甲子園球場の「外野テラス席」設置論争 主力の要求に「はい」と言えない阪神のジレンマ

みずほペイペイドームに2015年から設置されている「ホームランテラス席」(2020年撮影)

投手にとって不利になることは理解している。それでも打者の思いを伝えずにいられない-。阪神の選手から甲子園球場の外野にかつて存在していた「ラッキーゾーン」のようなエリアの復活を求める声が挙がっている。今オフ、大山悠輔が契約更改交渉の席で、打者有利となる外野テラス席の設置を訴えた。昨年オフには佐藤輝明も同様の要望をしたが、球団の対応はどこまでもそっけない。

外野フライに倒れて悔しがる阪神・佐藤輝明。外野テラス席があれば本塁打増が期待できるが…=9月、甲子園球場(水島啓輔撮影)

「変わってほしい願い込めて」

来季プロ10年目を迎える大山が「数年前から訴えていたと明かした」のは、ホームランゾーンとなる外野テラス席の設置だった。

「球場の考えもあるし、いろんなことが絡むので難しい」と理解も示した上で、「投手と野手のメリット、デメリットはあるが、野手としての一意見を伝えた。発信していくことで、何かが変わる可能性もあるかもしれない。変わってほしいという願いを込めて」と理由を説明した。

甲子園は右翼から左翼方向に吹く名物の「浜風」の影響もあり、左打者が引っ張った打球は押し戻されることから、本塁打が出にくいことで知られる。実際、今季の甲子園で生まれた本塁打はわずか38本。12球団の本拠地別で最少だった。日本ハムの本拠地、エスコンフィールド北海道では134本のアーチが飛び出しただけに、差は歴然だ。

他球場は設置が相次ぐ

全体的に本塁打が減少傾向にある近年は、球場の改造に動く球団は増えている。2013年の楽天のKスタ宮城(現楽天モバイルパーク)を皮切りに、15年にはソフトバンクのペイペイドーム(現みずほペイペイドーム)が外野フェンス前に座席を新設。19年にはロッテのZOZOマリンスタジアムがテラス席を作り、実質的な「ホームランゾーン」が誕生した。実際、ソフトバンクの本拠地ドームでは、14年の70本塁打から、15年には144本塁打に増加している。

甲子園球場の外野にかつて存在していたラッキーゾーン(1980年撮影)

来年には中日が本拠地のバンテリンドームナゴヤでも外野を狭めるテラス席を新設する。右中間、左中間にそれぞれ約130席ずつを増設。本塁から右中間、左中間フェンスまでの距離が110メートルと、これまでより6メートル近くなる。両翼100メートル、中堅122メートルは変わらないが、外野フェンスの高さも1・2メートルほど低くした3・6メートルになり、本塁打の増加が期待されている。

バンテリンドームは、12球団の本拠地の中でも本塁打が出にくい球場の一つだけに、低迷が続くチームからは外野テラス席の設置を望む声が出ていたという。2月に発表された際には、阪神の佐藤輝も「めちゃくちゃ変わるんじゃないですか。甲子園につけてほしいっすね」と感想を述べている。

「ラッキーゾーン」は 1991年終了

一方の甲子園。1947年シーズン途中、両翼からセンター方向へ外野フェンス沿いに柵を設置し、本塁打を出やすくした「ラッキーゾーン」が誕生した。

しかし、用具の向上などもあって、91年シーズン終了をもって撤去。かつて存在していただけに、野手が切望するのは当然のことだろう。

阪神の竹内孝行球団副本部長は「話は承りました、ということだけですね」とそっけない。「球団からすれば、投手のこともある。投手が恩恵を受けているのは事実かなと思うが、そこらへんのバランスもある」と話すにとどめた。竹内副本部長は「私だけの判断では何ともいえない。球場は『甲子園球場』のもので、タイガースのものではないので」とも説明。昨年オフに始まった銀傘の拡張工事なども理由の一つとした。甲子園のラッキーゾーン復活への道のりはまだまだ遠そうだ。(嶋田知加子)