日本では名車でも世界では迷車? “内弁慶”に終わった? 国産車列伝

国によって人気を集めるクルマに違いがあるのは当然だが、自国内ではヒットしたものの、国外では全然ダメだったという極端なケースも稀にはある。そこで今回は、日本国内でウケたのに、海外では成功できなかった悲運のクルマを見ていこう。
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文:長谷川 敦/写真:スバル、トヨタ、日産、三菱自動車、Newspress UK、CarWp.com
海外には小さすぎた?
●トヨタ エスティマ(初代)

ボディ形状と独創的なエンジン配置から「天才タマゴ」のキャッチコピーで登場した初代トヨタ エスティマ。ミニバンがメジャーになるきっかけにもなった
現在の日本では乗用車としても高い人気をキープしている各社のミニバンだが、その隆盛にひと役買っていたのが1990年登場の初代トヨタ エスティマだ。
従来のミニバンとは異なり、床下にエンジンをミッドシップマウントするスタイルは斬新かつ実用的で、丸さを全面に押し出したボディフォルムとあいまって「天才タマゴ」のキャッチコピーとともにプロモーションが展開された。
それまではミニバン=商用車というイメージも強かったが、スタイリッシュで乗用目的にも適したエスティマは日本国内では高く評価され、大ヒットとまではいえなかったものの堅調な売り上げを記録した。
そして2000年には各部を改良した2代目モデルがデビューし、初代を大きく上回る人気を集めた。
初代エスティマは欧米では「プレビア」の車名で販売され、ミニバンの本場でもある北米でのヒットも期待された。
しかし、日本国内では大柄に思えたエスティマもアメリカ製のミニバンに比べると小さく、価格の高さもあって海外向けの専用幅広ボディが用意されたにもかかわらず販売台数を伸ばすことができなかった。
ミッドシップマウントにするためエンジン排気量が抑えられ、結果としてエンジン出力が控えめだったことも北米市場で苦戦した要因といわれている。
日本国内では2000年まで販売された初代エスティマだったが、北米では1997年に販売終了となり、後継車種のトヨタ シエナに置き換えられた。
●三菱自動車 パジェロイオ

1998年デビューの三菱自動車 パジェロイオ。パジェロジュニアの後継モデルだが、プラットフォームやボディは新規に開発され、3ドアと5ドアをラインナップ
三菱自動車のパジェロといえば、日本を代表するSUVとして、国内はもとより海外でも高い人気を集めたクルマ。
そのパジェロの弟分的存在が1995年に発売されたパジェロジュニアであり、パジェロジュニアの後継車が1998年に登場したパジェロイオだ。
同じパジェロの弟分だったパジェロミニが軽自動車規格(当時)だったのに対してパジェロジュニアの排気量は1.1リッターと大きく、パジェロイオではそれがさらに拡大された。
パジェロイオが発売された時代にはSUV(当時はRVといわれていた)人気が高まっていて、日本国内の道路事情にもマッチした同車は国内で人気を獲得した。
そして海外での販売だが、そもそも大型のSUVが好まれる欧米での販売はあまり積極的に行われず、諸事情により車名も北米でモンテロイオ、欧州ではパジェロピニンなどが用いられた。
アジアや南米では概ね好評で、特にブラジルでは日本国内での製造販売が終了した2007年以降も生産が続けられている。
パジェロイオを「海外で通用しなかった」というのは少々言い過ぎの感はあるが、もともと日本国内をメインターゲットにしたクルマだったのもまた事実だ。
海外ウケしなかったアクの強さ
●日産 キューブ

2代目日産 キューブ。トールワゴンというコンセプトは先代から継承しているが、ボディデザインは大きく変更され、キュートなフォルムが人気を集めた
日本と欧米諸国は政治や貿易において近しい関係にあるが、ことクルマに対する嗜好には大きな開きがあり、それが売り上げにも影響している。
日産のキューブは1998年に登場したコンパクトトールワゴンで初代モデルも堅調なセールスを記録したが、特に後部ドアの左右非対称デザインなど、思い切った個性を盛り込んだ2代目(2002年)は先代を上回る大ヒットモデルとなった。
その2代目キューブは2008年まで販売され、同年には先代のコンセプトを継承した3代目モデルが登場。この3代目から海外展開もスタートした。
2009年からスタートした欧米市場でのキューブ販売だが、販売初期は良かったものの、すぐにセールスは落ち込んでしまい、欧州では2011年、北米でも2014年に販売が打ち切られた。
キューブが海外で不発に終わった原因には、円高による現地販売価格の高騰やアシンメトリーデザインへの賛否などがあげられていて、同クラスのライバル車が多かったことも影響したといわれている。
結局2015年には国内専売車に戻り、その国内でも2020年に3世代22年の歴史を終えている。
パワーの違いが仇になる
●スバル レヴォーグ(初代)

初代スバル レヴォーグ。レガシィツーリングワゴンの後継モデルだが、ホイールベースはレガシィより短く、全高も低く設定して国内事情にフィットさせた
かつてのブームほどではないが、現在でも国内外で一定の人気を保っているステーションワゴン。
スバルが販売するステーションワゴン(クロスオーバーSUV)・レヴォーグの初代モデルは、大型化したレガシィに代わるモデルとして2014年4月に登場した。
レガシィの大型化は海外市場を意識してのものだったこともあり、当初レヴォーグは日本国内専売という扱いだった。
スバルの狙いは当たって、初代レヴォーグは販売開始直後から好調な売れ行きを見せ、販売年の2014年には実質7カ月の販売期間にもかかわらず3万台以上が売れている。
そして2015年には満を持して欧州での販売が開始される。
しかし、期待の欧州では販売が伸びず、欧州での販売拠点であるスバルUKではセールスが低迷した。
ステーションワゴン自体の需要はある欧州だが、レヴォーグの欧州仕様は販売開始当初で最高出力170psの1.6リッターターボモデルのみで、これは高速巡行の多い欧州ではいささかパワー不足という評価もあった。
また、輸入車となるレヴォーグは欧州メーカーのライバル車に比べて価格も高く、割高感もセールスの足を引っ張ってしまった。
2019年には燃費性能に優れた2リッター自然吸気エンジン搭載モデルも投入されるが、レヴォーグの売り上げ向上にはつながらなかった。
2020年のモデルチェンジでレヴォーグは2代目に進化するが、こちらもまたほぼ国内専売モデルという位置づけになっている。
海外でも高く評価される日本車でも、ちょっとした理由で販売を伸ばすことができず、それがメーカーのセールス担当者を悩ませることになる。