待望の6速MT搭載「STIスポーツ#」まもなく発売!カナダ仕様のスバル「WRX」に乗って分かったCVT車では味わえないエンジンの別の顔
意外だったのはCVT車よりも軽快な高回転域での伸び
「東京オートサロン2026」のスバルブースで最も注目を集めたモデルといえば、4ドアスポーツセダン「WRX S4」をベースとするコンプリートカー「WRX STIスポーツ#(シャープ)」のプロトタイプでした。2026年春頃に台数限定で販売予定というこのモデルの最大の特徴は、MT車だということ。
「WRX S4」は、スバルの現行ラインナップにおいて唯一のセダンであると同時に、最も走行性能の高いモデルですが、これまで日本仕様のトランスミッションは“スバルパフォーマンストランスミッション”と呼ばれるCVTのみで、MTの設定はありませんでした。
【画像】超カッコいい! これがスバル「WRX」MT車の実力です(30枚以上)
そんななか、MTを組み合わせた「WRX STIスポーツ#」の登場は非常に興味深いところであり、スバルファンならずとも気になるモデルといえるでしょう。もちろん、筆者(工藤貴宏)だってとても気になる存在です。
やはり気になるのは、その走りのテイストでしょう。そこで今回、「WRX STIスポーツ#」の走りをひと足早く体験してみました。実は海外仕様の「WRX」には以前からMT車が存在していたのですが、先日、逆輸入された海外仕様のMT車に乗ることができたのです。
試乗したのは、カナダ仕様の左ハンドル車。エンジンは、日本仕様のCVT車と同じ2.4リッターの水平対向ターボエンジン“FA24”型で、最高出力は271hp(約275ps)と日本向けと同じですが、最大トルクはCVT車の375Nmに対して258lb-ft(約350Nm)とやや控えめになっています。エンジン制御がMTに合わせたものになっているのでしょう。

スバル「WRX SPORT」(カナダ仕様/2025年モデル)
4WDシステムは、CVT車がVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)なのに対し、MT車はシンプルなビスカスLSDつきセンターデフ方式を採用。前後輪のトルク配分をセンターデフで45:55に不等配分するCVT用に対し、MT車はベベルギヤで構成されたセンターデフで通常時のトルク配分を50:50としています。これもMT車用のシステムです。
では早速、乗り込んでみましょう。キャビンは左ハンドル仕様であることを除けば、ひと目見て違いが分かるのは、MTのシフトレバーがついていることと、クラッチペダルがついていることくらい。でも、よくよく見ると、なんとパーキングブレーキがCVT車の電子制御式からレバー式に変わっています。モータースポーツなどで、走行中に車体の姿勢を変えるきっかけとして使えるわけです。
それに合わせて、センターコンソールの形状がCVT車とは異なっているほか、アイサイトが最新の“アイサイトX”ではないこと、メーターパネルが最新の日本仕様にはないアナログ式であることも違いとして挙げられます。ちなみにまもなく発売予定の「WRX STIスポーツ#」はフル液晶メーターを採用しています。
それでは走り出してみましょう。まず気になるのはMTのシフトフィールですが、率直にいって、かなりソリッドな印象。精密なギヤどうしがかみ合う感覚が強く、レバーの動きも正確でカッチリ。遊びも少なく、これ以上硬いと街乗りでは疲れるかな?……というギリギリのところでとどまっている感じです。かつての「WRX STI」ほど強化されたものではないとはいえ、スポーツ走行には適しているといえるでしょう。
クラッチペダルのフィーリングも変なクセはなく、実に扱いやすいもの。このように、シフトレバーとクラッチペダルの操作感は、とても好印象でした。

スバル「WRX SPORT」(カナダ仕様/2025年モデル)
一方、予想外だったのがエンジンの回り方。CVT車より高回転域がスムーズに回るのです。
筆者は、MTを組み合わせた“FA24”型エンジンをドライブするのは今回が初めてだったのですが、「こんなに気持ちよく回るエンジンだっけ?」と見直しました。CVTよりも軽快にエンジン回転数が高まり、スポーティなドライブを楽しませてくれます。
MTの魅力は、エンジン回転数をドライバーが積極的にコントロールし、加減速を調整できる点にありますが、このMT車は本当に気持ちいいですね。クルマとドライバーとの一体感が高まり、リズミカルに走らせられるのです。
「WRX STI」とは別物――リズムを楽しむ“大人のスポーツセダン”
ところで「WRX STIスポーツ#」は、現行型「WRX」シリーズで待望のMT車となりますが、かつて存在した「WRX STI」とは異なる部分がもちろんあります。
例えばエンジンは、308psだった「WRX STI」の“EJ20”型ほどパワフルではありませんし、4WDも凝りまくりの“DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)”方式ではありません。つまり、かつての「WRX STI」ほど走りはキレキレではなく、そのまま競技に出られるほどのスパルタンさもない、というわけです。なので一部には「僕らが求めていたMT車はこんなものではない」という人もいるかもしれません。
でも、モータースポーツに参戦するわけでも、限界性能を追い求めるわけでもない筆者としては、これくらいが「ちょうどいい」と思うのです。なぜなら、プロドライバーには程遠いドライビングスキルで気軽に性能を楽しむには、現状でも限界に近いと思うので。
例えば、靴を選ぶとき、いくらスポーツが好きな人でも、本格的にトレーニングしたり競技会に出るわけでもなければ、ストイックに陸上競技用のスパイクを履く必要はないでしょう。ちょっとサッカーを楽しむ程度であれば、本格的なサッカーシューズも不要ですよね。スポーティなスニーカーでもちょっとしたスポーツは楽しめます。
「WRX」のMTも、それと同じ。“ちょうどいい”と思えるレベルなのです。

スバル「WRX SPORT」(カナダ仕様/2025年モデル)
ただスバルに対しては、お願いしたいこともあります。それは、できるだけリーズナブルなMT車も設定して欲しい、ということ。
「WRX STIスポーツ#」はいうなれば“全部載せ”モードのモデルで、前後のフレキシブルドロースティフナーやフロントのフレキシブルドロータワーバーといったボディパーツを始め、STIがチューニングした電子制御ダンパーやブレンボ製の18インチフロント対向6ポット&リア対向2ポットブレーキキャリパー、ドリルドディスクローター、19インチのタイヤ&ホイールなど、相当な装備が組み込まれています。もちろん価格は、それ相応。少なくとも700万円前後になると思われます。
一方、今回試乗したMT車はそういった装備を簡略化したベーシックグレードで、価格は4万785カナダドル。日本円にして約460万円ということです。
装備はシンプルでもいいので、このくらいの価格で手に入れられたらうれしいと思います。スバルにはぜひ、そういうモデルの展開を願わずにいられません。もちろん限定ではなく、欲しいと手を上げればいつでも手が届くような形で。