自民党に喝! 亀井静香88歳が「玉木首相・大連立」を提唱 「アメリカのポチはいかん」「政治家はもっと田舎くさく」

「#変われ自民党」を掲げる自民党の総裁選が、10月4日に投開票される。元政調会長で自民党の歴史を知る亀井静香氏(88)は、古巣の行く末をどう見ているのか。2017年に政界を引退してからも、“指南役”として多くの現役議員とつながりを持ってきたという亀井氏。「前世紀の遺物」「悪い生き字引」と自嘲しつつ、亀井氏が立役者となり実現した“自社さ政権”並みの型破りなビジョンを示してみせた。

――石破茂首相の手腕をどう評価していますか。

 石破は行き詰まるとよく俺のところに相談に来たよ。俺が(政界を退いた)無害な男だからじゃない? 首相になってすぐに衆院選で負けた時も、訪ねてきたね。俺は国民民主党の玉木(雄一郎代表)をはじめ野党との人脈があるから。

 石破には「首相を辞めるな」ってずっと言ってきたんだよ。後を任せるちゃんとしたやつがおらんしね。それに、アメリカとの関税交渉という経済戦争が完全には終結していない中で辞めるとは何事だと。

「ここはバシッと解散総選挙をしろ」って言ったら、石破は「うーん」って困っていた。そこが彼の限界よ。たしかに今の世間の空気じゃ、選挙をやっても負けたかもしれん。でもやってみにゃ分からん。最初から周りの様子をうかがうのは武士のやることじゃない。石破には弱さがあったな。だからスタコラサッサと逃げちゃった。

――ポスト石破として期待する総裁候補はいますか。

 高市早苗(前経済安全保障担当相)はいいところはある。靖国神社に参拝しているし、日本人として(信念に)まっしぐらに突っ込んでいくわ。ただ、本人の政治的な発言はあまり聞いたことがないから、何を考えてるかよう分からん。

 小泉進次郎(農林水産相)はよう知らんのよ。純ちゃん(小泉純一郎元首相)の息子だろう? 向こうからは訪ねてこないね。

 小林(鷹之・元経済安全保障担当相)は以前、あるやつが連れてきてね。なかなか光るものがある若者だったよ。でも、玉木もそうだけど、東大卒で財務省出身っていう経歴が良すぎるね。政治家はもっと田舎くささというか、土のにおいがしなくちゃ。

■大連立という新しい時代に入るんだ

 総裁選で期待できるやつなんておらんよ。そして誰もいなくなった……って感じだな(笑)。そもそも今までろくでもないことばっかりしてきた自民党が、トップを代えたところで中身は変わらんわ。自民党は沈む夕日なんだ。連立を組む公明党だって、(支持母体である創価学会の)池田大作(名誉会長)が亡くなって、拝んでいる太陽が沈んじゃった。

 自公連立で与党を担う枠組みはもう通用しない。これからは大連立という新しい時代に入るんだ。石破に大連立を勧めたら、俺には「いいですね」って言ってたんだよ。でも本人が首相から逃げたから、パーになっちゃった。

――各党が政治的スタンスの違いを乗り越えて手を組む。まさに亀井さんが“仕掛け人”となり1994年に実現した、自民党・社会党・新党さきがけの「自社さ連立政権」を彷彿(ほうふつ)とさせます。

 あの時の自民党はぶっ壊れていたんだよ。議員たちが党に見切りをつけてどんどん出ていくわけ。そこで俺は、社会党と組むという誰も考えなかったことを思いついた。“大”の自民党が“小”の社会党をのもうとしたら、小は逃げる。だったら大が小にのまれる、つまり村山(富市・当時社会党委員長)さんを首相とした連立政権を目指したのよ。

 村山さんが説得に応じて首相を引き受けると言ってくれた時は、森(喜朗・当時自民党幹事長)と「やったやったやったー!」って抱き合って喜んだね。村山さんは私欲のない人だから、自民党がそこまで言うならと、日本のために身を捧げる覚悟を決めたと思う。

 首相になる前に俺が政策の相談をしようとしたら、「亀さん、そんな話は権力を握ってからだ。できもしないうちに言ったって絵空事だ」って返された。ある意味、すごく現実主義者なんだよ。

■自民党を動かした衛藤氏の大演説

――村山首相誕生にあたって、自民党内は紛糾したのでは。

 羽田孜内閣が総辞職して、首班指名選挙の前に自民党の両院議員総会を開いたら、もう大変。議員たちはマイクを取り合って、「社会党、しかも左派の人間を自民党が推すわけにはいかん」とわいわい騒ぎ立てた。すると、俺のそばに座っていた衛藤晟一(当時衆院議員)がさっとマイクをもぎとってこう言ったんだ。

「河野(洋平・当時自民党総裁)さんが日本のために村山首相でいいと言っておられるのに、お前たちはなんてことを言うんだ!」

 会場はしーんとなったね。それで総会が終わると、自民党議員たちは国会議事堂の本会議場に入り、一糸乱れず投票用紙に「村山」と書いた。衛藤が日本男児として立ち上がり、村山首相が生まれた。これが歴史だよ。

――今の政界で新たな連立を仕掛けるなら、どの党に声をかけますか。

 大連立だから、すべての党に声はかける。もちろん共産党にも。暴力革命はやらないと宣言している今の共産党は、歌を忘れたカナリア。意外と乗ってくるかもしれない。大連立は一見難しいようで、一対一でぶつかりかねない2党連立よりは楽なんだ。

 ただ、今は連立の核になる政治家がおらんな。自分が当選することしか考えていない連中ばかりで、信長を殺しに行った明智光秀みたいな迫力と行動力のあるやつがいない。そういう意味では小沢一郎(立憲民主党衆院議員)は適任だけど、なにしろ人と相談ができないし、敵が多すぎるから難しい。いっそ、玉木を首相に据えるのがいいんじゃないか。あいつは、土のにおいはしないけど、青竹みたいにスッとまっすぐで、ひねくれたところがない男だ。

■自民党がどうこうより、オールジャパンでまとまる時

――もう一度政界に復帰したいと、歯がゆさは感じませんか。

「今、亀井さんがおってくれたら」なんて言ってくれる人もいるけど、もう88歳ですよ(笑)。

 俺が天下を取れなかったのは、つかみにいく時に躊躇(ちゅうちょ)しちゃったからなんだな。2001年の自民党総裁選に純ちゃんと一緒に立候補したんだけど、清和会出身同士で争っちゃダメだと党内で言われたこともあって、俺が降りたんだ。代わりに、純ちゃんが総裁になったら、何か決める時は事前に俺に相談するよう政策協定を結んだのに、早々に破られてね。

 でも恨んではいないよ。だまされた俺が悪い。天下を取るには、本人の取ろうとする意欲も当然必要だけど、最後は天命なんだよ。俺には天命がなかったの。

――自民党は今回の総裁選で「解党的出直し」を掲げています。党再生にあたっての提言はありますか。

 自民党再生なんて、そんな高尚なこたぁ考えないよ。俺、党から除名されてんだから(笑)。自民党がどうこうより、今はオールジャパンでまとまらなきゃいけない時だ。関税交渉を含めてトランプ(米大統領)に立ち向かわないといけないんだよ。いつまでもアメリカのポチに成り下がっていてはいかん。国内でゴタゴタ争うんじゃなくて、一致団結して、日本にとって最善の道を考えて進んでいかなきゃな。

(AERA編集部・大谷百合絵)