明している。

独特な魅力をもつその猫に、ひと目で惹(ひ)きつけられた。しかし、引き取ることには慎重になった。ほかの猫とは違う見た目や、元気がなくケージの中で伏せてほとんど動かないことから、奇形や脳の障がいを疑ったからだ。

猫を飼ったことがない私にうまく育てられる自信はなく、引き取っても数日で死んでしまうのではないかと不安になり、ほかのだれかが引き取った方がいいのではないかと思った。

しかし、私はすでにその猫の虜(とりこ)になっていた。先天性の病気であれば、だれが引き取っても命の長さはそう変わらない、と自分に言い聞かせていることに気がついた。この猫のすべてを受け入れて、どんなに短い命だったとしてもよりよい一生にしてあげたい――なぜかそんな思いが私を捉え、引き取ることを決めた。

もんた、外に出る

静かでのびのびと過ごせる糸島での暮らしは、のんびり気ままなもんたにピッタリだ。(写真・もんたの飼い主)

譲渡会で初めて見たときから、もんたはほかの猫とは様子が違ったため、なにかしら健康上の問題がある子かもしれないということは想像していた。

なにか状況を変えたいと試行錯誤しているうち、環境エンリッチメントという考え方があることを知る。超ざっくり言うと「猫にとっての幸せな環境で育てよう」というもの。

福岡市の西側に位置する糸島市は、海と山に囲まれた自然豊かなエリアだ。都市の喧騒から離れつつも、車で30分もあれば福岡市の中心にアクセスできるという、絶妙なバランスの場所だ。ここでは、まるで時間がゆっくりと流れているかのような、独特で穏やかな空気が漂っている。

そんな糸島の山のなかに、もんたの棲(す)み家がある。幸いわが家は敷地が広く、自然に囲まれた環境なので、庭に出て四季を感じ、虫や草に刺激を受けることで、もんたが元気になるかもしれないと思った。

庭とはいえ、屋外なので当然リスクも考えた。ほかの動物との遭遇や交通事故、連れ去り、有毒な植物などさまざまなリスクを回避するために、細心の注意を払わなければいけない。私は、もんたが安全に散歩ができるためのルールを決め、数か月かけて少しずつ外に慣れさせた。

当然、住んでいる場所もライフスタイルも人それぞれなので、もんたと同じような飼い方は難しい。もんたが散歩できるのは、もんたの性格はもちろん、私のライフスタイルや周りの環境の条件がそろっているからこそである。

2020年3月、「ドワーフキャット」だったもんた

(写真・芳澤ルミ子)

もんたと暮らし始めてから、私はたまに個人のSNSにもんたの動画や写真をアップしていた。すると、友人や知人からの反応が思いのほかよく「もんたをもっと見たい! YouTubeつくってよ!」そんな声が届くようになった。

正直、私は普段あまり写真や動画を撮るタイプではない。でも、「YouTubeなら思い出を残せるし、だれかの癒やしになるかもしれないし、いい機会かも?」と思い、とりあえず始めてみた(開設8か月経っても登録者数2人だったが)。

初めての万バズ写真。もんたは猫と木彫りの熊のハーフに違いない。(写真・もんたの飼い主)

ある日、X(当時はTwitter)の投稿がバズり、リツイートが1万を超え、たくさんのメディアで記事になった。「ファンになりました!」「ひと目ぼれしました!」「ハマりました!」などの声が次々寄せられるなか、とあるフォロワーの返信が目に入る。「この猫、ドワーフキャットではありませんか?」…ドワーフキャット?

気になって調べてみると、もんたの特徴と一致する症状があるではないか。SNSをやっていなければ、もしかすると一生気づかなかったかもしれない。ドワーフキャットとは人間でいう「小人症」に当たる病気で、ホルモン異常により引き起こされ、多くの場合は短命だという。この発見だけでも、SNSを始めてよかったと心から思った。

そのあとももんたの魅力に惹かれる人は日々増え続けている。「もんたの動画が癒やし!」「もっともんたを見たい!」そんな声が届くたびに、私はもんたの日常を発信する楽しさを実感していた。