謙虚な“技術屋”が落日のレッドブルF1にもたらした変化。アンドレア・ステラや小松礼雄に続く……エンジニア主導のチーム運営がトレンドに
レッドブルGmbHのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコ博士は、レッドブル・レーシングのチーム代表にローレン・メキーズが就任してからの影響力を高く評価している。
チーム黎明期から20年にわたりチーム代表とCEOを務めてきたクリスチャン・ホーナーが解任された後、後任に指名されたのがフランス出身のエンジニアであるメキーズだった。メキーズは当時、レッドブル・グループのいわゆるジュニアチームであるレーシングブルズのチーム代表を務めていたが、一気にシニアチームの代表に抜擢された格好だ。
ホーナー元代表の解任はレッドブルのパフォーマンス低下を受けての措置という要素が大きかった。2023年にはダブルタイトルを楽々と獲得したが、2024年はマクラーレンとフェラーリに交わされてコンストラクターズランキング3位に甘んじると、今年はさらにメルセデスにも先行を許してランキング4番手に後退してしまっている「。
しかしメキーズがチーム代表として加入した後の4戦では、レッドブルは確実に改善を見せている。直近2戦ではエースであるマックス・フェルスタッペンが1勝を含む表彰台を連続で獲得。ベルギーGPのF1スプリントも制した。
イタリアGP後の会見でレッドブルのマルコ博士は、メキーズ代表による変更、特に技術面での改革に満足感を示した。
関連ニュース:メキーズ代表は、2000年代初頭にレーシングブルズの源流にあたるミナルディでレースエンジニアを務めた人物。ミナルディがレッドブルに買収されトロロッソとなってからも同チームで手腕を振るったが、その後FIAやフェラーリなどを渡り歩き、技術分野にも深い知見を有している。
「技術チーム全体がよりオープンになり、議論をするようになった」とマルコは言う。
「シミュレーションの結果に対して盲目的に従うことはなくなった」

Max Verstappen, Red Bull Racing, Yuki Tsunoda, Red Bull Racing Team, Laurent Mekies, Alpine
メキーズ代表の改革には、ドライバーのフィードバックにより耳を傾けることも含まれる。スピードの殿堂モンツァで開催されたイタリアGP向けに、チーム内の一部はダウンフォースが高めのセッティングが最適だと主張したが、フェルスタッペンは逆に低ダウンフォースにすべきだと強く反対……最終的にドライバーの要望が通った。結果はポールポジションからの優勝。最速マクラーレン勢を封じ込んだ。
「エンジニアはドライバーの意見にもっと耳を傾けている。これほど速く経験豊富なドライバーがいるなら、それが正しい方法だと思う」とマルコは続けた。
「彼が実際に運転するのだから、最高速度が向上していることは重要だ。マクラーレンから離れて走れること、そして他の変更点も確認できた。ドライバーの意見が反映されたのだ」
メキーズのレッドブル代表就任は、2026年のテクニカルレギュレーション変更を前に、各F1チームがエンジニア出身の人材をトップに据えるトレンドに沿ったモノだ。
昨年、ハースはギュンター・シュタイナーの後任として、それまでトラックサイド・エンジニアリングディレクターを務めていた小松礼雄をチーム代表に昇格させた。マクラーレンはかつてフェラーリでもエンジニアとして活躍した経歴を持つアンドレア・ステラをチーム代表に据えた。レーシングブルズではメキーズの後任として、ルノー/アルピーヌで手腕を振るった経験を持つ名エンジニアであるアラン・パルメインがチーム代表に就任した。

James Vowles, Team Principal of Williams and Alan Permane, Team Principal of Visa Cash App Racing Bulls talk on the drivers parade.
motorsport.comがマクラーレンのステラ代表のようにエンジニアをチーム代表として起用するF1の傾向について尋ねると、マルコは次のように答えた。
「ああ、ハースも同様だ。これは傾向と言えるだろう。マシンが非常に複雑で、技術的に高度になっているからね」
エンジニア出身のチーム代表が増える一方で、ホーナー元代表のような包括的かつビジネスライクな人物が同様の立場を離れる傾向にある。2026年からはパワーユニットの規格が変わるなど、技術的な要素がさらに重要になるのだ。
「彼を任命したのは正しい決断だった」とマルコはServusTVに語った。
「F1の複雑さを考慮すれば、トップに技術専門家を置く方がおそらくより良い解決策だ」
「技術的な観点から、今ははるかに構造化されている。そして全てが連携し、ドライバーがプロセスに組み込まれると、結果が表れる。マシン自体は根本的に変わっていないが、このレベルの連携があれば、我々はこうしたパフォーマンスを発揮できる」
一方で当のメキーズ代表はイタリアGPでのフェルスタッペンの勝利について「私が貢献できたことはゼロだ」と謙虚に語り、チームスタッフ、セットアップの方向性を示したドライバーたちを称賛するに留めた。
マルコは2025年シーズンの残り8戦に向けてより楽観的な見通しを持っている。次戦はアゼルバイジャンGP、そしてフェルスタッペンが未だ勝利したことがないシンガポールGPへと続いていく。
「我々が示したスピードなら、ほぼ全てのサーキットで実力通りに戦えるはずだ」とマルコはServusTVに語った。
「シンガポールは特別だ。(フェルスタッペンが)一度も勝ったことのない唯一のレースだからね。だがそこでも結果が出るかもしれない。ザントフールトでも悪くなかった(オランダGPでフェルスタッペンは2位)」
「我々はまだ微調整と改良を続けている。このまま向上を続けられれば素晴らしい。チャンピオンシップは逃したが、あと何勝かできれば本当に喜ばしい」
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